岩下直行

京都大学公共政策大学院教授

岩下直行

京都大学公共政策大学院教授

最近の記事

東京都のコロナ陽性率は本当に高いのか

新型コロナウィルスの感染拡大対策として、日本においてもPCR検査をより充実させるべきだという議論は随分以前からある。また、4月に入って東京都で感染者数の急増がみられ、緊急事態宣言もあって、人々の危機感は高まっている。 そのPCR検査において、検査を受けた中のどれだけの割合が陽性と判定されるかを陽性率という。先日、「東京の陽性率40%は危険領域」との報道が世間を騒がせた。 陽性率が東京で40%というのは、厚生労働省による都道府県別一覧表が元になっている。厚生労働省の資料には

    • 中国のキャッシュレス化の「弊害」は本当か

      現金もカードも使えない中国の「弊害」 (日経新聞、グローバルViews、編集委員 村山宏、 2018/12/24)[有料会員限定] この記事は、中国におけるキャシュレス社会の到来が様々なメリットをもたらす一方、それを享受できる人々とできない人々の分断も生んでいるという内容だ。確かにそういう問題も生じていることだろう。そこを指摘したい記者の気持ちも分かる。 他方、私が2018年7月に杭州のアント・フィナンシャル本社において説明されて妙に納得したのは、アリペイ自身がデジタル・

      • マーシャル諸島:仮想通貨ビジネスに取り組む独立国家

        ベネズエラのペトロに続いて、国連加盟の独立国である「マーシャル諸島」でもブロックチェーン技術に基づく暗号通貨が発行されるという記事です。元々、米国の委任統治領で、独自通貨を持たず、米ドルを法定通貨としていた国ですが、その名もSovereign(略称: SOV)という暗号通貨を発行し、これを法定通貨(ソブリン通貨という表現もあります。ややこしい)にする予定とのこと。別の記事に添付のツイッターの写真を見ると、本年2月に関連法案が議会で可決され、3月から発効していたようです。 h

        • 「仮想通貨 不正流出事件の行方」(視点・論点)

          3月5日に放映されたNHK 視点・論点「仮想通貨 不正流出事件の行方」の原稿をNHKのサイトにアップしていただきました。遅ればせながら、こちらにもリンクを貼っておきます。その後、NEMは完全にロンダリングされてしまい、大金が犯罪者の側に移転されてしまった、残念な事件となりました。この事件を機に、仮想通貨取引所のセキュリティを向上させる必要性が、強く認識されるようになりました。 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/291492.htm

        東京都のコロナ陽性率は本当に高いのか

          国家は仮想通貨をコントロールできるか

          日経 X TECH ■国家は仮想通貨をコントロールできるか ちょっと前になりますが、日経FinTech年鑑向けに書いた原稿を、日経XTECHの記事に転載していただきました。いつもの相場動向解説をしただけですが、割と大仰なタイトルになってたんですね。会員サイトで、前半しか読めませんが、リンクを貼っておきます。 http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00221/032200001/

          国家は仮想通貨をコントロールできるか

          京都フィンテック・コンファレンスの投影スライドを公開しました

          2月7日に開催された「京都フィンテック・コンファレンス」の写真と講演資料(PDF 3本)を、京都大学公共政策大学院のサイトに掲載しました。御高覧いただければ幸甚です。 ■開会挨拶  京都銀行専務取締役・阿南雅哉 ■基調講演「FinTechと金融の将来」  京都大学公共政策大学院教授・岩下直行 ■講演「FinTechの振興にかかる金融庁の諸施策」  金融庁総務企画局 信用制度参事官・井上俊剛 ■講演「FinTechで始める投資運用」  株式会社お金のデザイン代表取締役C

          京都フィンテック・コンファレンスの投影スライドを公開しました

          京都フィンテックコンファレンスについて記事が掲載されました

          © unknown 京都で初めて開催されたフィンテックに関するコンファレンスについて、日経新聞に短信を掲載していただきました。会場の模様、配布資料(の一部)等は、後日、京都大学のサイトに掲載を予定しています。ご参加、ご協力をいただいた皆様、どうもありがとうございました。 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26660530X00C18A2LKB000/

          京都フィンテックコンファレンスについて記事が掲載されました

          NEM流出事件について、日経新聞に意見を掲載していただきました

          歴史的経緯もあって、仮想通貨は利用者保護の手段が講じられていません。こうした状況を放置することは適当ではなく、適切な対策が取られるべきだと私は考えています。とはいえ、昨年4月に施行した法律を修正するというのもあまり聞かない話であり、世の中の変化の速さに、制度や法律の変化のスピードが追い付いていない感じがします。もちろん、仮想通貨をどこまで制度として認めて仕組みを整備するかという論点もありますが、現に被害者が出ている以上、何らかの対策は必要でしょう。業界の自主規制から法改正まで

          NEM流出事件について、日経新聞に意見を掲載していただきました

          財務総研での講演「仮想通貨の動向」配布資料

          1月26日に財務省・財務総合政策研究所のランチミーティングでお話しさせていただいた「仮想通貨の動向」の配布資料が、同研究所から公開されました。 http://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/lmeeting.htm http://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/lmeeting.htm

          財務総研での講演「仮想通貨の動向」配布資料

          コインチェック事件の思わぬ余波

          別メディアの話で恐縮だが、私は、NewsPicksのプロ・ピッカーというのを半年ほど務めている。プロといっても、SNSに書き込みをして謝礼をもらうのは立場上よろしくないと思ったので、ボランティアでお引き受けすることにした。だから「セミプロ・ピッカー」だ。 このNewsPicksで最近、古い記事への「いいね」が続いた。その記事にコメントしたのは1月5日だから、もう1か月も前のことだ。「お給料の一部は仮想通貨で。それが「日常風景」になる」という記事を見かけた。また、「仮想通貨が

          コインチェック事件の思わぬ余波

          インドが仮想通貨を禁止する予定はない

          最近、韓国の法務大臣が「ビットコイン取引はギャンブル化しているため、取引所を閉鎖する」と発言したため、「中国に続いて韓国もビットコインを禁止するのか」と受け止められ、韓国での仮想通貨相場が下落する騒ぎがあった。確かに、韓国における仮想通貨ブームは過熱しているようで、取引に使われる法定通貨も、JPY、USDに続いてKRWがランクインする日が増えている。しかし、韓国政府は関係省庁を集めて協議した結果、取引所を廃止するのではなく、取引に実名制を導入してマネロンを防止するという、日本

          インドが仮想通貨を禁止する予定はない

          2月2日の仮想通貨市場に何が起こったか

          2月2日、日本のメディアは、コインチェック社への金融庁の立ち入り検査が始まったことをトップラインで報じていた。コインチェック社を巡っては、メディア報道が過熱し、SNS上の口コミ情報も入り乱れ、大騒ぎとなっていた。ここに加えて、香港のBitfinex社と関係の深いTether社が発行するドルペッグ仮想通貨USDTを巡る疑惑報道が流れ、インドの財務大臣のビットコインに関するコメントを巡っても、様々な憶測が乱れ飛んだ。 こうした中で、仮想通貨市場は、1月17日に続く、今年2度目の

          2月2日の仮想通貨市場に何が起こったか

          売れっ子の社外取締役は何社を掛け持ちしているか

          いい記事で大事な課題なのだが、タイトルがミスリーディング。「掛け持ち平均4社」という統計が出ているのかと驚いた。 「日本取締役協会は、社外取締役1人当たりの掛け持ちは「4社程度」との目安を公表しているが、酒井氏は「経営状況を把握し、的確な判断を下すには3社が限界」とみる。」 ということで、4社というのは日本取締役協会の「目安」のことのようだ。 上記引用にもある通り、現在期待されている社外取締役の責務をきちんと果たすのであれば、掛け持ちは3社でも多いだろう。かつては、

          売れっ子の社外取締役は何社を掛け持ちしているか

          中国におけるプライバシー意識の高まりとITビジネス

          とても参考になる、考えさせられる記事だ。現在の中国のFinTechやIT産業の発展は素晴らしいが、その背景には個人情報のビジネス利用があり、それは個人の権利意識がさほど高くないことで可能になっている面がある。しかし、中国の人々が豊かになるにつれて、先進国並みのプライバシー意識が生まれるのではないか、そうなると、個人情報のビジネス利用はどうなるのだろうか。 記事に書かれている現状は、私も時々耳にする。アリペイやテンセントのアプリを入れると、「私は私の個人情報を貴社のアフィリエ

          中国におけるプライバシー意識の高まりとITビジネス

          「見逃してしまうかも」恐怖に駆られるICO投資家の心理

          E&Y社によるICO(Initial Coin Offering)の現状に関するレポートを紹介したい。ICOはIPO(Initial Public Offering; 新規株式公開)をもじって付けられた名称で、株式の代わりに新規の仮想通貨を発行する行為をいう。このレポートは、372例のICOのデータを淡々と分析したものだが、ICOを「Valuations based on FOMO」と描写している部分が特に面白い。 FOMOとは、“Fear of missing out”の

          「見逃してしまうかも」恐怖に駆られるICO投資家の心理

          ベネズエラの奇妙な国営暗号通貨発行計画

          ベネズエラ政府発行の暗号通貨(?) Petroのアップデートが出たようだ。政府の諮問委員会が、Petroを60%割引で先行販売するように提言したとのこと。売出しは2月15日に始まるという。 記事の示唆するところによれば、Petroはイーサリアム基盤の上で構築されたERC 20トークンのようであり、既に1億単位分が発行済みとなっているようだ。1Petroは1バーレルのベネズエラ産原油と同じ価値(約60ドル)を持つとされているから、(額面価値で)60億ドル分が発行されていること

          ベネズエラの奇妙な国営暗号通貨発行計画