見出し画像

暑さ警報、メンタルヘルス注意!

 2023年の夏は、過去最高を大きく上回る圧倒的な暑さでした。北国に生まれ育ち、暑さが大の苦手で、自宅にクーラーがない私は、夜間にぐっすり眠ることが出来ず、食欲も失せ、日々の疲労が蓄積し、「このままでは、本当に命が危ない」と何度も思いました。そのような中、私の専門は精神看護学ですので、このような外気温の変化がメンタルヘルスへ与える影響について、具体的に知りたいと思いました。猛暑では、身体的ケアに注意が向きがちですが、メンタルヘルスへの影響を考えて、メンタルヘルスに特化したケアが必要なのかもしれないと思ったのです。
 そんな時に、興味深い外気温とメンタルヘルスに関するシステマティック・レヴューの論文をみつけましたので、皆様にご紹介します。
(文献情報)
Title: Ambient temperature and mental health: a systematic
review and meta-analysis
Rhiannon Thompson*, Emma L Lawrance*, Lily F Roberts, Kate Grailey, Hutan Ashrafian, Hendramoorthy Maheswaran, Mireille
Thompson R, Lawrance EL, Roberts LF, Grailey K, Ashrafian H, Maheswaran H, Toledano MB, Darzi A. Ambient temperature and mental health: a systematic review and meta-analysis. Lancet Planet Health. 2023 Jul;7(7):e580-e589. doi: 10.1016/S2542-5196(23)00104-3. Erratum in: Lancet Planet Health. 2023 Sep;7(9):e735. PMID: 37437999.
目的:外気温とメンタルヘルスとの関連性に関する現在のエビデンスを包括的に分析すること。
方法:対象文献は2022年までに掲載された論文です。WebOfScience, Embase, PsychINFO, PubMedの4つのデータベース を用いて検索し2,053の文献がヒットし、その他に総説や引用文献が追加されました。そして、採択条件に合致した144の文献が分析対象となりました。また、その内の自殺の転帰に関する3つの文献に対してメタ分析が行われました。
結果と考察:メタ分析の結果、月平均気温が1℃上昇すると、自殺の発生率は1.5%増加、1日の平均気温が1℃上昇すると自殺の発生率は1.7%増加しました。定性的統合では、外気温(絶対温度、温度変動、熱波を含む)と自殺の未遂や既遂(86文献)、精神疾患による入院や通院(43文献)、地域社会のメンタルヘルスと福祉への悪い評定(19文献)と正の相関がありました。しかし、エビデンスの多くは確実性が低いといえました。
 
 この研究結果から、多くの論文が、エビデンスの確実性が低いという課題はありますが、外気温の上昇がメンタルヘルスに影響を与える可能性が示唆されました。また、エビデンスの確実性が高いメタ分析の結果、外気温の上昇と自殺の発生率に関する具体的数字が示されました。
 外気温の上昇に対しては、脱水や熱中症の予防だけではなく、メンタルヘルスに注意を向けましょう!(文責 宮島)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?