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#05 大分 / いいちこ

タイトルに「県」をつけるか否か。でもスッキリがいいから「都道府県は省略しよう」と決めた…ものの、いちばん最後の47つ目がそうはいかないのがうっすら見えていて…いや、先のことは考えないでおこう。

さて、大分は地獄プリンなど惹かれるものもたくさんあったのですが、地図を眺めていたときにこれが目に入り…ぜったいコレ!!と。

私は中学から地下鉄通学だったのですが、地下鉄の壁にドカーーンと貼ってあるとてもおっきな、素敵な、斬新な広告。シンプルなコピーに、ポツンと佇むアレが焼酎だと知るのはもっと後になってからのこと。

そして、そのコピーも不思議なものが多くて。肩を叩かれそうで寸前で止められるような。あれ?なんだったんだろ…と気になってしまう感じの。

あれはいくつの頃だったんだろか、そのとき貼ってあった広告がおっきな海で。気付いたら駅員さんに譲ってくださいと懇願してました。

優しい駅員さんは「今月が終わったら」と言って、約束どおり月の終わりに大きなポスターを丸めてくれました。

うれしくて部屋の壁に貼りました。
狭い部屋の壁に大きな海のポスター。
もはや海。
今もまだずっと貼ってあります。

と、そんなポスターの中に佇む焼酎が今回のお題です。

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#05 大分 / いいちこ

お酒を飲まない人でも、だいたいみんな知ってるこの焼酎。

いいちこは、大分県の酒造メーカー、三和酒類が1979年(昭和54年)から発売している麦焼酎の銘柄である。日本国外でも世界約30の国と地域で販売されている。

すごい、ワールド級。
ちなみに「いいちこ」は大分の方言で「いいですよ」という意味なんだって。へええ。

今日は「なぜ大分で焼酎」という歴史ではなく、いいちこの「広告」と「デザイン」について少し掘ってみようと思います。

同社は営業活動をほとんど行っておらず、宣伝部やマーケティング部、商品企画部などは存在しない

ええ!あの素敵な広告展開、きっとすごい宣伝部なんだろうな…と思ってたら、存在しないのですか…!

一方、イメージ戦略には力を入れており、広告には1983年(昭和58年)より河北秀也を起用している。商品企画や広告戦略は、すべて河北が一手に取り仕切っており、CMの企画、演出、編集、そしてナレーションまでも彼によるものである。 

ええええ…お一人に一任。すごい関係。いいちこと聞くとやっぱりあのポスターのイメージが強い(むしろテレビを見ないのでポスターのイメージしかない)けど、当時三和酒類さんから相談をされた際に予算があまりに少なくてポスターくらいしかできなかったのだって。

ちなみに、今月のポスターはこちら。

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引用元:https://www.iichiko.co.jp/design/poster/

そして、これまでのポスターデザインはこちら

1984年からスタートしてるのね…ほぼおない年。スタート当時は今のとちょっとテイストが違うけど、35年近くまったくブレてない。

あの独特なポスターについて、河北さんは

「まったく独特だとは思っていません」
「あえて言えば、広告にしていません。コンセプトもないのですが、飲むときの気分、時の流れに合わせています」

と。そうか、あのコピーは「飲むときの気分」なのか。商品がどこにあるかわからない見た目については「広告写真にならないようにするため」だそう。

駅貼りのポスターが多い理由については、

「テレビや新聞、雑誌の広告は一回見れば終わりですが、ポスターは同じ場所に定期的に貼り替えるので毎回、必ず見てくれる人がいます。そういう人たちの口コミで徐々に広がっていけばいい。“急がない広告”として最適なんです」

まさに私そのクチです。毎日通学時に視界に入り、無意識に今月はどんなだろと楽しみにしてる。小さい頃から「いいちこ」という名前はずっと記憶に刻まれ続けてきた。残念ながら飲めない大人になったけど。

河北さんは一番最初に「僕が責任もって広告宣伝物をやるから、文句を言わないで黙っていてほしい」と三和酒類さんにおっしゃったそう。今、クライアントとデザイナーでそんな対等な関係ってどれくらいあるのだろ。でも、デザイン案を見せることなく、完成したポスターを送るんだって。これでいきます、って。コマーシャル案も見せないんだって。それって相当な信頼関係がないとできないよね…。いやーすごい。

だからこそこの30数年間、いいちこのプロモーションは一貫してるんですね。

あと、もう一つ気になってたこと。

"下町のナポレオン"

この、いいちこの愛称。
どういう意味なんやろ、とずっと頭の片隅で思ってました。

高級ブランデー「ナポレオン」に匹敵するおいしさを、庶民的な感覚でたのしめるという意味でつけられたもの。

らしいです。へええ。
ちなみに2000通くらいの公募の中から選ばれた、看護師さんのコピーなんだって。へええ!

いやーーー今回も勉強になりました。

いいちこ、いつかちょっと飲んでみる機会があるといいな。

ちなみに、ポスターを駅員さんからいただいた翌月、地下鉄には「ポスターは期間がおわったら廃棄するからあげれませんよ」みたいなメモが貼ってありました。あの駅員さん、怒られちゃったのかな…だとしたら申し訳ないな…でも今も大事に(実家に)貼ってます。

あのときは、本当にありがとうございました。

というわけで、今日はここまで。
次回は長崎県に行きます!

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追記

ご興味ある方はこのインタビュー記事も興味深かったのでぜひ。
経営にとってデザインとは何か。- ほぼ日刊イトイ新聞