エッセイ | 影響力をあなどるな
冷蔵庫を開けると、作り置きの水出しアイスコーヒーがなくなっていることに気付いた。からになったボトルを自分で洗っていたにもかかわらず、寝る時になると忘れている。
「寝る前に気付けてよかった。気付いていなかったらあしたはアイスコーヒーが飲めないところだった」ほっと胸をなでおろす。別にアイスコーヒーが飲めなくなるわけではないが、水出しアイスコーヒーは手間がかからないためついつい作ってしまう。
最近はカルディで購入した『グアテマラ』をアイスコーヒーに使用している。酸味のあるライトなコーヒーが好きな私にとってはお気に入りのコーヒー豆だ。
コーヒー豆を計量していく。1ボトルのアイスコーヒーを作るのに55グラムの豆を使用するのだが、残りのコーヒー豆の量を見ると不安になる。
「なくなりそうだな……。いや、もしかしたら足りるかもしれない」豆の残量が微妙なため、コーヒーメジャーから豆が計量器に載るたびに「足りそう!」と「足りなそう……」が繰り返される。
最終的に計量器は50.1グラムを示して止まった。あと4.9グラム足りなかった。「頑張ったんだけどね、ダメだったか」からになった容器を手に取り眺める。とりあえず容器は洗っておこう。
さて、残り4.9グラムをどうしようか。コーヒー豆の量を50グラムにしてアイスコーヒーを作ってもいいけれど、水の量を減らすのか、薄いコーヒーを作るかが選べないでいた。可能であればいつもの量と味でしっかりアイスコーヒーを作りたい。
私は最終手段として、いつもホットコーヒーをいれる時に使用しているコーヒー豆に手を出した。丸山珈琲で購入した『カトゥアイ アナエロビック』を4.9グラムだけ使おう。
このコーヒー豆は以前購入しており、ゆっくり飲んでいた豆だ。そのため今は取扱時期を過ぎており購入できない。そんな状況もありとても大事に飲んできていた。
袋を開けると焙煎されたコーヒー豆のにおいよりも先にベリー系の香りが鼻を抜ける。その瞬間、この豆をアイスコーヒーに使うのはもったいないと思い手が止まる。金額も倍以上違うのだ、貧乏性の私にとってこの決断は勇気がいる。
「4.9グラムだけだ。勉強のつもりで混ぜてみよう」私はコーヒーメジャーで豆をすくい、計量器の上に盛られたグアテマラと合わせた。
翌朝、目を覚ました私はボトルに漬けていたコーヒー粉の入った容器を取り出す。しっかりアイスコーヒーができあがっている。
コップにアイスコーヒーを注いでひと口飲む。驚いた。4.9グラムしか使っていないカトゥアイの爽やかな風味がしっかりと感じられる。グアテマラだけで作っていた普段のアイスコーヒーよりも数段おいしくなっている。
少し混ぜるだけでこんなに風味を変えてしまうとは考えてもいなかった。むしろカトゥアイの風味なんて出てこないと思っていた。ここまで影響力があるとは……。
これからは積極的に混ぜても良いかもしれないと思えた。
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