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CSRとSDGsとESGの違いを語るより、僕たちが大事だと思っていること。

「人類みな、フェミニストであれ。」

スパイスボックスという会社で、クリエイティブ・ディレクターとして働く僕に、ある日、少女まんがの仕事が舞い込んできた。

髪を短く切り、スカートを拒絶する女の子が主人公のまんがだ。Twitterでは中身を読んでいない人たちの声が溢れていた。「LGBTの話?」「うわー、そういうのやっちゃうんだ。」

面白いまんがを面白い、と伝えることの難しさを知った。同時に中身とは関係ないが、Twitterの声がきっかけとなり、ジェンダーについて考える時間が増えた。

大学時代にジェンダー論を勉強していた元同期にお願いして、いくつかの書籍を紹介してもらった。頭では理解できたがその分、質問も溢れた。ただ、すぐに質問をぶつけることに不安を覚えた。

「ジェンダー論を勉強していた人に、この質問をしていいのか?」「フェミニズムの正義みたいなものに触れて、怒られないかな?」質問をしようとすると、そんな心配や不安が押し寄せてくる。

そんな時、「女性をエンパワーメントする」というコンセプトのデジタルメディアを運営している女性に出会った。彼女の存在や活動、考えていることが面白くて、彼女のドキュメンタリーを自主制作で作った。

その中で、知らない単語、感じたことのない感覚、存在すら知らなかった気持ち。わからないことを聞きまくった。調べまくって、検索しまくった。

動画の中で、彼女は言う。「人類はみんな、フェミニストであるべきだと思う。」「女性専用車両は、affirmative actionだと感じている。」

僕はクリエイターとして、確実に彼女から影響を受けたと思う。実際にジェンダーのことやセクシャリティのことを知った後、ちょっとした友達の言動や家族の行動が気になったり、スルーしていたニュースにいいね!したり。

自分の中で、何かが広がる感じがした。

(話が少し飛びます)

「紙ストローでは、永遠に海は綺麗にならない。」

その後、大学の後輩がある会社のCEOになったというので、お祝いを兼ねて、会いに行った。大学の頃の思い出話をする間も無く、彼は漁網について語り出した。

会社のビルの下に入っているカフェが、プラスチックのストローの提供をやめたことを引き合いに、海洋プラスチック問題の真実の一面を教えてくれた。海洋汚染を防いだり、改善するには海に捨てられている漁網をどうにかしなくちゃいけない。

海に広がるゴミの50%以上が漁網によるものだ、と。プラスチックストローよりも、やらなくちゃいけないことがある。すぐに実際の漁網回収に同行する、ドキュメンタリーを撮った。

彼らが回収した漁網は、お洒落なバッグになったり、洋服になったりする、という。アパレル業界でキャリアを積んだ後輩の、培ったセンスの使い方がかっこよかった。

機能的な魅力=着心地などの他に、何か気持ちの良い感覚がそのプロダクトにはあった。

(また、話が少し飛びます)

「良いことをしたら、ちゃんと儲かる時代がきた。」

また別の日、ある人たちに呼ばれた。日本を代表するブランド…と言ったら怒られるかもしれないが、誰もが知る日用品などを販売する人たち。

彼らはある町に世界最大の店舗をつくると言い出した。出店理由は「新幹線が止まらなくなるから。」

その理由だけで、このブランドがこれから日本でどんな活動をやっていくつもりかが、ばちっと理解できた。「これまでもやっていたよ」と怒られそうだが…

このブランドの活動は、本質的な活動だと思った。同時にこれまでの広告代理店の人たちや、そこに発注するようなクライアントが言いそうなことも浮かんだ。

「売上にはならなそう…」「上申しても通らなそう…」「話題化するだけで、結局うまく行かなそう…」「CSR的なことですか?予算がつかないですね…」

「そんなことを言われそうだな、普通のクライアントなら。」そう思ったので、あえて同じようなことをぶつけてみた。

すると、そのブランドの人たちの答えはこうだった。「良いことをしたら、ちゃんと儲かる時代がきたんだ。」彼らはESGという言葉を使う。長期的な視点を持って世界を見ていた。実際に、40年以上日本を代表する存在として活動し続けている。

大変なことだらけだったかもしれないし、危機的状況もあったと思う。でも、その戦いには価値がある。部外者の僕でも、胸に熱いものを覚える。今、ブランドの活動の一部をお手伝いさせていただいている。

こんな風にして、クリエイティブな仕事を通して出会った人たちが、僕に経験させてくれたこと。教えてくれたこと。感じさせてくれたこと。世の中ではSDGsと呼ばれることもある。

「サスティナブル=持続可能な」という言葉は、僕の企画書も含めて、世の中に溢れてしまっているが、「トレンドではない」と言い切れる人がどれだけいるだろう。

僕は典型的なヘテロセクシャルという自覚を持って、ドキドキしながらジェンダーを学んだ。無知であることが、誰かを傷つけたり、悲しませたりしないか、怯えることが出来た。

海の匂いを嗅ぎながら、環境問題を学んだ。漁師さんも生きている。その活動と漁網回収を両立させる難しさを、汗水垂らして頑張っている友達にカメラを向けながら学んだ。

40年間、日本中で良いことをし続ける。ロングライフという言葉ほど、言うは易しはない。何より継続していくことが難しいこと。商売と持続可能性の立ち位置を知っている。

「続きは、お庭で。」

僕たちはJardinというチームで、「庭」という意味の言葉をつけた。スパイスボックスという会社から片足を出して、母屋から飛び出して、面白いことをしよう、という意味でつけた名前だった。が、気がつけば僕らのお庭に、面白いことをやっている人たちが来てくれて、軒先でお茶でも飲みながら、様々な話を聞かせてもらってきた。もちろん比喩表現なのですが…

時にはその活動のお手伝いもしてきた。お金をもらって勉強するなんて、図々しいかもしれないが、クリエイティブやデザインの仕事の良いところでもあると、勝手ながら思っている。

「面白いですね、だったらこういう方法で広げませんか?」「面白いねぇ…それならこんなものを作ったら、どうかな?」「こんな風にするのはどうでしょう。せっかく面白い活動なので。」

そんな風にして、クライアントと呼んでみたり、ブレーンと呼んでみたり、時にはチームに入り込んで、同僚と呼んでみたりしている人たちと、今日もお庭で語り合い、構想を練る。アイデアを出し、作戦を立てる。

SDGsって何だろう?CSRって何だろう?ESGって何だろう?今の生活者は何を考えている?どんな世の中になったらいいんだろう?
その世界で、僕たちができることって、一体なんだろう?

そんなことを今日も、お庭(Jardin)で考える。風を感じて、太陽を浴びて、水を飲んで。

4月からチームにジョインしたシニアプロデューサーから「僕たちの自己紹介noteを書いてください」と言われた。だから書きました。簡単に言えば、僕たちはこんなチームです。

名前はJardin(ジャルダン)と言います。よかったら一緒に考えましょう。これからのブランドと生活者のこと。それでは、また。

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