日本人の私は中国で差別されたか?
定期的に何かしら国際問題が起きることでおなじみの日中関係ですが、私が中国に留学していた2005年にも大規模な反日デモがありました。上海の日本料理店のガラスが破られたり日本車が破壊されたりといった事件が相次いで日本でも大々的に報道されていましたよね。
その渦中に北京にいた私は、日本側の大学から不要不急の外出は避け、尚且つ観光地など人混みへの遠出はしないようにという通達がありました。今にして思えばまるで近年のコロナ禍みたいな状態でした。もちろん学生たちの安全面を考えての当然の措置かと思いますが、せっかく中国現地で生きた中国語や中国文化と触れ合う貴重な機会が制限されて私含め学生たちも相当鬱憤が溜まっていましたが、実際日本人だと分かったら何かされるんじゃないか?という恐怖心はあり、当時はほぼ学校と宿舎の行き帰りのルートの中での生活でした。
そんなある日、宿舎の近所の公園で私が趣味の太極拳をやっていると同じ公園で体操をしている中国人のおばあちゃんが話しかけてきました。「その太極拳は何式?」私は「陳式太極拳です」と答えると、おばあちゃんはへっぴり腰ながら見様見真似で私の後ろで一緒に太極拳をやり始めました。そうしているうちに公園のおばあちゃんが何人か集まり、みるみるうちに太極拳サークルみたいに。
終わった後「君は中国語の雰囲気的に日本人かい?」と聞かれてそうだと答えると「大変だねぇ。巷でバカな奴らが暴れて。私たち老百姓(庶民)には関係ないことだけど」と。ついでなので私は恐る恐る「日本や日本人のことをどう思ってる?」と質問すると「どうも思ってない。中日関係より私たちは自分たちの生活が大事だから」別のおばあちゃんが重ねるように「太極一家という言葉がある。何人だろうが一緒に太極拳をやったら朋友(友達)だよ」と。
昨年、妻の実家に帰省した際にも、福島第一原発の処理水放出を受けて中国側が日本産水産物の輸入停止措置を取っていて中国国内でも報道されていました。ただ私が日本人だとわかってもこの話題で問い詰めてくるような中国人はひとりもいませんでした。
よく「中国人は日本人のことを嫌いなの?」と聞かれたりしますが、私が言えるのは中にはそういう人もいるけど、ほとんどはそうではないということ。私が中国現地で接してきた中国人の多くは日本人や日本文化に興味を持ってくれたし、国籍関係なく結局は先ほどのおばあちゃんのように日々の生活を乗り切るのに必死で、対日関係を考える余裕すらない人がほとんどなんじゃないかと。なので、過剰に中国人の対日感情を恐れる必要は無いかと思います。
確かに私も中国国内の旅行先で日本人蔑視の言葉をかけられたことがありますが、この時引率の中国人の先生がものすごい剣幕でブチギレてくれて、それも嬉しかったのですが、日本でも中国によくない感情を持っている人がいるように、中国人にも色々な考えの人がいます。なのでその感情を私は尊重したいと思いますし、親が戦争を経験していたり、当事者にしかわからない話もあるかと思います。
私は日中友好とか大それた事を言える立場ではありませんが、外交で埋まらない溝を民間交流で埋めるというのはある程度可能だという考えです。やはりネット上のやり取りだけではなく、現地に飛び込んで生身の人間と話す!異文化理解はここから全てが始まるのではないでしょうか?
※冒頭の写真は当時中国語と日本語を交互に教え合っていた北京大学の友達 北京頤和園にて
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