人生が生きものだったら。|エッセー
人生が生きものだったらどんなふうだろう?と考える。
まちがいなく顔はついていて、おもちのような体からふにゃっとした手足がついているかもしれない。
なんて考えたけど、私の結論はこう。まん丸くて、すこし圧を与えると形をくずすほどもろいもの。まるでこれから咲こうとする、お花の蕾。
ふんわりしていて、中には少しキラキラの粉がはいっていて、外側には“気持ち”という名の細い繊維が何重にも織り重なり深みを出している。風がふくと髪の毛のように、その重なりの一部は細々とゆれる。ゆれた繊維は、野原に輝く夏の夕暮れを映すような黄金色にきらめく。少しきらきら、ふわふわ、ゆらゆらと。やわらかく人肌くらいにあたたかく生きていて、くるまっているまん丸いやつ。そんなものが人生に思える。
これまで生きてきた何十年はただの時間や物で表すことができるものではなく、人生は「感じたもの」でできているみたいで。経験や記憶でもなく、なにかをしたときの感情が人生に深みを出す。そんなふうに思える。だけどそうなにかを大切にしすぎてしまうとちょっと怖い気もする。大切なものを失うことを恐れたり、新しい一歩を踏み出せないんじゃないかという気もする。でもまぁその時はその時で、また考えが変わるんだろうな。
ただ今は、そうであるならば、この人生を両手でそっと包み込んでみたい。そうして、野球ボールのように、8月の青すぎて広すぎる空に、思い切り投げてしまいたい。人生に形があるのなら。
エッセー:人生が生きものだったら。
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