KILLING ME SOFTLY【小説】68_もう一人じゃないんだな
彼女である私をよそに、うたた寝をしたことに対する自己嫌悪に陥っていた千暁は、食事処にて新鮮な海の幸と贅沢な冬の味覚を楽しめる夕食を一目見るや否や、喜びを爆発させた。
「やべえ、旨そう!」
「ちょい待ち。ここ一泊、幾らした?」
予想を遥かに超えた煌びやかで豪勢な和会席に狼狽える。元はと言えば私が彼の時間を欲しがり、旅行に誘うも千暁はこちらに財布を出させず現時点で支払えたのはおやつ(プリン)代のみだった。
更にまさかこのような〈きちんとした〉晩餐が待ち構えているとは。
「細かい