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タイトル集

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#エッセイ

ここに居るわたしは、世界で1番かっこ悪いわたしだ。

わたしは、「書き手であるわたし」と「書き手でないわたし」に別の人格が宿っている、そしてそうであって欲しいと常々願っている。 その方が、自分の文章を客観的に読むことができるような気がするからだ。 少し前の話になるが、note以外の媒体での名義の名前を変えた。外部のwebサイトへの投稿を少しずつ増やしている。それに伴って、noteに顔を出す頻度も少し落ちている、気がする。 note以外でも書き出すようになって思ったことは、真っさらなところに書き出すことがいかに難しいかという

ありがとうとう

朝、いつもの交差点。いつもの横断歩道。 青信号が点滅し始めたので、僕は渡るのをあきらめた。 すると、ちょうど正面から、白杖の女性と、彼女に連れ添う男性とが、少し駆け足気味に横断歩道を渡ってきた。 横断歩道を渡り終えると、「この方向にまっすぐ行ったところですよ。」と男性が女性に優しく説明をした。 「ありがとうございます。」と、女性が応えた。 てっきり夫婦だと思っていた。他人同士だったんだ。なんともやわらかい雰囲気に包まれていたから、全くの勘違いをした。単に、道を教えて

10年

2010年。今から10年前、私は2度目の離婚をした。 あれから10年が経った。 今日、仕事から帰ってポストを開けたら不動産屋からマンションの更新手続きの書類が入っていた。 「あ。5回目の更新だ。あれから10年経ったんだ。」 当時、娘は18才だった。高校3年生も終わりに近づいていた頃。 娘はモラハラ夫(娘にとっては義父)との離婚を切望していた。2度目の離婚は娘に背中を押されたことが大きい。 とても頑張り屋さんで、手芸とトランペットが趣味の娘は、高校を卒業したら将来の

【エッセイ】三点リーダーの数を指摘してもらうために、二次創作を書いたんじゃねぇんだ…!

「尊い」「いっぱいちゅき」「すこすこ」「沼に落ちたわ」 これは上記の言葉がまだ二次元を愛するヲタク達に浸透していない頃。 もう少しだけ具体的に言うと、今から10年以上前のこと。 当時は、「カクヨム」「小説家になろう」「note」「Twitter」などのネット小説に特化サイトやSNSはなく、携帯小説が流行していた。しかし、携帯小説サイトに読みたいものはなかった。まったく興味を持たなかった。 なぜなら、当時の私は二次創作に恋焦がれていたのだから。 漫画やアニメなどの作品を

人生の半分くらい寝ていた

noteを書いていて、自分の限界をハッキリと感じることがある。 それは、人の書いた文章を読んで、「人生みっちみちに濃く何かをやってきた人の書くものにはかなわない」という自分の至らなさだ。 昨日から立て続けにそういう方の記事を見つけて読みふけってしまい、ふと我に返った時、自分の書くものの底の浅さになんかどうでもいい気分になってしまうのだ。 私はなんだかんだ人生の半分くらい寝ていたんじゃないかと思う。 いや、誰でも一日の三分の一は睡眠時間だから、トータルで人生の半分くらいはみん

138 夕方のジャムトースト

休日に夢中で本を読んでいると、なんとなく活字が見えにくくなったな、と思い顔をあげたら夕方でした。秋の夕方はほんの一瞬。あ、と思ったら、すぐに夜になっています。 窓から見える夕方の空はとてもきれいで、顔をあげてよかった、と思いました。 早足で過ぎる雲。オレンジ色の空気。 今日一日にさよならを告げる太陽の光は、心底あたたかくて贈りもののようです。 そんな風に夕方に見惚れていると、ほら、もう夜です。 この夕暮れを目にとどめたい、と思いました。 冷蔵庫を開けると、ジャムがふたつ

割れた貝殻で指輪をつくったあなたへ

あなたがいなくなってからの5年間は長くて短かったように思います。 わたしの恋人が亡くなったのは10月1日でした。警察官でした。夜勤明けで疲れていたのでしょう。お風呂で寝てしまい、そのまま沈んで帰らぬ人となりました。わたしはお葬式には参列せず、お通夜の末席で静かに冥福を祈るだけにとどめました。あの人の傍に行くことはどうしてもできなかったのです。 いま思えば、わたしたちは恋人と呼ぶにはすこし違う関係だったのかもしれません。一緒に過ごすことが恋人なのであれば、きっとわたしたちは

¥500

君と話すと、どん底ではないことがわかるんだ。

今日カフェで、信頼のおける友人とパスタを食べていた時の話だ。 自分だって考えすぎで、どうしたいのかすらわからず、うまく言語化できるかわからぬ悩みの種だったのだが、とりあえず目の前にいる友人に打ち明けてみることにした。 「あのさ、このままじゃ今の彼と結婚できない気がするんだよね」 「なんで?」 理由は「誰かと一緒になることの漠然とした不安感」だが口に出してみることにする。私は早口でまくし立てた。 「なんか、まだ社会に対して、地に足をつけてない気がするんだよね、必死にな

愚痴について語らせて。

いやぁ、わたしも好きだよ。愚痴るの。 だって、いろんな気持ちに理屈なしになるのが人間だし、異なる考え方も見方を変えれば全部あってるし、色んな人がいるだけで考えも違うし、そんな中で衝突は絶対生まれるし。愚痴を持たないなんて無理だし、愚痴を持つのは自由だよ。なんか理由はないけど気に食わないやつはいるじゃない。自分が悪いのに怒られてなんだあいつってなることもあるじゃない。あとは理不尽なこともいろいろおこるじゃない。 しかもさ、その愚痴を演出家みたいにいい感じに台本にして、その台本

書けなかった、かつての僕へ

 昔ある好きな作家の小説を読んでいると、〈小説家志望や小説を書きたい、という人間は驚くほど多いけれど、実際に書いている人間は驚くほどすくない〉と大雑把に言うとこんな感じの内容の文章が出てきて、僕はその言葉にどきりとした覚えがある。  何を隠そう、それを読んだ当時の僕は、小説家になりたいと口にしながらも、ほとんど大して何も書かない生活を送っていたからだ。わははっ。  一度、小説家になりたい、と小説を書き始めて、その内に何も書かなくなって「小説を書きたい」「小説家になりたい」

手帳は着膨れるほど良い

毎年この時期は、季節の遠心力に振り落とされそうになる。 夏服でしぶとく凌いでいたが、気がつけば10月を半分も過ぎていた。ズボラな筆者も覚悟を決めて衣替えを始めなくてはならない。 よし、と一念発起して衣装ケースを開けると、昨年ネット通販で購入したものの、素材が分厚くて着るのを断念した秋服が出てきた。着られないわけではない。ただ、着ると確実に5kgは太って見えるのだ。 お世辞にも痩せているとは言えない筆者にとって着膨れは大敵である。まさか秋服でここまで着膨れるとは夢にも思わ

つくづく、この世には善人しかいない

「本田さんは接客というか、不特定多数の人とコミュニケーションを取る仕事が向いてないんじゃないかと思いますねえ」 担当医の話に「ほぁ」と間の抜けた声が出た。なにしろ5年間も接客業に従事してきたのだから。コンプレックスである人見知りを改善しようと選んだ仕事だったのだが、どうやら効果はなかったらしい。 * 以前勤めていたコールセンターで、筆者はメール接客を担当していた。 1日200通以上届くメールに目を通し、問い合わせに沿った返信を作成する。顧客から届くメールの多くは親切で

私あかん人やってん、今もやけどな

買い物へ行くときに必ず渡る橋がある。 その橋は大きな川に架かっている。川幅は広いがとても浅い。そしてたまにヌートリアが我が物顔で泳いでいる。サギもいる。誰が捨てたのか、得体の知れないゴミが流れていることもある。そんな川だ。 橋を渡るとき、私は必ず欄干に手をかけて川を見下ろす。何か”落し物”がないかちょっとだけ探すのだ。この日はサナダムシみたいなスズランテープの束がくねくねと身をよじっていた。 以前は、死ぬために川底を覗いていた。 さあ行くぞ、それ行け、今がチャンスだ。

ひみつ道具なしで社会に適合したい

この日は快晴で、ドラえもんみたいな色の空だった。 先日、2人の友人から石切参道商店街へ占いに行こうと誘いがあり、二つ返事でOKした。久しぶりに会う友人なので楽しみだった。 待ちに待った当日は、待ち合わせ場所の新石切駅まで近鉄電車で向かう。人生で2回しか利用したことがない近鉄電車で、だ。切符1枚買うのにも苦労する近鉄電車だ。 どれくらいの運賃が必要なのか。大して読めもしない路線図とGoogleマップを交互に見て料金を確かめる。券売機の前でウンウン悩んでいる私を咎めるかのよ