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店名のないグルメ紀行

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店の名前をあえて出さないグルメ紀行があっていい。気になったら探してみることができるのだから。
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シンガポールの生活感

シンガポールの生活感

シンガポールのミナミ③シンガポールの、特にミナミを歩いていて気づくのは、生活感のなさである。

ショップハウスの建築は確かに美しい。
商店に溢れる骨董や、なんだかわからない商品も見ていて楽しい。
多様な宗教施設も興味深い。
だが、ここの人たちはどこで何を食べているのか。それが見えない。

洒落たレストランはあっても、東南アジアや中華圏では至る所にあった食堂の類が見当たらないのである。
興味関心だけ

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曲がり角の魚料理屋②(店名のないグルメ紀行)

曲がり角の魚料理屋②(店名のないグルメ紀行)

「イワシの蒲焼きとご飯ください」
渋い店の雰囲気とは不釣り合いに洒落たマダムにオーダーする。

出てきたイワシの蒲焼きは、身が立派でジューシーだ。
味付けどちらかというと煮付けのような感じで、味も濃すぎない。
濃い味付けを見越してご飯を頼んだが、必要なかったようだ。

案の定、ご飯は出てこなかった。
おそらく、マダムはそれを見越していたのだろう。
いつでもウワテなのである。

じゃがいも焼酎と鰯の

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曲がり角の魚料理屋①(店名のないグルメ紀行)

曲がり角の魚料理屋①(店名のないグルメ紀行)

長崎の街はやけに混んでいた。

一日中休みを取れば4連休、というタイミング。
そんなケシカランことをするのは私だけかと思っていたが、世の中結構不真面目な人が多いみたいだ。

長崎の名物といえば、ちゃんぽん。
ちゃんぽんはうまいが、ここ数日ほぼ毎食ちゃんぽんで、そろそろ別のものが食べたかった。

どうしたものか。
あてがないわけではない。

まず、茶碗蒸し発祥の店。有名店らしく至る所で広告を見かける

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灯火、あるいは金目鯛(店名のないグルメ紀行)

灯火、あるいは金目鯛(店名のないグルメ紀行)

銚子の町は真っ暗だった。

街灯がないわけではないし、もちろん民家もあれば、店もある。
それでも人気は極端に少なくて、店が集まっている地区も、駅前の通り以外は見つけられない。

果てにて

それは11月も半ば、秋と冬の間の季節だった。
「果てに行きたい」と思い立ち、私は銚子へとやってきた。
そこは最も手っ取り早い「果て」だったが、夜にもなると、本当に「果て」だった。

小雨が降る中、中心地から離れ

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本当の牛タン(店名のないグルメ紀行)

本当の牛タン(店名のないグルメ紀行)

仙台に行った時のことだ。

その日の私は慌ただしかった。
石巻から朝早くに平泉まで行き、紆余曲折を経て、仙台のホテルに入った。
そんなバカな旅の仕方をした時は、うまいものを食うに限る。

だが、仙台は初めてで土地勘もない。
ネットで調べればすぐに店なんて見つかるだろうが、それではつまらない。
昔がたきの刑事ではないが、うまい店は足で稼げ、である。

牛タン屋を探せ

仙台といえば牛タン。
誰が広め

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