中国におけるプライバシー意識の高まりとITビジネス

とても参考になる、考えさせられる記事だ。現在の中国のFinTechやIT産業の発展は素晴らしいが、その背景には個人情報のビジネス利用があり、それは個人の権利意識がさほど高くないことで可能になっている面がある。しかし、中国の人々が豊かになるにつれて、先進国並みのプライバシー意識が生まれるのではないか、そうなると、個人情報のビジネス利用はどうなるのだろうか。

記事に書かれている現状は、私も時々耳にする。アリペイやテンセントのアプリを入れると、「私は私の個人情報を貴社のアフィリエイトに提供することに合意します」といった、日米欧では考えられないような条項を許諾しなければならない、といった話である。多くの中国人が、「どうせ中国では共産党がすべての情報を握っているので、プライバシー保護を訴えても仕方ない」と考えているとも聞く。しかし、私が個人的に知っている中国人と話した限りでは、必ずしも皆がそう考えている訳でもないようだ。

日米欧でも、個人情報とITビジネスとの関係はとても難しい。プライバシー保護を強調しすぎると、ITビジネスの発展が難しくなるという見解もよく聞く。GAFAのような国際企業が個人情報を独占し、(先進国基準のプライバシー保護に配慮しつつも)自らのビジネスに活用していることを不安に感じている個人も多いだろう。他方で、個人情報の漏洩や不正な利用が明るみに出ると、激しくバッシングされるから、結果としてプライバシーが守られているという理解もできる。

他人に自分の生活をのぞき見されたくないという意識は、ある程度豊かになり、知識や教養を身に着けた人が増えるほど、強まるものらしい。プライバシーの議論が先進国ほど盛んであることは、その傍証と言えるだろう。

政治体制が違うとはいえ、急速に豊かになった中国で、プライバシーの権利意識が強まることは極めて自然なことだ。先の読める中国企業であれば、そういう意識が強まることを見込んで、自らのサービスを差別化しようとするのではないか。それが今後の中国のITビジネスにどう影響するのか、とても気になっている。

https://wisdom.nec.com/ja/business/2018012301/

https://wisdom.nec.com/ja/business/2018012301/