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Evidence Based Nursingを推進する非営利の国際研究組織JBIの日本センター。JBIの活動(Systematic Reviewの実施、Evidence Summaryの作成、データベース化、セミナー等の開催)の情報提供を進め、2019年にNPO法人化。

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    私共JCEBP(The Japan Centre for Evidence-based Practice)の紹介です。

最近の記事

観察研究で因果効果はいえるのか?

近年因果推論の考え方が広がっており、看護系論文でも、傾向スコア(PS)を用いたPSマッチング、IPTWなど様々な手法を活用した研究が発表されています。 ある介入が効果があるというためには、医学研究であればRCTがゴールドスタンダードとされていますが、RCTができる介入は限られているという現実があります。 RCTはできないけれど、観察データなら取れる!何とか因果関係を言いたいというモチベーションから生まれたのが上記の手法ということのようです。 そんな中、最近Target Tr

    • 質的研究のシステマティックレビューって何?~身近な運動の発達障害、DCDの2例

       「身近な運動の発達障害、DCDの介入効果に関するエビデンス」で説明した通り、発達性協調運動障害 (Developmental Coordination Disorder: DCD) に関する質の高い介入効果を支持する客観的な定量的エビデンスは、まだ十分に確立されていないのが現状です。それでは、DCDがある当事者や当事者を取り巻く人々の主観的体験に関するエビデンスは、どのようなものなのでしょうか。  主観的な体験や意見を収集するには、インタビューやフォーカルグループ、自由記述

      • 身近な運動の発達障害、DCDの介入効果に関するエビデンス

         「エビデンスの塵も積もれば山となるか?」で説明した内容を、身近な運動の発達障害、DCDの介入効果に関するエビデンスを例にとって説明します。  みなさんは、学習障害(LD)や注意欠如多動障害(ADHD)、自閉スペクトラム障害(ASD)といった発達障害は聞いたことがあるでしょう。でも、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder: DCD)は、馴染みが薄いか、耳にしたことすらないかもしれません。  発症率が約6%と身近なはずのDC

        • エビデンスの塵も積もれば山となるか?

           ここでいうエビデンスの塵とは、質の低いエビデンスのことです。ご存知のように、エビデンスの産出にはいくつかの段階があります。  まずは原著論文などの一次研究(primary studies)。生のデータを集める介入研究やインタビュー研究などがこれに当たります。  次にシステマティックレビューのように、一次研究を系統的に検索して見つけ、研究の質を評価して選んで、統計的にメタ分析したり、質的研究を統合したりして、特定の分野のエビデンスとして発表します。ここでは、生のデータでなく、

        観察研究で因果効果はいえるのか?

        • 質的研究のシステマティックレビューって何?~身近な運動の発達障害、DCDの2例

        • 身近な運動の発達障害、DCDの介入効果に関するエビデンス

        • エビデンスの塵も積もれば山となるか?

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        記事

          そのレビュー、ゾンビになりませんか?

          皆さん、こんにちは。 今日はゾンビレビューについてのお話しです。 Cindy Stern, Sonia Hines, Jo Leonardi-Bee, et al. Attack of zombie reviews? JBI Evidence Synthesis editors discuss the commentary "Definition, harms, and prevention of redundant systematic reviews". JBI Evi

          そのレビュー、ゾンビになりませんか?

          サブグループ分析とは?

          システマティックレビューをやる際、「サブグループ分析(subgroup analysis)」だとか「感度分析(sensitivity analysis)」という言葉を目にすると思います(分析ではなく解析という言葉を使う場合がありますが、ここでは分析に統一しておきます)。 「ある程度文献が集まったから、層(例えば年齢層)で分類して細かくメタ分析やってみよう!」という気持ちでサブグループ分析と記載しようとしているそこのあなた! それはサブグループ分析ではなく、層化分析(strat

          サブグループ分析とは?

          暑さ警報、メンタルヘルス注意!

           2023年の夏は、過去最高を大きく上回る圧倒的な暑さでした。北国に生まれ育ち、暑さが大の苦手で、自宅にクーラーがない私は、夜間にぐっすり眠ることが出来ず、食欲も失せ、日々の疲労が蓄積し、「このままでは、本当に命が危ない」と何度も思いました。そのような中、私の専門は精神看護学ですので、このような外気温の変化がメンタルヘルスへ与える影響について、具体的に知りたいと思いました。猛暑では、身体的ケアに注意が向きがちですが、メンタルヘルスへの影響を考えて、メンタルヘルスに特化したケア

          暑さ警報、メンタルヘルス注意!

          ハゲタカジャーナルとシステマティックレビュー

          最近、Twitterのタイムラインで、ハゲタカジャーナル論争が盛り上がっていました。 話の焦点は、とある出版社がハゲタカかどうかだったのですが、と同時に、なぜハゲタカジャーナルは好ましくないのか、という点についても色々と意見が出ていました。 なんとなく、良くないような気はしているけれど、なんでダメかと言われたら回答は難しいと思う人も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、システマティックレビューを通して、ハゲタカジャーナルを考えてみましょう。 JBIから公開されている、

          ハゲタカジャーナルとシステマティックレビュー

          BMJからのクリスマスプレゼント

          もう昨年になってしまいましたが、著名な学術雑誌であるBMJが世界中の研究者にクリスマスプレゼントをくれました。 もうすでに、だいぶ話題になっているので、読んだ人も多いかもしれません。すごく簡単にだけ、ご紹介します。ぜひ、みなさんも読んで見てください。 BMJの統計担当編集者がおくる12のポイント。 https://www.bmj.com/content/379/bmj-2022-072883 1. リサーチクエスチョンをはっきりさせましょう PICOのこと

          BMJからのクリスマスプレゼント

          システマティックレビューの特徴

          こんにちは。今回はシステマティックレビュー(SR)についての話です。 「そもそもシステマティックレビューって、普通の文献研究と何が違うの?」という疑問に対して、SRトレーナーの私から説明いたします。 SRとは、 Systematic reviews aim to provide a comprehensive, unbiased synthesis of many relevant studies in a single document using rigorous an

          システマティックレビューの特徴

          常識が覆る? うつ病のセロトニン理論レビューからみるエビデンス

          今年の7月ある論文が少し話題になったのをご存知でしょうか。 特に精神医療分野周辺の医師や研究者の中でザワザワしていました。 それが下記の論文です。 「The serotonin theory of depression: a systematic umbrella review of the evidence」 「うつ病のセロトニン理論:エビデンスの系統的アンブレラ・レビュー」 うつ病は、脳内神経伝達物質であるセロトニンの不均衡で引き起こされる そういった考えが一般的

          常識が覆る? うつ病のセロトニン理論レビューからみるエビデンス

          ジャーナル「JBI Evidence Synthesis」

          皆さん、こんにちは。今日は我々の母団体であるJoanna Briggs Institute (JBI)が発刊している雑誌の1つである「JBI Evidence Synthesis」(https://journals.lww.com/jbisrir/pages/default.aspx)について、ご紹介したいと思います。 これまでも、JCEBPの活動やシステマティックレビューについてご紹介してきましたが、我々の主な活動の1つは、実際にシステマティックレビューを行うことです。

          ジャーナル「JBI Evidence Synthesis」

          データベースのプラットフォームって?

          英語論文などの文献を検索するとき、あなたはどんなデータベースを使っていますか? 私の場合、ちょっと探す程度ならPubmed、しっかり探そうと思うときはMEDLINEなどを使っています。 この「しっかり探そう」としたときというのは、たとえば文献レビューをする際とかシステマティックレビューをする際です。学位論文を書く際なんかも、文献レビューは欠かせませんので、「しっかり探す」必要はありますよね。 そこで、今回はこのMEDLINEを使う際の大事なことを1つお知らせします。それは「ど

          データベースのプラットフォームって?

          初めての論文投稿:え?何準備するんだっけ?

          皆さんこんにちは。今回は、初めて論文を投稿しようと思っているあなたにお届けします。 論文の内容や方法論のような、研究の本質にとって重要な部分ではないけども、地味に困っている人も多い投稿論文の準備について説明します。 最近は日本語論文でもオンライン投稿が増えてきましたが、まだまだ紙媒体の郵送による投稿も多いので、今回は紙媒体を想定してお送ります。 先日、こんな質問を受けました。 A「はじめて日本語論文を投稿しようと思うんだけど、投稿規定に書かれてる通りの部数を事務局に郵送した

          初めての論文投稿:え?何準備するんだっけ?

          朝食を抜くと太るのか~論文の結果の読み取りには注意を~

          最近、といってもここ数年ですが、肥満が気になりだしました。 身についた脂肪が以前ほど簡単に落ちないと感じるようになりました。 そんなところで、2021年に朝食と体重との関連を縦断的にみたメタ分析が出てましたので紹介します。 「朝食抜きと体重との関連:縦断的観察研究によるメタ分析」 https://www.mdpi.com/2072-6643/13/1/272/htm 私自身は、朝食は割と食べているほうです(毎日ではないですが)。 このシステマティックレビューには、9本の

          朝食を抜くと太るのか~論文の結果の読み取りには注意を~

          研究業績の管理とアピール

          今回は若手の研究者や博士課程の学生さん向けのお話をしたいと思います。 皆さんは、これまでに自分が行ってきた研究の業績をアピールする場をお持ちですか? 毎年、所属施設へは申請しているけど、それ以外は特にしていない、という方もいらっしゃるかもしれません。 なぜ、わざわざ手間をかけてアピールすることにどんなメリットがあるのか、どういう方法があるのか、をご紹介したいと思います。 researchmap 日本学術振興会の科学研究費助成事業(通称、科研費)に申請したことがある方は、「r

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