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『田中角栄』と『ロッキード事件』

今回はQuoraで最近、865の高評価を獲得した解答です。

Quoraでリクエストされた質問は、以下の通り。

1.質問『ハニートラップに引っかかったと噂される政治家は、どなたですか?』

質問ありがとうございます。
『田中角栄』のエピソードの一つです。

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『ハニートラップ』というか、
『美人局(つつもたせ)』に引っかかってしまった、
ある一回生議員の話。

彼は、このトラブル解決のために多額の金銭が必要となってしまった。
そして様々なツテを頼ったが、どうしても、
あと100万円(現在の価値では3倍の300万円以上)が足りない。
彼は選挙を終えたばかりで借金もあった。

その議員は万策尽きて、田中角栄の事務所に電話をかけて、
『借金の申し込み』をした。
田中は事情を聞くと、
「分かった。すぐに金を用意するから取りに来るように」と電話口で言った。

その議員は、急いで事務所に向かうと、田中本人は急用で外出していた。
そこで議員は、留守番の秘書から大きな書類袋を受け取った。
その中身を確認すると300万円が入っていた。
議員が必要としていたのは、100万円である。

その書類袋に同封されていた『メモ』には、以下のように書かれていた。

「トラブルは必ず解決しろ。以下のように行動しなさい。
1. 100万円を使ってトラブルを解決すること。
2. 100万円を使って世話になった人に飯を奢る乃至、必ず御礼をすること。
3. 残りの100万円は万一のトラブルの為に取って置くように。
以上これらの金は全て返却は無用である」

その議員は感涙し、後々まで田中への忠誠を守り通した。

2.再評価すべき政治家『田中角栄』

『田中角栄』に関して、Quoraでのもう一つの質問と解答。

・質問『最近、田中角栄 さんを評価する報道が、増えてきました。あれだけ、ロッキード事件で、引き摺り落としのに、この落差は、どうしてですか?』

質問ありがとうございます。

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『田中角栄』『再評価』されるべき政治家、元首相だと思います。

現在は、時代的な背景や、一般の考え方なども変わり、
既にかなり『再評価』が進んでいるので、
これから書く内容は、今の若い人にはピンとこないかもしれません。

まず『ロッキード事件』の真相解明は、もはや不可能です。

3.『ロッキード事件』の概要

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『ロッキード 』真山 仁 (著) 

『ロッキード事件』=アメリカ航空機製造大手『ロッキード社』による、主に旅客機の受注をめぐっての世界的大規模汚職事件。

1976年2月 アメリカ議会上院で行われた、
『上院外交委員会多国籍企業小委員会』
『フランク・チャーチ』委員長の名から『チャーチ委員会』と呼ばれる)
における公聴会にて発覚。

4.全日空のトライスター発注と納入

1972年10月 国内航空大手『全日本空輸(全日空)』の新旅客機導入選定に絡んで、
『ロッキード社』『L-1011トライスター』を発注。

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1974年 田中角栄が金脈問題で首相を辞任した。
その約1年3カ月後、

1976年2月 『チャーチ委員会』
『ロッキード社が、全日空をはじめとする世界各国の航空会社に、
『L-1011 トライスター』を売り込むために、
同機の開発が行われていた1970年代初頭に各国政府関係者に、
『巨額の賄賂をばら撒いていた』ことが明らかになった』

『ロッキード社』から『全日空』への工作費は、約30億円だったと言われる。

5.日本国内でのその後の事件展開

1976年7月 田中角栄元首相が受託収賄と外為法違反の疑いで逮捕。
ロッキード社による全日空に対する売りこみ。
これに絡んで、田中角栄が5億円の賄賂を受領し、
「よっしゃ、よっしゃ」と発言したとされる。

『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』春名 幹男 (著)

さらに、
・『全日空ルート』
『若狭得治』=全日空の社長、以下数名の役員及び社員の収賄、贈賄双方の立場となった。
・『丸紅ルート』
『丸紅』(日本の大手総合商社)の役員・社員
=ロッキードの販売代理店として。
・『児玉誉士夫』=行動派右翼の大物と呼ばれ、暴力団やCIAとも深い関係にあった。
・『小佐野賢治』=国際興業グループ創始者、日本の実業家。
など、相次いで逮捕者を出した。
またその後、関係者の中から多数の不審死者が出る。

こうして、戦後の日本の疑獄を代表する大事件に発展した。

6.『ロッキード事件』の背景

アメリカ『ロッキード社』『L-1011トライスター』の販売不振。
『L-1011 トライスター』は、他国においても発注が伸び悩んでいた。

『ロッキード事件』は、日本だけでなく、
・西ドイツ(当時は東西に分かれていた)
・オランダ
・イタリア

などでも、国会議員や王族を巻き込んだ疑獄事件であり、
日本国内の事件だけを追っていても全貌は見えない。

7.『ロッキード事件』当時の日本国内の背景

・高度経済成長期
・60・70年代安保闘争真っ最中

つまり当時の国民は、社会問題に強い関心があった。

『高度経済成長』⇨「日本は、アメリカに次ぐ2位のGNP(国民総生産)獲得?」

「我々の生活は、そんなに豊かになったか?」

「はっきり言って、日本国民の暮らしは、経済的に豊かになった実感はない」

しかし、
・偉いポジションにいる政治家たちが、湯水のように大金を使っている。
・つまり彼らが富を独占しているのでは?

そのタイミングで発覚したのが『ロッキード事件』だった。
当然国民の不満は爆発した。
それまでの学生安保闘争の、思想的な側面のある『政治運動』とはまた違う。
国民の経済的な生活に根ざした怒りだった。

8.広がる市民運動

実際『ロッキード事件』発覚後、
消費者連盟や労働組合などの抗議デモから、
『ロッキード汚職に怒る市民の大行進』が起こった。
その対象が『児玉誉士夫』=(自称CIAエージェント、右翼運動家、暴力団顧問)を発端として発覚した、国家規模の贈収賄事件。

『ロッキード社』⇨『全日空』への売り込み。
その当時の総理大臣『田中角栄』の関与を、
『東京地検特捜部』が炙り出した。

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さらに、『田中角栄』は有罪判決。
田中は控訴したが、控訴棄却。
その後の上訴するも、
1993年 『田中角栄』の死で控訴審打ち切り。

『ロッキード事件』の真相、および、
『ロッキード事件』への田中角栄の関与の真相は、
もはやわからない。

9.著しくイメージダウンとなった政治家『田中角栄』

しかし国民の怒りの対象となった『田中角栄』に、金権政治的な側面があったのも事実。
そして、政治家、一国の総裁としての立場を悪用し、
私利私欲を貪る『悪徳政治家』のイメージが、強くついて(残って)しまった。

悪徳政治家が「よっしゃ、よっしゃ」と、
多額の現金を受け取る戯画映像が、
どれだけのメディアでパロディにされたか。

『田中角栄』は実績、功績の多い政治家でもあった。
そのため、一時期のイメージダウンが酷すぎるので、
政治家としての『再評価』は然るべき人物。

そしてむしろ『田中角栄』のイメージが悪くなったのは、
『ロッキード事件』による、政治の表舞台からの失墜後。

10.『闇将軍』・『キングメーカー』と呼ばれる田中角栄

『田中角栄』は、『ロッキード事件』で逮捕、起訴されたことによって自民党を離党した。

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その後田中自身は、無所属候補として地元選挙区で1位当選をし続ける。
『無所属衆議院議員』ながら、
『田中派』を通じて裏舞台から政界に影響力を維持し続けた。

この時期、マスコミは田中を『闇将軍』と称した。
特に
・『大平正芳』
・『鈴木善幸』
・『中曽根康弘』

の首相就任には田中の支持が不可欠であった。
いわゆる『キングメーカー』のポジションに回り、
政界への影響力を維持し続けた。

田中は『闇将軍』として、

・閣僚や党役員や国会の委員長人事にも関与。
・法務大臣や自民党幹事長などの重要ポストを田中に近い議員で多く占めた。
・田中が闇将軍として大きく影響力を与えた内閣は「角影内閣」、「直角内閣」、「田中曽根内閣」とも呼ばれた。
・自身の無罪が確定した場合は自民党への復党による、表舞台復帰と総理総裁への返り咲きすら目論んでいた。

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