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中国で人生観を変えてくれたタイ人の話

今日は、私が中国上海に留学していた時にできたタイ人の親友の話をしたいと思います。彼のタイ語のフルネームはお経並みに長いとのことで、皆ニックネームの「Hand(ハン)」で呼んでいました。(由来は知りません)

私が中国に留学してよかったと思えることはたくさんあり、もちろん中国人との交流や中国現地の文化を学べたことも大きかったですが、上海留学の際には同じ中国語を学ぶ目的で集まったクラスメイトには様々な国の人がいて、多様な国民性というか各国の文化を学べた点も、今にして思えば大切な時間でした。

当時、私のクラスには韓国、タイ、イタリア、オランダ、フランス、ベルギー、ドイツ、モンゴル、オーストラリア、オーストリア、ノルウェー・・と様々な国籍の学生が集まっていていました。

その中で、唯一の東南アジア人としてタイ人のハンがいて、なぜか初日から僕の隣の席に座ってきて、一番最初に会話してくれた友達でした。

彼はとにかく陽気そのもので起きてる時間はずっとしゃべりっぱなし。ボケまくりツッコミまくり。
私が寝坊して遅刻してくると「早上好酒鬼!喝酒的研究怎么样?給我看看论文吧(おはよう飲兵衛!酒飲みの研究は進んでるかい?もう論文書けるんじゃない?)」とか、私のノートを見せると「很漂亮的白色!好努力喔(なんて綺麗な白色!努力の結晶だね!)」、私が自炊を始めようとしたら「很厉害,你要天天做方便面呢(えらいね〜、毎日インスタント麺作るなんて)」こんな感じで、毎日かなりイヤミなユーモアでいじり倒してきます。当時彼は中国1年目くらいだったので、かなり流暢な中国語を話していたと思います。

そんな攻撃的な芸風もあって、彼とは喧嘩になることもしょっちゅうでしたが、ある時、ハンの素顔を知ると同時に、その後の僕の人生観にも大きな影響を及ぼす出来事がありました。

それはハンの誕生日会でのこと。せっかくなのでレストランを予約しよう!ということで「ハンに何か食べたいものある?」と聞いたところ「一つオススメの店がある!アラカルトでいいから」と上海復旦大学近くのステーキ屋さんを紹介されました。幹事だった私はお店に友達12、3人で予約。

注文の際、リブロース、フィレ、サーロインと皆各々がお好みのステーキを注文していきます。そこで私は激しく後悔しました・・・そう、ハンはタイの仏教徒であり、宗教的理由で牛肉が食べられないのです。

いつも火鍋屋さんに行ってもハンは「不要放牛肉(牛肉を入れないで)」と注文していたのでそのこと自体はわかっていたのですが、ハンが勧めた店だから問題ないだろうという事で、彼が牛肉を食べられない件をすっかり忘れていたのです。

そこでハンが頼んだのは「白身魚のステーキ」

私はすぐにハンに謝った上で「牛肉が食べれないのになんでステーキ屋さん勧めたの!?」と聞いたところ、彼は笑顔でこう答えました。
「前にこの店で一緒に食べた友達が、うまそうにステーキを食ってたから、みんなにも勧めたくてね。ちなみに白身魚のステーキもまあまあイケてるぜ!」と。

皆さん、自分が一切食べられないモノを人に勧める勇気はありますか?しかも自分の誕生日祝いで選び放題の中で・・たぶん、ハンも白身魚が好物というわけではなかったと思うんです。

この一件を経て、僕自身も色々考えさせられました。こういう事か自然にできれば世界中で戦争も起こらないんじゃないかなぁ〜と大学生の浅い知見で考えてみたり・・当時はまだ言葉すらなかったかもしれませんが、正に「多様性を認める」ってこういうことなんだと。

留学が終わってそれぞれ帰国した後も、ハンとの親友関係は変わらず、一度日本に遊びにも来てくれました。少ない日程の中でわざわざ僕の地元の鎌倉にも足を運んでくれたんです。

お前の故郷を見せろ!と江ノ島に来たハンとの記念写真

また、タイで寺院で出家してかっこいい丸坊主になったハンにも、一度上海に会いに行きました。

ハンの出家祝いで上海で集合 真ん中は韓国人の親友パクちゃん

そして2022年、私が結婚した時にもしっかりとしたお祝いメッセージをくれたハン。

相変わらず口は悪いけど、僕の価値観を大きく揺さぶってくれたハンとは今後も死ぬまで親友でいれたらいいなぁと思っています。



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