コインチェック事件の思わぬ余波

別メディアの話で恐縮だが、私は、NewsPicksのプロ・ピッカーというのを半年ほど務めている。プロといっても、SNSに書き込みをして謝礼をもらうのは立場上よろしくないと思ったので、ボランティアでお引き受けすることにした。だから「セミプロ・ピッカー」だ。

このNewsPicksで最近、古い記事への「いいね」が続いた。その記事にコメントしたのは1月5日だから、もう1か月も前のことだ。「お給料の一部は仮想通貨で。それが「日常風景」になる」という記事を見かけた。また、「仮想通貨が決済に使われるようになる」というポジショントークが出たか、とウンザリして、多少力を込めて、次のようにコメントした。

https://newspicks.com/news/2729635

「こういう話題は何度も出てくるのだが、「ビットコインが通貨として普及している」とか「仮想通貨は未来のお金だ」というのは、そう思わせたい人々が演出した虚構である。家電量販店や旅行会社で使える、というのも、話題性を狙った企業のPR活動であり、実際に使用された件数は極めて少ない。しかも、あたかも電子マネーやスマホ決済のように、一瞬で決済が完了してしまう映像が流れるのだが、ビットコインは決済完了までに10分-20分かかるというのが技術的な説明だったはずだ。これは、決済サービスを提供している会社がリスクを引き受ける形で、採掘業者による承認を待たずに決済完了としてしまっているからだが、それは結局、顧客の債務が決済事業者の債務に振り替わっただけで、決済が完了した訳ではないのだ。」

「現在の技術的な仕組みを考えても、もちろん相場変動が激しいことを考えても、仮想通貨は決済に使うにはあまりに未完成な実験室レベルのものにすぎない。ビットコインの相場がどうなるかは預言できないが、ビットコインが決済に広く使われることは今後もありえない。これは自信をもって断言できる。」

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当時、このコメントはあまり多くの「いいね」を集めなかった。しかし、ここにきて急に、このコメントを閲覧する人が増えているのだ。不思議な現象だと思ったが、原因は元の記事にあった。

私がコメントを書いた時にはまったく気にしていなかったが、この記事でインタビューされているのは、大塚雄介氏。連日報道されている、コインチェック社のCOOである。どうりで、事件発覚直後の記者会見で、「どこかで聞いた名前だなあ」と思ったはずだ。

コインチェック事件を受けて仮想通貨の市況は大変なこととなった。仮想通貨を全く持っていない私には関係のないこと、とはならず、私もいろいろな形で巻き込まれることになるのだが、事件の3週間前に、こんな形で大塚氏と遭遇していたというのは、ちょっとした驚きであった。