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【メイキングにパンツ】マックス・チャン初主演作『ULTIMATE BATTLE 忍者VS少林寺(2000年)』

マックス・チャンが近年最も注目すべき武打星なのは言うまでもない。
その眉目秀麗な見た目に武英級の超絶功夫。色気の擬人化のような存在感は説明不要だろう。

だが、俳優、マックス・チャンとしては長く不遇の時代を過ごしてきた。ようやく注目されるようになった『グランドマスター』にしたって2013年公開。その頃には39歳だ。まさに遅咲きの俳優だと言える。

今回紹介するのはそんなマックス・チャンがまだ蕾だった頃の作品。若さ溢れる26歳。マックス・チャン初主演映画『ULTIMATE BATTLE 忍者VS少林寺』だ。
忍者と少林寺。その夢の対戦カードにトキメキを隠せない者もいるだろう。ULTIMATE BATTLEという邦題も納得の豪華なBATTLEだ。

本作の舞台は幕末で通りすがりのマックス・チャンと徳川埋蔵金の在り処を示す地図を握る木村一家が、薩長連合の忍者に狙われるというもの。
森の中で木村一家と通りすがりのマックス・チャンが突然謎の忍者に襲われる導入を見れば一発でこの作品がマックス・チャンのキャリアにおいて輝かしい第一歩を飾るものだとわかる。
本編開始から10分も経たない内に忍者が突如出現し暴れまわるのは導入として完璧である。
そもそも導入でアクションを見せるのは観客の興味を惹きつける最適解であり、そのアクションさえよければどんな映画でも「最後まで見るぞ」って気にさせてくれる。本作の奇才監督ダグラス・ユンはそこのところを理解して作っていると言える。
その後マックス・チャンと忍者のアクションがあったり、バーフバリの如く丸太で坂を滑り倒したり、ややあって木村パパは死亡。木村ママは意識不明の重体で赤いお面を被った謎の男に匿われる。
こうして成り行きで木村娘(桜)と二人きりになったマックス・チャンは、命からがらマフィアと賭博が支配する街へと辿り着く。

というのが本作の導入なのだが、これがとてつもなく理解しづらい。何故かというとインパクト重視で圧倒的に説明不足だからだ。
そもそも本作は冒頭で木が真っ二つに割れたり人か爆発四散したりするが、重要な徳川埋蔵金のこととか悪役の薩長連合のこととか一切説明してくれない。ただただ忍者が唐突に現れて木村パパをKILLしていくのだ。インパクトとしては最高だし忍者の役割としては正しいのかもしれないが、映画としてはもう少し手心を加えてほしいものだ。
そのおかげで本作は配給会社の配慮か、まず最初にあらすじを日本語で説明してくれる。

もしかしたら元から映画に組み込まれていたものかもしれないけど、劇中で忍者が話す謎の日本語を考えるとそれはないと思う。
とにかくこれのおかげで無駄に複雑なプロットが理解しやすくなる。これだけはしっかり意識して見ておこう。

というわけで『ULTIMATE BATTLE 忍者VS少林寺』一応ユエン・ウーピン製作のコメディアクションなのだが、例によって後半は人がバンバン死にだしてハードコアな展開になる。ドニーさんのタイガーコネクションみたいな感じ。
あまりにも突然ハードコアな映画になるので「お前が死ぬのかよ!」と何度もツッコむ羽目になった。
改めて言うと、本作は徳川埋蔵金の在り処を示す地図を握ったマックス・チャンと桜が薩長連合の忍者に狙われる物語である。
しかし街についたあたりから賭博を仕切るマフィアとの諍いに巻き込まれ「人は何故争うのか……」という他の映画に任せておけばいいシリアスなテーマに向き合いはじめる。そして物語の筋はだんだん行方不明になり、終盤まで忍者は精神的な存在としてしか登場しなくなる。

とはいえ、定期的にアクションが挟まれるので飽きはしない。特に精神の少林寺空間で行う精神的僧侶との少林寺演武や、分裂する精神的な忍者と戦うアクションはマックス・チャンのキレが遺憾なく発揮されていて最高だった。個人的に演武というのは一通りの型があるので武打星の個性が出るシーンだと思っている。新少林寺でウー・ジンも演武をしていたが、やはり彼独自の個性が出ていたと思う。
本作でもマックス・チャン独自の演武を味わえる。見れば彼の肉体的な躍動から弾けんばかりの個性が伝わってくるのがわかる。
ちなみに精神の少林寺空間について関心を寄せる者もいるだろう(作中に「精神の少林寺空間」と呼称されるわけではないのだが、そうとしか呼びようが無い)しかし、精神の少林寺空間が何たるかは見ても理解できるわけではないので気にする必要はない。

断っておくと、本作の少林寺要素と忍者要素はあくまでも「人は何故争うのか……」というテーマのふりかけに過ぎず、邦題の『忍者VS少林寺』に期待を寄せると肩透かしを食らうだろう(そもそも原題は『致命密函/中華丈夫』だ)
とはいえこの邦題は一目見て「B級」だとわかるし、見る者もそこまで期待せずに見れるので見終わった時の満足感は高い。
なにより本作の主人公はマックス・チャンである。それもまだ20代のぴちぴちマックス・チャンである。
当然功夫のキレが凄いし、若々しさに溢れている。もうこれだけで大満足なのだ。
マックス・チャンと言えば近年はクールなキャラクターを演じることが多いけど本作では割とテンプレな『功夫は凄いけど純朴でアホな青年(小難しい話をされると一瞬考えるように視線を空中に彷徨わせ、その後愛想笑いを浮かべるやつ)』を演じていて、それが逆に新鮮でかわいい。
そしてなによりすごいのが現在と顔が全然変わらないところだろう。

全然変わらない。武打星はドニーさんやウー・ジンなど全然老けない傾向にあるが、マックス・チャンも40代の現在と比べて顔が全然変わらないのでかなりのものである。
しかしマンダムな色気のある40代マックス・チャンと違い、20代マックス・チャンはフレッシュさ全開。40代マックス・チャンは色気で見ていると心拍数が上昇するが、本作のマックス・チャンは役柄のせいもあって青臭さやあどけなさがあり、見ていて心が温かくなる。完全にかわいさがマックスだ。
また、若手ということもあって結構な無茶ぶりをされる傾向があり、ぬかるみに顔から突っ込んだり、ニワトリの物まねをやらされてりなど、かなり体当たりなこともやらされる。
これは今のマックス・チャンでは絶対見れないものだろう。

そもそも現在のマックス・チャンはコミカルの役柄をすること自体少なく、純朴でアホなマックス・チャンはかなりレアな存在だろう。
本作は物語の芯はぶれっぶれだがマックス・チャンのかわいさだけはぶれない。ただ一つのマックス・チャン…………プライスレス。

そんなマックス・チャンのかわいさを堪能できる本作だが、特に素晴らしいのがメイキングである。
メイキングは基本的にインタビュー映像を流したり撮影現場の様子を流すだけなのだが、そこに20代当時の生のマックス・チャンの様子を見ることができる。そこでは油断してパンツ丸出しの瞬間を撮られるマックス・チャンや、泥だらけの姿を撮られて恥ずかしがるマックス・チャンの姿を拝める。

ちょっとはにかみながら笑うマックス・チャンは今のマンダムな色気のあるマックス・チャンでは決して味わえない破城槌的な破壊力があり、かわいい。ちなみにマックス・チャンのパンツなのだが、映画の衣装というわけではなく、ガチのマックス・チャン自前のパンツ(通称ガチパン)といった感じなのでこれも相当なレアものだろう。
パンツ丸出しのところを撮られて慌ててズボン穿いたり、泥だらけの姿を「恥ずかしいよ」と言ったり、当時のマックス・チャンは恥ずかしがり屋だったのかもしれない。
そんなスターになる前のマックス・チャン。気負ったところのない素の姿が拝めるのも『ULTIMATE BATTLE 忍者VS少林寺』のメイキングだけだろう。

『ULTIMATE BATTLE 忍者VS少林寺』は製作がユエン・ウーピンなので、愛弟子マックス・チャンのアイドル映画として作られた側面があるのかもしれない。そういう意味ではこの映画はアクション含め良くできているし、脈絡なくマックス・チャンが半裸で虫に責められるハードコアエロ同人みたいな絵面が見れる。
そもそもこの映画にもこの記事にも関心を示すのはマックス・チャンが好きな人くらいだと思うが、とにかく本作はマックス・チャン好きな人のための映画と言える。
マスターZ公開のお供に見てみるのも一興だろう。


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