【フェラーリ】を三幕構成で読み解く
結末まで語るので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。
一幕
1)
1957年。エンツォは田舎で囲う愛人リナと都会の自宅で二重生活をしている。自宅は一人息子が難病で死んでしまい、妻ラウラとの夫婦関係は冷え切っている。会社経営だけが二人を繋ぎ止めている。
2)
フェラーリ社の業績は悪化して買収される危機。販売促進のためにイタリア半島縦断レース『ミッレミリア』での優勝を狙う。この賞金が入らなければ、もう後が無い。
二幕
3)
エンツォは有事の際のスムーズな交渉のために、ラウラが所有する株を50万ドルで買い取る。小切手は経営が安定するまで現金化しない約束にする。
4)
ラウラにリナの素性と息子が居たことがバレる。実に10年以上、息子が居ることをエンツォが隠していたことにラウラはショックを受ける。
5)
ミッレミリアが始まる。ライバルチームが相次いで棄権して、フェラーリチーム3台の独走状態になる。
6)
首位にこだわってタイヤ交換を拒否したデ・ポルターゴの車がパンクして、大勢の観客を巻き込む大クラッシュを起こす。ドライバー2名はもちろん子供を含む9名が死亡する惨事となり、エンツォはメディアに厳しく追求される。一方で、ラウラは小切手を現金化してしまう。
三幕
7)
ラウラが現金化したのは、エンツォにマスコミへの口止め料を工面するためだった。ラウラは無条件でエンツォに金を渡すが、一つだけ要望を伝える。それは自分が死ぬまではピエロをフェラーリ家の跡取りにしないことだった。
8)
エンツォはピエロを連れてフェラーリ家の墓参りをする。エンツォは会社と血筋、2つの意味でフェラーリを存続させる決意を強くする。
FIN
▼解説・感想:
4場と5場は、ほぼ同時進行だったように思います。
ラウラが最後にエンツォへの愛も尽きて金を持って逃げるのか、と思わせて、彼女もまたフェラーリを愛する者として、会社とそして血筋を守るために行動したことに、とても感動しました。
カーアクションはかなり渋くて、玄人好みなので、第一には人間ドラマを期待して御覧になるのが宜しいかと思われます。あれ、マニアが見れば車種とかエンジン音とか、かなり凝っているのだと思います。そこは私は詳しくないのであまり判りませんでした。でもディティールにはかなり拘って作ってそうなのは感じ取ることができました。
二人の息子のモチーフが繰り返し出てくるのが印象的でした。最初はエンツォ自身が二人兄弟で、そのうち一人は戦争で死んでしまったこと。それについては母が「死ぬべきではない方が死んだ」とまで言ってました。こっちの息子の方が可愛いなんて言っちゃダメなのに、なんてことを。何が彼女の精神をそこまで追い込んでいたのか?
そして、次にエンツォの二人の息子。正式な妻との間にできた息子は病気で死にました。そして愛人との間にできた隠し子だけが残っている状態です。リナはどっちの家の子にするのかと詰め寄り、悩んでいたエンツォを最後に後押ししたのがラウラだったいうのが、なんとも凄いです。戦国大名の正室と側室の駆け引きみたいで面白かったです。
そして、最後にダメ押しで、デ・ポルターゴの事故に巻き込まれる民家の兄弟ですよ。お兄ちゃんは事故に巻き込まれて死んで、弟だけが助かっていました。このテーマの重ね合わせは見事だと思いました。
あとは上映仕様に関しては、エンドクレジットにDolbyCinema対応が明記されていたので、日本でも興行して欲しかったですねー。
(了)
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