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ミュージシャン『デヴィッド・ボウイ』について - 絶えず変化し続ける音楽性⑥2004~

『デヴィッド・ボウイ、絶えず変化し続ける音楽性』6回目の投稿です。

こちらが過去投稿のリンク。

2004年 〜ボウイ引退の噂〜

前回の投稿⑤の最後に少し触れた、ボウイの『リアリティツアー』中、ハンブルグで動脈瘤の前胸部の痛みで緊急入院、残り14公演を中止のあと、ボウイは創作活動に消極的になってしまった。

Never Get Old.

2004年アルバム『リアリティ』収録曲のシングルカット。
『歳をとらない』(直訳)のタイトルが皮肉に感じられるほどのタイミングで、病気療養に入り、以後、新作リリースが途絶えてしまう。
公の場にもほとんど姿を表さず、ほぼ引退状態。

2010年 ブライアン・イーノのインタビュー
「ここ数年のボウイはすっかり創作活動への意欲を削がれてしまったようで、この調子だと新作は当分ないだろう」
同年 妻イマン
「近年のボウイは自宅でアート作品の制作や執筆に勤しんでおり、その生活に満足している」
「現在は自身が蒐集した100個以上のオブジェを撮影し、それに自身のテキストを添えた書籍『Bowie: Object』を執筆中であり、ボウイが第一線に復帰することについては『本人次第』」とコメント。

2011年 伝記作家ポール・トリンカ
「よほど劇的な作品を届けることがない限り、もう一線には戻らないだろう」

2011年3月 未発表アルバム『トーイ(Toy)』がネット上に流出するという事件が発生。
アルバム『トーイ(Toy)』とは?
2001年に久々に共同プロデューサーにトニー・ヴィスコンティを迎え、制作が進んでいたボウイ初のセルフカバーアルバム。
内容的にはボウイ初期の60年代の曲のセルフカバーに新曲を加えたもの。
この『Toy』制作中に生まれた新曲を雛形に次回作である23thアルバム『ヒーザン』の制作に切り替わり、『Toy』はお蔵入りになった。

Slip Away.

Afraid.

『ヒーザン』収録の上の2曲は『Toy』のセッションで生まれた曲。

2013年

2013年1月8日 ボウイ66歳の誕生日 - David Bowie公式サイト上で10年ぶりとなる新曲と新作を3月に発売すると発表。

Where Are We Now?

同日10年ぶりの新曲「ホエア・アー・ウィ・ナウ?」がミュージック・ビデオと共に公開された。
同曲は瞬く間に世界各国のiTunesチャートで1位を記録し、英国シングル・チャートでも『Jump They Say』以来20年ぶりにトップ10入りを果たした。

2013年2月25日

The Stars(Are Out Tonight.)

続く2ndシングル。※この曲にはPVもあるけど、視聴年齢制限があってリンクが貼れないので音源のみです。

なおPVの方は女優『ティルダ・スウィントン』とボウイが共演。※興味のある方はぜひYoutubeで見て下さい。

2013年3月13日 

25thアルバム『ザ・ネクスト・デイ』リリース

プロデュース
・デヴィッド・ボウイ
・トニー・ヴィスコンティ

発売されるや各国のiTunesチャートを駆け上がり、60ヶ国以上で1位を獲得。
英アルバム・チャートでも『ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ』以来20年ぶりに1位を獲得。
日本でもオリコン初登場5位を記録し、20年ぶりのトップ10入りを果たすと共に、66歳3ヵ月での歴代最年長トップ10入りの記録を樹立。
アメリカにおいてもビルボード・アルバム・チャートにおいて、最高位4位だった『レッツ・ダンス』以来30年ぶりのトップ10入り、かつ自身最高位の初登場2位を記録。
また「2013年に世界で最も売れたアナログ盤」だという。

ボウイの新作レコーディングは極秘裏に進められており、レコーディングは断続的に行われ、2010年11月の最初のセッションから2年をかけて完成した。
そして事前情報がまったく無いままリリースの告知がなされた。
参加したミュージシャンやスタッフを始め、果てはスタジオにコーヒーを届けるデリバリー業者の配達係まで全員がレコーディングしている事実を決して口外しないよう誓約書にサインを求められた。
ボウイ本人がインタビューには一切応じないという方針で、メディアにも姿を現さなかった。

「史上最高のカムバック・アルバム」

各国プレスのレビューは軒並み好評で、「史上最高のカムバック・アルバム」とも評され、同業者のミュージシャンにも好評を得た。

BBC - 「挑戦に近い凱旋作。画期的でダークで大胆で創造力に満ちている。デヴィッド・ボウイにしか作り得ないアルバム」

The Next Day.

PVには俳優『ゲイリー・オールドマン』が出演。

Love is Lost.(Hello Steve Reich Mix by James Murphy for the DFA - Edit)

Valentine's Day.

この曲を聞いても80年代以降のボウイはつまらないと言えるだろうか?

2015年

映画『地球に落ちて来た男』が舞台化。ボウイ自身もプロデュースを担当。舞台化作品のために、新曲の書きおろしと、過去の楽曲がアレンジされて提供される。

そんな中、またしても嬉しいサプライズ。

2015年11月19日

Blackstar.

新曲リリース。

2015年12月17日

Lazarus.

新曲を2曲も立て続けでリリース。新作アルバムへの期待が高まる。

2016年

2016年1月8日

26thアルバム『ブラックスター』リリース

プロデュース
・デヴィッド・ボウイ
・トニー・ヴィスコンティ

本作ではダニー・マッキャスリンやジェイソン・リンドナーなど、ジャズ・バンドであるマリア・シュナイダー・オーケストラのメンバーが参加しており、ジャズの要素を取り入れた世界観となっている。

前作『The Next Day』の完成後すぐに制作が行われ、前作同様完全極秘裏に製作された。

このアルバムのためのアートワークのデザインは、以前にも「Heathen」、「Reality」そして「The Next Day」でボウイと組んだジョナサン・バーンブルック が制作した。
このアルバムのジャケットは、真っ白な背景の上に、大きな黒い星が真ん中に飾られ、そして星の部分部分のパーツによって「B O W I E」と表されたと思われるものによって構成されている。
なお、アルバムのジャケットにボウイ自身が登場しないのは、「The Man Who Sold The World 」のアメリカ版と、「The Buddha of Suburbia 」のイギリス版を除いては初のことである。

I Can't Give Everything Away.

アルバム『ブラックスター』リリースの2日後、
2016年1月10日18か月の闘病の末、肝癌により死去したことが公式Facebookにて公表された。

トニー・ヴィスコンティ - 「彼は最後まで楽天的だった。ずいぶん弱ってきてるけど、新しい治療法を試してみるつもりだとか、新しい曲を書いてて、さらに次のアルバムのレコーディングをどうしようとか、話してた。私たちも皆そうだけど、彼もまた、もっと時間があると思ってたんだろうな」

2017年

2017年度グラミー賞にて、遺作となった『ブラックスター』19部門ノミネート、5部門受賞

大抵、名声を得たミュージシャンは、その時点までに確立した己のスタイルを貫こうとし、ファンもそれを望んでいる。
ボウイの場合はスタイルを変化させることによって様々なジャンルにわたる大胆な音楽性の変化を繰り返し、それぞれのジャンルにおいてエポック・メイキングな作品をリリースしてきた。
時代ごとに超個性的なミュージシャン達とコラボを行うのみならず、はるか年少のアーティスト達とも積極的に交流する柔軟さも持つ。
批評的・商業的なリアクションはその時々で不安定ながら、生涯貪欲で前進的な創作を続けた。
そのためか、1970・80年代以降のミュージック・シーンは、なにかしらボウイの音楽的影響を受けているミュージシャンも多い。

それまでとは打って変わった音楽性を常に提示する、という実験を繰り返す。
様々な意味での自己刷新を計る。

音楽性をコロコロ変えるのは、安定した商業面の成功に不利だが、それでもセールス的に成功している部類に入るミュージシャン。
ただし、いわゆる『ロック・レジェンド』としては格段に総セールスが少ない。
アーティスティックな面と商業面をうまく両立させている数少ないミュージシャンである。

1999年 芸術文化勲章コマンドールをフランス政府より受賞。
2000年 大英帝国勲章コマンダー叙勲辞退
2003年 大英帝国騎士号叙勲辞退

2002年 BBC『100名の最も偉大な英国人』※英国人大衆の投票により選出。

チャーチルやベッカム、ダイアナ元妃、ジョン・レノンらとともに、29位にボウイが選ばれる。

Louis Vuitton CM 2013

2013年『ルイ・ヴィトン』のCMに音楽起用、本人も出演。

Death of David Bowie『デヴィッド・ボウイの死』

2014年半ば ボウイは肝臓がんと診断。
2015年半ばまでに癌が寛解することが期待されていた。
2015年11月までに癌は彼の体全体に広がり、ボウイは自身の状態が末期であると宣告された。
癌治療を終了することが決定されたとき、彼は『ラザロ』のPVを撮影している最中だった。

2016年1月10日 英国のミュージシャン、デヴィッド・ボウイはニューヨーク市のラファイエット通りの自宅で18か月間肝臓がんに苦しんで亡くなりました。

2016年1月10日公式Facebook発表
"Jan. 10, 2016 – David Bowie died peacefully today surrounded by his family after a courageous 18-month battle with cancer. While many of you will share in this loss, we ask that you respect the family's privacy during their time of grief."
「2016年1月10日 – デヴィッド・ボウイは18か月にわたるがんとの勇気ある戦いの末、家族に囲まれて平和に亡くなりました。多くの人がこの喪失を分かち合いますが 、私たちは家族らの悲しみの時に家族のプライバシーを尊重することを、あなた方にお願いします。」

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2016年1月10日 ニューヨークのボウイのアパートの外の献花

2016年1月12日 ボウイの意志に従って、ボウイはニュージャージーで火葬され、彼の遺灰はインドネシアのバリ島で仏教の儀式に従って散らばった。

The BRIT Awards 2016.David Bowie Tribute

ボウイの死の翌月アニー・レノックスはブリット・アウォードのプレゼンテーションでボウイに敬意を表した。
ボウイの古いツアーバンドと共に、ボウイの友人で俳優のゲイリー・オールドマンがボウイに代わって賞を受け取った。
ツアーバンドがボウイの名曲インストメドレー演奏の後、歌手のロードは『Life on Mars?』を歌う。

Ziggy Stardust.Official Video

2012年にRolling Stone InternationalとEMIが共同制作した Ziggy StardustのPV。(本人の出演なし)

Life on Mars? David Bowie

最後はこの曲で。

ボウイは死の直前まで音楽活動を続けた。尊敬しかない。

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