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「肝不全による徘徊(はいかい)」

 わたしは、肝不全だ。もう、とっくに死んでいるはずなのに余命の3倍は生きている。お薬が発達したせいだ。お薬を、朝、昼、晩飲んでいる。お薬で使い物にならなくなった肝臓を正常に動かしているのである。
 最初、肝不全になったとき何が何やらわからなかった。
 肝不全で、肝臓が働かなくなるので、毒性の強いアンモニアの分解ができない。それで、アンモニアは排泄されず、逆に脳へと昇ってくるのである。
 それで完全に理性を失った。
 我を失った。
 当時、記憶は10分の1位である。
 お手洗いの便器を、お風呂と間違い全裸になって、便器の中へ入ろうとしていたのだ。しかし、お分かりの様に便器は小さく、人が入れるわけがない。そこで、頭から便器につかり潜ろうとしていた。
 そうこうしているうちに、理性が働き、我に戻った。
 一体、何を考えていたのであろう。
 その足で、大学病院の肝臓内科で肝臓学会のエキスパートの評議員の先生から診察を受け、アンモニアが脳へと昇らないお薬を頂いた。
 こわいものである。


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