CivilのCEOに東京で会いました【ブロックチェーン×ジャーナリズム】

“We think it's a beginning of the new paradigm for journalism, and we think it has an opportunity to activate people from around the world in the service of our mission.” (これはジャーナリズムのための新たなパラダイムの始まりであり、我々のミッションのもと世界中の人々を活気づける機会である) — Matthew Iles, CEO at The Civil Media Company

前回の投稿、【全訳】 Civil ホワイトペーパーよりかなりの時間が経過してしまいましたが、気がつけば同記事で紹介したジャーナリズム×ブロックチェーンのスタートアップ、Civilがそのトークンセール(ICO)を9月18日に開始すると発表していました。アメリカのブロックチェーン/仮想通貨界隈およびジャーナリズム/メディア界隈を中心に認知度が高まっているプロジェクトで、Washington Post, Wall Street Journal, The New York Times など一般メディアでも(期待感を込めて)報じられるようになってきました。

→ 2019年6月追記:その後Civilは2018年10月にICOを実施したものの目標額到達に失敗し、現在はConsenSysの支援を受けながらジャーナリズムのプラットフォームとして再スタートしています。

そんなCivilですが、去る7月、筆者はそのトップと直接お会いする機会に恵まれました。というのも、共同設立者かつCEOのMatthew Iles(マシュー・アイレス)氏がアジア歴訪(日本・香港・シンガポール・インド)の途上東京に数日間滞在し、中でも7月5日夜、"Global Blockchain Project Meetup Tokyo"というイベントに登場していたからです。

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来日中のIles CEOがCivilのミッションを語る (2018年7月5日@Neutrino | 小宮貫太郎)

このイベントは日本初のブロックチェーン系コワーキングスペースであるNeutrino(東京渋谷区桜丘町)を会場に行われ、他に4つの海外発プロジェクトがピッチしていました。これらは皆、ConsenSys傘下のToken Foundryと関わりがある事業のようです。Civilはその中でトリを務め、Iles氏が同プロジェクトの生まれた背景・ミッション・ガバナンスの仕組みなどについて10分強話していました。


----- 以下、Iles氏の語った言葉をQuoteと共に抄訳します -----

So, journalism is important — I hope you agree — to society.

ジャーナリズムが大事なのはそれが人々に有益な情報をもたらし、意思決定の助けとなり、コミュニティの絆を維持し、そして力を持つものに常に説明責任を守らせるから。逆に力を持つものにとってそれはささやかな脅威であり、ビジネスの面から言ってみればこのことが長年ジャーナリズムを経営する上のコストだった。

加えてこの20年来新たなコストが大きくなってきて、究極的にはジャーナリズムのビジネスモデルを崩壊させ始めている。それはジャーナリズムと市民の関係性を破壊したGoogleやFacebookのような巨大プラットフォームである。かたや新たなビジネスモデルの模索 — 官営、非営利、広告、購読料 — も行われているがどれも問題を抱えている。

良心を抱えたジャーナリストが困窮していく傍ら、巨大プラットフォームがルールを作るインターネットはどうなってきたかというと、荒らし・誤情報・詐欺がまかり通るひどいものになってしまった。

Now that we're in the terrific mood, ... let's talk about the potentials of blockchain and cryptoeconomics to change this paradigm.

ニュースの拡散と発見をより円滑にする「プラットフォーム」というコンセプト自体はジャーナリズムにとって素晴らしいものだと私も思ってきたが、それをオープンな、倫理的なものにする方法が問題だった。

いま、ブロックチェーンと暗号経済学を用いたインセンティブ設計によって初めて、そのような非中央集権的で自治性の高いニュースのプラットフォームを作ることができることに興奮している。

(中略:Civilにおけるtoken-curated registryを柱としたガバナンスの仕組みの説明 — ホワイトペーパー参照)

我々は8月にローンチする(注:上記のように延期し9月18日に決定→結局10月に実施するも失敗)。すでに13の報道機関がCivilプラットフォームのために集結していて、その中の1つ ’Global Ground’ は実は東南アジアをベースにしている。今後は、年末までに1,000の報道機関の参加を目指している。

We think it's a beginning of the new paradigm for journalism, and we think it has an opportunity to activate people from around the world in the service of our mission. (冒頭のquote)

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このピッチの後、筆者はIles氏と少しだけ会話することができました。ホワイトペーパーを訳した旨伝えると率直に喜んでくれました。

そして、その翻訳作業中から気になっていたこの質問をぶつけてみました — 「『ブロックチェーン』というバズワードを多用して、テクノロジーに疎いジャーナリズム界から救世主と思われようとしてるのでは?」 Iles氏は「テクノロジーについてももっと説明していかなければと思っている」と答えました。

筆者は個人的にこのテクノロジーの透明性という点は大変気になっています。実際このイベントでピッチをしていた4社のうちでもスライドがなく、技術的側面に触れていなかったのはCivilだけでした。共同設立者のIles氏自身が非エンジニア出身ということもあると思いますが、他でもなくジャーナリズムのためのプロジェクトを標榜する以上、ミッションや統治構造だけでなくプロダクトの詳細にもう少し踏み込んでもいいのではと思っています(Mediumブログに時々解説が載るので、私自身それを理解するリテラシーをもつ責任はあると思いますが)。

また、日本でのジャーナリズム系のイノベーションについて聞かれたので、今年2月の時点で既にCivilの存在を知りSteemitを始めた西日本新聞さんや、大学発の非営利調査(探査)報道プロジェクトのワセダクロニクルさんについて話しました。

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さて、長らく更新が滞ってしまっていたJanguardですが、Civilやその他のブロックチェーン×ジャーナリズムの動きだけでなく、幅広く海外のジャーナリズムの最先端をお伝えしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。(小宮貫太郎)

※この記事は、2018年9月にはてなブログに投稿したエントリーの再投稿です。