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甘い果実ep.3
若菜ちゃんにサヨナラを言って保健室を出た。
「蓮!」
面倒な女が声をかけてきた。
「んあ?」
「保健室の先生と何話してたの?」
「お前には関係ない」
「蓮〜」
美月《みつき》は追いかけてきて腕に絡んできた。
「離れろ」
「やだ」
俺から腕を振り解いた。
「何で?何で私じゃダメなの?」
俺は振り向き美月を見つめた。正確には美月の右目の目尻の傷を…。
「帰るぞ」
「れーんー♡」
美月は嬉しそうに走ってきて、やっぱり俺の腕に絡んできた。
ーーーーーーーー
ピコン
スマホの画面にメッセージ受信を知らせる通知が出た。
〈先生…〉
直ぐにメッセージを開く。
『若菜、職場はどんなだ?今日会える?』
私は迷わず返信をうった。
『うん。会えるよ』
先生からの返信
『じゃ〜19時に家に行くよ』
『うん。待ってるね』
「れーんー」廊下から声が聞こえた。保健室のドアの窓から廊下を見ると、早崎くんと木下さんが仲良く腕を組んで歩いてた。
〈なんだ…可愛い彼女がいたんだ〉
自意識過剰だった自分が恥ずかしくなった。
〈バカだな…高校生が私なんかを相手にするはずもないのに。からかわれてるだけなのにドキドキするなんて〉
私は現実の世界に目を向けた。自分がいる現実の世界に…。
19時ピッタリにインターフォンが鳴った。
ガチャ
「久しぶり」
目の前に居るのが私の現実。大学時代の恩師であり…私の…現実。
「ビール買ってきたから飲もう」
「ありがとう」
五十嵐先生と私は小さなソファに座りビールで久しぶりの再会を祝った。
「学校には慣れた?若菜は可愛いから人気者なんじゃないの?」
「学校には慣れたよ。人気者なんかじゃないけど…笑」
「そ?なんか前より可愛くなってる気がする。若い男の子を夢中にさせてるんじゃない?」
先生は私の頬に触れる。
早崎くんの顔が浮かぶ。
「そんなことないよ」
先生の手が鎖骨を撫でる。
「今夜は泊まりだって言ってきたから」
「うん」
それを言ってきた相手は先生の左手の薬指の人。私は許されない世界を生きてる。先生にとって私は甘い果実。その味を知った先生は元の世界に戻れなくなった。私という果実の果肉と果汁を余すことなく含み、その味を堪能し、自分の欲を注ぐ。何度も何度も…。
ダメだとわかっているのに、離れるキッカケが無いと自分に言い訳をして、この現実に甘んじている。
《どんなカタチであっても私に愛をくれる人》
私は愛に飢えている。ただ寂しいのが嫌なだけ。私を食す時に先生が言ってくれる愛してるの囁きに満足し、自ら果肉の中に先生の欲棒をいざなう。
「若菜…愛してる…若菜のここ美味しいよ…もっと見せて…もっと飲ませて…ジュル…ジュル…」
「あ…あ…先生…」
つづく
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