ドミニカ移住 #8:モデストとMLBアカデミー
モデストとの出会い
___________2018.5.30
この日、イポドロモで新たにモデストという中年男性と知り合った。私がひとりで少年たちの野球練習を見ているときにたまたま傍に座っていた男性、それがモデストだった。彼はラフなTシャツとパンツスタイルで、おっちゃんと表現したくなるような装いをしていた。
話を聞けば、彼もダンと同じくブスコンとして複数の選手をもっていて、その選手たちを練習させるために週に何度か、ここへやってくるらしい。前述したようにブスコンの選手育成方針は人によってさまざまだが、彼の場合は選手を自分自身の家に住ませて日々生活を共にしており、家族のような存在なのだという。
私が野球が好きだということを伝えると、モデストが突然「なら、俺が働いているアカデミーに連れて行ってやる」と言いだした。
ドミニカにはMLB球団の下部組織アカデミー*があるが、彼が働いているのはその『MLBアカデミーとの契約を目指す選手の育成施設』(現地ではどちらもアカデミアと呼ばれる)なのだという。個人でブスコンをしつつそこのアカデミーでも働いているらしい。私は、知り合ってばかりの(ドミニカ人の)おっちゃんにホイホイついていっていいものか、さすがに一瞬迷ったが、アカデミーに行きたいという抑えきれない気持ちと、彼からなんとなく漂う「悪い人ではない感」を信じて、ついていくことにした。
モデストが働くアカデミーにいく!
___________2018.5.31
翌日の朝9:30にイポドロモでモデストと待ち合わせる。しばらくしてやってきた彼の車に乗り込み、いざ出発。ドミニカに着いて早々知り合いが増えていく喜びと、いろんなところに行けるワクワクが止まらない!
陽気な音楽をBGMに、草木が茂る車道をどんどんと進んでいく。あたりに人気はほとんどなく、すでに大通りからはかなり離れているようだ。お店も人も見当たらない道を進み続けると、彼が働くアカデミーに着いた。
敷地内を見渡すと、10代の若いアマチュア選手が住み込んで練習する環境としては申し分ないほどの綺麗な建物が並んでいる。私が調査地としていつも通っているイポドロモとの間に、大きな練習環境の違いを感じる(イポドロモの場合はただの練習場なので住環境や施設はなく、選手たちは毎日自宅からバスに乗って練習へやってくる)。
車から降りると、モデストは施設の中を案内してくれた。トレーニング器具が置かれたジムのようなスペースもある。感心している私を横目に、モデストが突然、「アスカ、キャッチボールしたいか?」と言い出した。そして、ちょうど横で体を鍛えていた大柄の少年に「おい、一緒にキャッチボールしてあげな」と声をかけた。あまりの無茶ぶりにも関わらず、少年は嫌な顔ひとつせずにグローブをとりだし、綺麗に整備されたグラウンドで見ず知らずのアジア人の私とキャッチボールをしてくれた。少年は周りにいた選手に「動画、動画」ととるように促してくれたが、彼らに見守られていると思うと私はとても恥ずかしかった…。
↓キャッチボールの様子
MLB球団ワシントン・ナショナルズのアカデミーに行く!!
貴重な体験ができたと喜んでいると、モデストが「ワシントンのアカデミーも連れて行ったろか?」と言い出した。なんと、今度は正真正銘、MLBのアカデミーに連れて行ってくれるというのだ(そんなん聞いてない!!)。どうして彼にそんなことができるのか、どんな権利があってそんなことを言っているのかも分からず、頭が追い付かなかったが、「ここまで来たら行くしかない」と、とにかくもう一度モデストの車へ乗り込んだ。
先ほどと同じく人気のない道を進み続けると、右の側道に大きな門が現れた。「これがMLB球団ワシントン・ナショナルズのアカデミー!!ドミニカに来る前、いろんな本で何度も読んだ、ドミニカ野球界を語るうえで欠かせないMLBのアカデミーか!!!」ともう興奮が止まらない。
当たり前だが、さっきまでいたアマチュアのアカデミーとは規模や施設の綺麗さが全く違う。私なんかが入っていいのか不安になるが、モデストは何ともないような様子でアカデミーの門を潜って中に入っていく。私もそんな彼に遅れをとらぬよう、広い敷地や綺麗な施設に見惚れながら、モデストの後ろに続いた。
敷地内には、いくつかの棟が立ち並んでいる。選手たちの寝床や食堂が入っているのだろう。それはまるで私立学校または病院かのように綺麗な外観をしている。建物が並んだエリアの奥に、いくつかの野球場が見える。グラウンドでは紅白戦が行われているようだ。話を聞くと、どうやらモデストの選手がこのワシントン・ナショナルズのアカデミーと契約を結んでいるらしい。そのため、ブスコン(代理人)である彼は、関係者としてアカデミーに出入りすることができるのだそうだ。
モデストはここで働く友人と雑談をしながら、私に「野球が好きなんだろ」と言い、私の気が済むまで試合を見させてくれた。そして「サマーリーグが始まったら、次は俺の選手が投げる日に試合を見に来よう」と言われ、6月にもう一度ここへ来る約束をした。
私は知らないアカデミー職員のおっちゃんがいきなりプレゼントしてくれたマンゴーをかじりながら、夢見心地で気が済むまで試合を眺めた。
___※2018年6月初旬にスマホを紛失したため、5月中の写真が消えてしまいました。アカデミー詳細の写真が少なく申し訳ないです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?