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グッド・ホログラム・モーニング/エッセー

 

 ばたばたと通り過ぎる毎朝のなかに、どこかすこしでも、時間が止まったような一瞬がほしい。そのときには、まだぼやけた光のなかで、朝独特の静けさと、これまで生きてきた年月を思い出すことができるから。

 リビングにあるいつも見ない窓から、あたらしい角度で入るオレンジ色の光が目にはいり、きらきらと窓にたれる水滴を照らすのが朝陽なのだと気づく。静けさが、まだ眠い目の地球がざわざわとして、さぁ今日がくるぞくるぞ、とそわそわしているような空気の微動を感じさせる。なにに急ぐこともなく、じゃまもされず、今日はなんにちか、と考えることはない。これまでの日々を少しだけ思い起こしてここまできたか、なんて今の自分に思いをはせる。
 そこにはふだん無口な生き物たちがこぞって秘密を打ち明けるみたいに、なんだか新しいイメージの可能性がある。これからなんでもできるような、未来の自分がその愚かさに後悔するような、どんなものでも見出せる瞬間。いつものあわただしい朝には、外の空気を横目で味わうだけだけど、その朝には瞬間のシンプルさを芯から味わうのだ。

 朝陽に見とれて目はぱちぱちしながらも、気分はすっきりとしているだろう。心は湖の静けさとともに。すこし冷たい空気はぴりりと澄んで、それは唇にふれて、胸の鼓動を感じさせる。きっと気づくと口角はほんのすこし上がっている。さて、この瞬間に終わりをつげるのは一体なんだろうか?なんであれ、ふうと息を吐きだして、ぐうと胸をはってみせる。そして肺をこれでもか、とへっこませながら吸い込むのは、どんな1日の空気だろうか。



エッセー:グッド・ホログラム・モーニング
isshi@エッセー


●前回のエッセー


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