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常識が覆る? うつ病のセロトニン理論レビューからみるエビデンス

今年の7月ある論文が少し話題になったのをご存知でしょうか。
特に精神医療分野周辺の医師や研究者の中でザワザワしていました。
それが下記の論文です。

The serotonin theory of depression: a systematic umbrella review of the evidence

「うつ病のセロトニン理論:エビデンスの系統的アンブレラ・レビュー」

うつ病は、脳内神経伝達物質であるセロトニンの不均衡で引き起こされる

そういった考えが一般的に広がっているのではないでしょうか。
これは日本だけでなく、諸外国の教科書にも類似の記載があるようです。
 
この「セロトニン仮説」をもとに様々な実証的研究も行われてきました。
セロトニン仮説を根拠として、抗うつ薬は使用されてきた側面もあります。
 
しかし、このレビューでは、「セロトニン理論」には十分な根拠がない
という結果を示したのです。
 
もう少し説明すると
このレビューでは、17件のシステマティックレビュー、メタアナリシス等が対象となりました。
様々なうつ病とセロトニンに関するレビューを検証した結果、セロトニン活性・濃度低下によってうつ病が引き起こされるという説得力のある根拠は示せなかったと結論付けています。
 
今回のレビューは、定説、強く支持されている仮説であり、1つの介入研究、メタアナリシスで支持されている考えであっても、
より包括的に、詳細に検討することで、
実はその根拠として疑問の余地が生まれることを示したレビューでした。
 

論文を読む際、研究する際には、自分が置いている仮説や常識を常に疑いながら慎重に検討していくことが必要だと改めて感じました。
それと同時に、日々情報や知識を更新していくことが重要だと思いました。
                   
                       文責:的場

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