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甘い果実ep.2

 
 
あなたは…どうして私の心を掴んで離さないの?無邪気なフリ?本当は私よりも色んなこと知ってるんだよね?…悲しみも…喜びも…あなたを構成するものは何?あなたを見ていると…触れたくなる…

初夏の運動場は不思議な場所。半袖の体操服の裾で汗を拭う時にチラッと見える腹筋。惜しげもなく胸を揺らしながら走る50メートル走。 男女の笑い声が交叉する。

新緑の香りがする風を浴びながら運動場を見ていた。

「あ…」

早崎くんと目が合った。真っ直ぐな眼差しを討ち返すように見つめた。

「あ…」

早崎くんの走り高跳び…背面跳びのフォームが綺麗。

「あ…」

マットから落ちた。

〈消毒液の用意しとこうかな…〉


ガラガラ~
 
「せんせー怪我した」
 
「どこ?」
 
「膝と肘が…」
 
「小学生みたいなトコを…笑。見せて」
 
彼の膝と肘を消毒し絆創膏を貼ってあげた。
 
「ねぇ~」
 
「ん?」
 
「俺のこと誘ってんの?」
 
「へ?何が?」
 
「誘ってんじゃないなら…ここのボタンは、ちゃんと閉めといた方が良いよ」

彼の長くて細いしなやかな指が 私のシャツの胸元のボタンに触れた。

「え?やだ…いつから外れてたんだろ?」

直ぐに胸元を隠してボタンを留めた。
 
「今日…何人治療した?」
 
「5人かな…」
 
「全部オトコ?」
 
「うん…」
 
「今晩のオカズだな…笑」
 
「えーーー!やだーーー!!」
 
「やだっつったって…自分が見せてたんじゃん笑」
 
「ちなみに…何が見えてた?」

恐る恐る聞いてみた。
 
「知りたい?」
 
「あーーやっぱり知るのが怖いからイイ。言わないで…」
 
「吸い付きたくなるよ~な~♫」
 
「もう無理無理無理!」
 
「くくくくくくく(笑)」
 
彼はお腹を抱えて必死に笑いをこらえながら…笑った。

〈こんな風に笑うんだぁ~笑った顔もカワイイな…〉
 
「んじゃね」
 
「はい…さようなら」
 
「今晩のオカズに使わせてもらうから…笑」
 
「や…やめてよ…笑」
 
「じゃあさ~オカズにしないから…H しよ」
 
そう言って…私のパーソナルスペースへ真っ直ぐ入ってきて両肩に手を置いた。今にもキスをしそうな彼から甘い香りがした。美味しそうな甘い香りが…。
 
「はいはい」

平静を装うことができていたか?わからない。ただ大人のフリして答えるのが精一杯だった。彼の顔が近づく。
 
「考えといて…谷間のホクロは俺だけのものだから」

耳元で囁く甘い言葉にキュンとした。

「じゃね!」

サッと私から離れて手を振る。
 
「気をつけて帰るんだよ~」
 
「はーい」
 
私に背を向け手の平をヒラヒラとさせながら出て行った。

彼はいったい何を想い生きてるんだろう。18なのに…サラッと私を誘惑する。思わず彼に触れてしまいそうになる。
 
つづく
 

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