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おいたま食堂多摩川支店です

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ご近所や祖父母、両親。見聞きした昭和的暮らしとお料理のレシピエッセイ。山形県置賜(おいたま)地方の伝統を、器用な母から不器用な娘へ。受け継がれるはずが失敗したり忘れたり。日々のご…
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#東北

【レシピ付】まめで元気に健康に子孫繁栄。数の子と合わせて金運もアップ!?



(この記事は東北を深掘りする日刊webマガジン『まいにち・みちこ』に2018年12月28日に掲載されたものです)

子供のころ、「かど」という焼き魚が好きだった。

我が家は織物職人の工房で三世帯同居で、幼い頃からおともだちの家より頻繁に、お年寄りメニューが食卓に上った。その結果兄と私は、ハンバーグやスパゲティーより焼き魚やお刺身が好きな子供として育った。
なかでも大きなニシンを一匹のまま姿焼

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【レシピ付】日々緑濃く香り濃く。初夏のヨモギで草団子づくり

【レシピ付】日々緑濃く香り濃く。初夏のヨモギで草団子づくり

お灸をすえられた経験のある人は、どのくらいいるだろうか。

私の小さいころ悪戯坊主たちは文字通り、罰として『お灸をすえられ』ていた。近所の悪童達は随分わんぱくで、女の子たちに悪態をついたり、廃屋同然の空き家に侵入して中を勝手に『秘密基地』にして家財を壊して改造したり、他所に家の木に登って幹を折ったり。

そんな悪戯三昧の男の子たちは親に捕まり、地区の公民館の一室でお灸を据えられた。年少組といつも悪

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【レシピ付】歴史は江戸から。シャキシャキ無限おかひじき

【レシピ付】歴史は江戸から。シャキシャキ無限おかひじき

春の山菜シーズンがひと段落し、夏野菜がつるや葉を元気に伸ばしている間に、ぐんぐん伸びて出回って来るのがおかひじきだ。
畑のビニールハウスで栽培され、そのスギナのような切れ込みの深い繊細な葉を伸ばした姿と、アクも苦みもなく爽やかな歯ごたえは、初夏の立派な緑黄色野菜だ。
山形県での栽培の歴史は古く、江戸時代初期にはもう置賜地方で栽培されていたという。
全国でもトップレベルの栽培歴を誇る。
最上川を利用

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【レシピ付】初夏をとじこめて 山形イチゴとミルクの寒天

【レシピ付】初夏をとじこめて 山形イチゴとミルクの寒天

 小学校への通学路は他人の家の裏や細道、畑の中を歩いていく道だった。低学年の子たち数人が遊びながらあるいていくと、目に入るのが畑の端に植えられたイチゴの真赤に熟れた実だ。

 おぼこらたちは少し考え、喉の渇きと真っ赤なイチゴの誘惑に我慢できず、もいで食べてしまう。頭の黒い鼠が何匹も畑を荒らすのだから、当然見つかって怒鳴られるし小学校に文句が来た。

 でも子供たちも知った

『人の家の畑のものは、

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【レシピ付】織物職人の団欒。春の味は大人の味? ふきのとう味噌

【レシピ付】織物職人の団欒。春の味は大人の味? ふきのとう味噌

実家のある土地は、元々地元の大きな神社の森が切れたあたりの、何もない畑地だったらしい。

そこに米沢、山形と回り古い手法の織物を学んだ父が家を建て、米沢から両親を呼び寄せたのだという。
そのころ米沢では、効率の良い機械織りが主流になっていたから、昔のものを復興させたかった父はあえて知り合いのいない当地を選んだらしい。昭和30年代の話。

家には、昔ながらの織機を何台も置いた織物工房が隣接しており、

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【レシピ付】発酵パワーと野菜たくさんで快調・納豆汁

【レシピ付】発酵パワーと野菜たくさんで快調・納豆汁



山形県は広い。

ひとつの県と言っても地域的には庄内、最上、村山、置賜と別れており、四季の様相もまた違う。

冬は海からの突風と目の前数センチ先も見えなくなるほどの地吹雪が起こる、鶴岡、温海、酒田などの庄内地方の雪害も有名だが、他の地域でも頭の痛い問題だ。
わずかな時間に景色を変えてしまうドカ雪は、生活に直結する大問題で、鉄道も道路も、毎年の事と備えはしているとはいえ、寸断されることもままある

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【レシピ付】ほろにが菜の花を子供にも美味しく・落とし卵焼き

【レシピ付】ほろにが菜の花を子供にも美味しく・落とし卵焼き

(この文章は東北を深掘りするwebマガジン『まいにち・みちこ』様に4月11日掲載されたものです。よって季節感ずれております)

急速に春が来た。

東京の狂乱ともいえる野菜の高騰もひと段落、ようやく葉物野菜の値段も下がってきた。
地物の春野菜が一斉に出荷され、八百屋の棚をにぎわせている。根元に土の着いた、収穫した方々のお顔が見えるようなたくましい野菜たち。
春が来たことを喜びを持って実感させてくれ

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【レシピ付】意外と簡単!ご飯からつくるほっこり甘酒/こたつにひそんでいたもの

【レシピ付】意外と簡単!ご飯からつくるほっこり甘酒/こたつにひそんでいたもの



「おこた」の中には思いがけないものが潜んでいた。

こたつについての一番古い思い出は、つま先の火傷だ。
幼少の頃、家は炭を入れる掘りごたつで、火を起こした練炭を入れ、網を張って、中に入れた足が炭に触れないようにガードされていたように思う。
だけど幼児の小さな足はガードの網の目をくぐり、靴下のつま先を焦がし、あちちっと泣いた。
やがてこたつは電気になり、足は安全になったし、火事の心配も減り、スイ

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【レシピ付】山形県民のソウルフード玉こんで年中ホカホカ♪

【レシピ付】山形県民のソウルフード玉こんで年中ホカホカ♪

玉こんといえば山形県民のソウルフード。

いや待て、芋煮というキングを差し置いてその称号はなかろうという向きもあるだろうが、どっこい芋煮は季節ものである。
秋の運動会シーズン、田んぼの刈り入れシーズン、そして駆け足でやって来る長い冬の前の晴れた秋の日の河原で囲む大鍋と、どうしても季節と分かちがたいものがある。
だが玉こんは万能だ。季節を問わない。
冬の寒い日。襟元から背中、手先足先まで痺れるよう

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【レシピ付】ストーブスープと鶏の鍋

【レシピ付】ストーブスープと鶏の鍋

子供の頃はエアコンなどなかったので、家でも家の棟続きの織物工場でも、主力は大きな石油ストーブだった。
東京の大学に進み山形の実家を後にするまでそうだった。大きな縦型の石油ストーブとこたつ。そのストーブやこたつは寒い地域の調理道具でもある。

父方祖父と両親は織物工場をやっていたから、工場には一階にも二階にも、昔の映画で見るような大きな石油ストーブがドーンと置いてあった。
火力はすさまじく、それで1

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【レシピ付】おひさま色の砂糖煮

【レシピ付】おひさま色の砂糖煮

このノートは、東北を深掘りするwebマガジン『まいにち・みちこ』様(https://my-michi.com/)に掲載している連載記事
『おいたま食堂多摩川支店です』
をまとめたものです。
ご近所や祖父母、両親。見聞きした昭和的暮らしとお料理のレシピエッセイ。山形県置賜(おいたま)地方の伝統を、器用な母から不器用な娘へ。受け継がれるはずが失敗したり忘れたり。日々のご飯のヒントになるかな。

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