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見落としてませんか?世界デジタル競争力ランキングで日本が29位の別の理由

2022年の世界デジタル競争力ランキング(スイスの国際経営開発研究所/IMD)で、日本が29位に低下したことに関するニュース記事やニュース動画を見て、誰も指摘していない視点が(私が確認した範囲内で)あったので、書いておこうと思う。

私はAI登場の前からデータを使った仕事をしてきたけれど、最近、特に、データ解析の結果のみが注目されて、大手メディアでさえ、元となるデータを確認する手間を省く場合が多いことが、気になってしょうがない。

下記のジェトロのニュース記事では、ランキングの評価に使用された項目には言及していたけれど、私は、もう一歩踏み込んで確認してみた。


ここからは、転載・引用自由という有料記事にしてみようかとも思ったのだけれど、より多くの方々に知ってほしい内容ということで、無料のままにすることにした。
以下の内容が役に立ったという方、有料記事として設定するつもりだった価格330円ほど、サポートしていただけるとありがたい。(今、書くことだけで食べていくことは、一旦断念すべきかと悩み中なので、特にありがたい。)


スイスの国際経営開発研究所(IMD)のWorld Digital Competitiveness Ranking 2022に関する下記のページで、PDFのフルレポート(184ページ)を閲覧したり、ダウンロードすることが出来る。


こういったレポートやランキング、他にも、各種論文等を読み解くとき、私は、基となるデータに偏りがないかどうかを確認することにしている。例えば、調査の対象に偏りがあったり、収集されたデータに「認知バイアス」が含まれたりする可能性の度合いを調べることにしている。

世界デジタル競争力ランキングで気になったのは、上記リンク先ページまたは、PDFレポートの31ページにある「Methodology in a nutshell」の中の記述だ。ランキングを決める54の小項目(Criteria)の内、34項目は統計データ等のHARD DATAだけれど、残りの20項目は「International Panel of Experts Executives Opinion Survey」というSURVEYだということ。

全体ランキングは、54項目を数値化したものを総合して算出しているようだ。

Panel of Experts」の構成等は分かっていない。
Opinion Survey (意見調査)」の公平性も分からない。

人生の半分以上が海外生活となった今、異文化や多文化に触れる機会も多かったからか、こういったグローバル設定での「Panel of Experts」や「Opinion Survey」から得たデータが、現実を100%反映しているとは、どうしても思えない。

PDFレポートの「Appendices and Sources」(170-172ページ)と「Notes and Sources by Criteria」(174-181ページ)を読めば、各項目についてより詳しく理解できるけれど、こういった基準を総合して算出されたランキングは、やはりひとつの目安でしかないと思う。

こういったランキングは、いち意見として、ある程度の目安にするべきで、このランキングデータを基準に日本の現状や世界的順位を100%判断することには、賛成できない。

このランキングのデータが、他の国が日本を評価する際の目安になっていることを危惧する人がいるとするなら、このランキングのデータに影響を与えて、自国や他国の順位を変えたいと思う国や人がいる可能性も否定できない。

そもそも認知バイアスとは、意識的なものというより、無意識的なものなので、これを排除することは難しい。

とすると、世界でのランキングで上位を目指すなら、「Panel of Experts」に含まれる日本人を増やすとか、含まれている人たちとの交流を増やすとか、そういったことも、グローバル社会では必要だ。

また、日本人は、身内を過小評価したり、謙遜したりということをしがちだ。たとえ「Panel of Experts」に日本人がより多く含まれたとしても、意見調査の際に、日本を過小評価したりすれば、身内を過大評価する文化を持つ他国のExpertsのデータと総合されると、評価が低くなってしまう可能性もある。

日本はダメだ、日本はダメだとメディアで報道している場合ではない。
そうする度に、日本人にも世界の人たちにも、日本はダメなんだという認知バイアスをかけることに繋がっている。

根回しとか、そういったことは、私は苦手だけれど、現実に仕事ができるかどうか等は関係なく、ジョブ型雇用の欧米社会で、どんどんランクを上げていく人たちをたくさん見てきた。

ランクを上げることで、肯定的な認知バイアスがかかり、よりランクアップに繋がる。そういった様々な要素が、ランキングに影響を与えている可能性があることも、考慮しておかなければならない。


ランキングの順位に一喜一憂するよりも、ランキングを目安として、上位にランクされた国が具体的に行っていることに、日本でも役立てることができるヒントが隠されていないかとか、ランクが下位の国と協力し合えることがないかとか、そういった取り組みにランキングデータを活用した方が、有用な気がする。

すべての国のデータをまとめて見ることができるという点で、このレポートはいろいろな使い方ができると思う。
海外との取引がある仕事をしているなら、まずは、日本(102-103ページ)と取引先の国の詳細データを見てみることをおすすめする。

私が日本の詳細データを見る限り、見くびられていることがたくさんあるなと感じる。でも、それは、悪いことだとは限らない。せいぜい他の国には油断していただいて、日本には、デジタル分野で、一気にトップに躍り出てもらいたい。

余談:
機会があれば、日本とニュージーランドのデータを比較した記事を書いてみたい。

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