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白浜維詠
2024年5月12日 12:40
第十一章 プラトンの嘆き、英雄と賢者7フラウ・イリスは語る「あーあー、やっぱりやらかしやがりましたね。そーすけ」と、廊下内の異変に気付いたラファエルが瞬間移動して来てわさび粉まみれのアレクシスを抱き止め、部下の力量を試す為に親族を利用するのかお前は。と非難めいた目をゲオルグに向けてから「すぐに目と鼻の洗浄致しますから心配しないで」と言うと患者ごと消えてしまった。「悪ぃ、ラファエ
2023年1月8日 15:55
第六章・豊葦原瑞穂の国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇6小角と男メンバー6人が泊る離れ、鷹の間は壁面と屋根を黒くした古民家風の2階建てであった。夕食から帰ると1階に4組、2階に3組と分けて布団が敷かれてある。窓を開けると、冷房も要らない程の夜気が部屋中を満たす。阿蘇だけ一足早く秋へと進んでいる…その夜は「これが独身最後の旅だべなー、みんな、ありがとな」と3日後に結婚式を控えた隆文をきっ
2023年1月11日 19:29
第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓1以降は、七城米グリーン七城正嗣が大学時代にまとめたレポート「野上鉄太郎の生涯」を参考にして話が進行する。興梠葛生は、この赤ん坊を「阿蘇の神からの授かり物だ」と養子にして籍に入れ、大事に育てた。が、4年後に突如、東京神田の柔術家である真鍋廣一《まなべこういち》に鉄太郎を託すことになる。「何で?願掛けしてまで授かったと思って育てた子
2023年1月13日 19:28
第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓2旅館から帰る途中、隆文は「夕飯はおらが作る!」と何やら張り切って食材を買い求めていたが…隆文のエコバッグから出てきたのは鶏肉、人参、大根、ごぼう、小松菜、麦みそに小麦粉…だし用に干ししいたけと鰹節だった。「どう見ても『だご汁』を作る気ですね」と正嗣が言われるでもなく野菜を洗い始めた。父と二人の男所帯で当然のように料理している男
2023年1月15日 10:09
第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓3和歌山県伊都郡九度山町という所に、九度寺と呼ばれる慈尊院がある。九度寺の謂れは、空海の母、玉依御前が「息子空海が開いた高野山を見たい」との一心で老いた身ながらはるばる讃岐から出てきたものの…空海自身が高野山より七里四方は女人禁制の聖地、としてしまった為、御前はこの場所より先まで行けなくなった。御前はこの寺に逗留し、ご本尊の弥
2023年1月16日 18:33
第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓4それはなんとも、奇妙な光景であった。ストーンヘンジを思わせる巨石群のふもとの地面で、7人の若者と阿蘇の地霊が円を作って座り込んでいる。蘇りの始まりの地で、全てが明かされる。ブッダの予告通りになった、と悟は思った。阿蘇山の神健磐龍命からいま、真実が明かされるのだ。悟は緊張して隣の隆文にも聞こえるほどごくり、と音を立てて唾を呑み
2023年1月18日 22:12
第六章・豊葦原瑞穂国、ヒーローだって慰安旅行野上の姓5「読んでみよ」とミコトが聡介の手に握りしめられた鉄太郎の手紙を手持ちの扇で指した。聡介は肩身をすくめて6人の仲間を見回した。5月のGWまでは「普通の人々」だった戦隊の仲間たちは、皆それぞれの覚悟を持って肯き返した。言われるまま聡介は封筒から便箋5枚の長い手紙を声に出して読み始める…聡介へ緋沙子さんが野上の家を出たのは
2023年4月17日 08:03
第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律翠玉2「あなた方が暮らす星は、ここです」とシッダールタが池の水面に映し出した惑星は…なんと深い青色の美しい星だったことか!「地球(ちだま)、アース、テラとも呼ばれる星です。見た目は美しいが、あそこに住まう人間の有り様は、醜悪なのです。私が生前弟子たちに伝えた仏法によって少しでも調律出来たらいいが、それでも限界があるでしょう」醜悪?こ