記事一覧
【小説】みんな見てる。
矢島綾は、孤独を感じていた。
それは、妻子ある男性との恋に溺れていたからだ。
綾は、仕事で知り合った一回り年上の水野尊と、一年前に恋に落ちた。
それ以来、綾は水野への一途な愛を貫き通していた。しかし、水野は口では「愛している」と言っても、妻と別れるつもりはなく、来年小学校に入る子どもにも溢れんばかりの愛情を注ぎ続けていた。どれだけ彼を好きでも、彼との愛に未来は見えない。そうと感じた綾は、
【小説】シンデレラはいつだって
おとぎの国に住むシンデレラは母が亡くなり悲しみの日々を過ごしていました。そんなある日、父は再婚。継母と義姉二人が家に来ることになったのです。しかし、再婚後、まもなく父も亡くなってしまいました。
シンデレラに残された家族は継母と義姉二人。どちらもわがままで自分勝手。シンデレラの気持ちなんてちっとも考えていません。しかし、シンデレラはわかっていました。この世で生き残れるのは、美人で優しくて素直な女
【小説】マリコの想い
誰もいない車内で彼女はなぜ私の隣に座ったのだろう。
彼女を通り越し通路の向こう側をちらりと見る。平日の新幹線自由席は、人が少なく空いている。
この席に座らなければいけない理由。もしかして、それは私なのかもしれない。
「あの? どこかでお会いしましたっけ?」
私より一回りほど下、20代前半だろうか。とてもキレイだが、口元の大きなほくろが、やけに目出つ女性。少しうつむき加減の彼女を下から覗く