河内集平(Jam=Salami)

ライターを目指しています。大学・大学院時代の専門はフランス哲学(ベルクソン)。前職は日…

河内集平(Jam=Salami)

ライターを目指しています。大学・大学院時代の専門はフランス哲学(ベルクソン)。前職は日本の伝統芸能に関わる仕事。趣味の旅、音楽、映画、絵画、読書、料理を中心にnoteに書き綴っています。 はてなブログ: https://leflaneur.hatenablog.com/

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台風一過には早すぎる(台湾縦断実況note#3)

朝の嘉義 朝起きると嘉義は晴れていた。 いや、晴れていたというには雲が多すぎる。 晴れに限りなく近い曇り、とでも言おうか。 それでも、2日に渡る嵐の中を歩いてきた身としては、十分に嬉しいことだった。 私は水を得た魚のように朝から嘉義の街を歩き回った。 晴れた日光の下で歩くと、ここはやはり歴史的な街なのだとわかる。 日本統治時代や戦後に建てられた建物が台中とは比にならないくらい多い。 写真を撮っていたらきりがないほどだ。 一通り歩き回りながら、朝ごはんを探す。 どうも、

    • 行けるところまで…(台湾横断実況note#2)

      行けるところまで行ってみよう。 人生で一度は言ってみたいセリフである。 台風の余波続く台湾では、言わざるを得ないセリフでもある。 いざ南へ 11時台北発台中行き自強号。 朝食にワンタン麺を一杯だけ食べて、本屋で少しだけ時間を潰してから、私はプラットフォームへと向かった。 晩11分。 晩とは遅延のことらしい。この漢字は根源的には「遅い」ことを指すのだろうか。 そんなことを考えているうちに列車はやってきた。 思ったより順調である。 台北から台湾中部の中心都市台中までは特急

      • ケーミー(が去るの)を待ちながら(台湾横断実況note#1)

        台風の台北である。 万が一のために駅の地下街と直結したホテルを取り、テレビやネットで情報を漁る。 まだ台湾の空を眺められていない。 今日25日が台湾横断旅の初日だった。 昨日未明に台湾に上陸したケーミーこと台風3号の影響で、飛行機が飛ぶかどうかも不透明な状況。 だが幸いなことに、出発は遅れに遅れたものの、飛行機は19時ごろに台北に着陸した。 台湾に接近した時こそかなり揺れたが、着陸後の雨風はそれほどだった。 おそらく、峠は越したのだろう。 駅前地下街、今昔 成田空港で急

        • 腐れ縁(台湾縦断実況note#0)

          くそ、またか。 また、あいつと会うことになるのか…。 そいつは毎度毎度、急な連絡をよこしてくる。こっちは望んでもいないのに、旅先で合流する、と。 そして言うのだ。「今回もよろしくな」と。 はじまり 7月25日(リアルタイムで読んでくれている人にとっては明日)から一週間弱、台湾へ行くことになった。 台北から台南まで、鉄道で縦断しようというのが今回の旅の骨子である。 もとはといえば、友人と27日から台南へ行く予定だった。 だが、一度台湾を縦断したいという欲が出てくると抑え

        台風一過には早すぎる(台湾縦断実況note#3)

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        • 嵐を呼ぶ!台湾縦断
          4本
        • リハビリは3度ある(香港澳門遊記)
          3本
        • 店名のないグルメ紀行
          4本
        • 街の肖像
          6本
        • 朝ご飯から覗いた世界
          3本
        • 飲み物という名の冒険
          10本

        記事

          自分探しの旅は無意味なのか?

          「自分探しの旅」というと、若者がやりがちな無意味な行動の一つとして槍玉に挙げられることが多いように思う。 インドに行っても行かなくても、アメリカを横断してもしなくても、「自分は自分」なのだから、そんなことに金と時間をかけるのは勿体無い、と。 だが、「自分探しの旅」は果たして単に空虚なものでしかないのだろうか。 少なくとも私にはそうは思えない。 自分は本当に身近な存在なのか? 私は私である。 そんなことは当たり前のことだ。 少なくとも、多くの場合、当たり前だと思われている

          自分探しの旅は無意味なのか?

          とりあえず。(文章が書けないときのあれこれ)

          ここ最近、noteを更新できていなかった。 それどころか、文章含めあらゆる創作活動から遠のいていた。 その理由ははっきりしている。 書いていないからであり、作っていないからだ。 何を当たり前のことを、と思うかもしれない。 だが、これは存外大事な視点なのだと、つい最近気づいた。 *** 気圧の乱高下がひどいせいか、このところ体の調子が良くない。 かといって、家にいて、6畳の部屋で転がっていると、よくない考えばかりに足を取られて、心の調子が悪くなる。 だからどこかに行こう

          とりあえず。(文章が書けないときのあれこれ)

          食と歩きのリハビリ(香港澳門#3)

          どんな店でも、入る時は少し緊張する。 そもそも他人に話しかけるのに緊張するのだから仕方がない。 だがそれが異国ともなると、「この入り方で良いのか」「英語で行った方がいいのか、むしろ別の言葉がいいのか」「そもそも通じるのか」といった不安も増える。 旅を重ねて、なんとなく塩梅を得ていくわけだが、コロナ禍の三年間ですっかり飛んでしまった。 旅のリハビリは、飲食のリハビリから始まる…。 食事のリハビリ 香港は九龍半島、地下鉄オースティン(柯士甸)駅からほど近い食堂。 どうやら「茶

          食と歩きのリハビリ(香港澳門#3)

          地下鉄の出口の外は香港だった(香港澳門#2)

          体にまとわりつくような暑さと湿気。 目の前には今にも崩れ落ちそうな看板と室外機の羅列。 竹でできた工事用の囲いでは、上半身裸の男たちが何やら作業をしている。 暴力的とも言える車の排気ガス、食べ物と汗臭いような臭い。 ここは間違いなく、香港だ。 香港に来てしまったのだ。 飛んで香港 凡ミスによりバスに乗り遅れそうになった私だったが、どうにかこうにかバスに乗り込み、空港に辿り着き、飛行機に乗って、香港自治区に入境した。 空港で軽く昼を食べようと思ったが、よくわからず歩いていた

          地下鉄の出口の外は香港だった(香港澳門#2)

          飛んで香港…?(香港澳門#1)

          「安かったから買っちゃった」 と、母がハムなどを買ってくることがある。 買わなかったら出費は0円なのだから、安かったから買うというのは妙な話だと思っていた。 だが、ついこの前、私自身も「安かったから」と、ある買い物をしてしまった。 香港までの航空券である。 はるかな旅へ 2020年以降、コロナウイルスの拡大でほとんどの人は海外と縁遠くなってしまった。 もちろん私もその1人である。 それが、状況が変わったのか、各国が痺れを切らしたのか、2023年になって、ある程度自由な

          飛んで香港…?(香港澳門#1)

          冒険は続くのだ(インディ・ジョーンズ 運命のダイヤル)

          長年のファンならば、ワンカット目から違和感を感じるはずだ。 1981年の第一作目以降、インディ・ジョーンズシリーズには、ある「お約束」がある。 それは、提供のパラマウント社の山のロゴが出たあと、ワンカット目で、その山に被せるように、実際の山か山のようなものを映し出すというものだ。 第一作目は南米の山、第二作目は銅鑼に描かれた山、第三作目はアメリカの赤茶けた山、第四作目は趣向を変えてプレーリードッグの巣。 それが今回は、なかったのだ。 シリーズがシリーズである所以 今回

          冒険は続くのだ(インディ・ジョーンズ 運命のダイヤル)

          君は何を恐れているのか?

          ある天気のいい日のこと。 このまま家にいてもつまらない、どこかへ行ってしまいたい。 その時、ふと思い浮かんだのが、成田山新勝寺だった。 いきなり寺に思い至るのは珍しいかもしれない。 その時の私は、なんというか、行き詰まりを感じていたのだ。 コロナ禍で仕事にありつけたは良いが、本当は別のことがしたい。 だが辞める踏ん切りもつかない。後が怖い。 安易な考えではあるが、山奥の寺に行けば、何かわかるような気がした。 実をいえば、成田山には一度だけ行ったことがあった。 賑わう

          君は何を恐れているのか?

          曲がり角の魚料理屋②(店名のないグルメ紀行)

          「イワシの蒲焼きとご飯ください」 渋い店の雰囲気とは不釣り合いに洒落たマダムにオーダーする。 出てきたイワシの蒲焼きは、身が立派でジューシーだ。 味付けどちらかというと煮付けのような感じで、味も濃すぎない。 濃い味付けを見越してご飯を頼んだが、必要なかったようだ。 案の定、ご飯は出てこなかった。 おそらく、マダムはそれを見越していたのだろう。 いつでもウワテなのである。 じゃがいも焼酎と鰯の蒲焼 長崎は銅座。 大通りを一歩外れた場所に、その店はある。 おじいさんの板前

          曲がり角の魚料理屋②(店名のないグルメ紀行)

          曲がり角の魚料理屋①(店名のないグルメ紀行)

          長崎の街はやけに混んでいた。 一日中休みを取れば4連休、というタイミング。 そんなケシカランことをするのは私だけかと思っていたが、世の中結構不真面目な人が多いみたいだ。 長崎の名物といえば、ちゃんぽん。 ちゃんぽんはうまいが、ここ数日ほぼ毎食ちゃんぽんで、そろそろ別のものが食べたかった。 どうしたものか。 あてがないわけではない。 まず、茶碗蒸し発祥の店。有名店らしく至る所で広告を見かける。 次に、これも長崎名物の卓袱料理を食わせる店。1人で行ってもいいらしい。 そし

          曲がり角の魚料理屋①(店名のないグルメ紀行)

          準備しない

          この世界には2種類の人間がいる。 旅の準備を入念にする人と、全く準備しない人だ。 私はといえば、旅の準備は極力しないようにしている。 城を目指す 以前、松本に行った。 長野県の松本である。 事前に、松本といえば城だ、という言葉だけ聞かされていた。 どういう城なのかなどは全くわからないが、そんなに言われたら行くしかない。 私は駅に着いてからまっすぐ城まで歩いた。 私は歴史に関心がある方である。 だから、城があると聞けば、大抵の場合は行く。 何があるかわからなくても、大抵

          カレーを作る、ということ(#カレーにこれ入れる)

          カレーを作るのが好きだ。 特に、スパイスを自力で揃えて入れるタイプのやつが。 テキトーカレー作り スパイスからカレーを作る、というと、なにやら物凄い「こだわりの世界」の住人のように思われることが多い。 だが、スパイスは基本的なものを目分量で入れるくらいだ。 入れる具材もテキトーである。 初めのうちはこだわろうとして、ギーという牛乳由来のインドの油など揃えてみたりした。 だが、根が面倒くさがりなので長くは持たなかった。 今は、「玉ねぎをしっかり炒める」という作業すら億劫

          カレーを作る、ということ(#カレーにこれ入れる)

          夜の夜市に行ってくる(台北・臨江街觀光夜市③)

          夜台北の街に夜の帳が下りる。 何と言っても夜は台北の時間だ。 そして夜市の夜市たる所以がその時間にはある。 朝の夜市は街の人が買い出しに来る朝市だった。 昼の夜市は生活する人たちで溢れるエネルギッシュな場所だった。 夜の夜市を見るときがやってきた。 三度目のあの市へ しばらく別の場所を歩いていた私は、夜になり、三度目の臨江街観光夜市へと赴いた。 最寄りの信義愛和駅を降りると街はすっかり真っ暗で、美しい朧月が空には登っている。 朝や昼とは印象が違う。 私はまるで蛾のよ

          夜の夜市に行ってくる(台北・臨江街觀光夜市③)