居場所選び
私は北海道札幌市の出身で中学生の頃から東京に出るのが夢だった。
理由は東京に憧れていたわけではなく、ただ単に北海道という島国を出たいと思っていたからだ。
もっと言うと家族から離れて早く独り立ちしたかったと言う方が正確だ。
ちょうど北海道に出ることを考え始めていた当時柴犬を飼っていて、夕方になると必ず30分ほどの散歩が必要だった。
北海道の空は広くて、特に冬はキーンと言う音が聞こえてくるような透き通った(寒々しい)空気をしている。
遠くの星を見ながら、ただひたすら願っていた。
早くここを出て、もっと違う人達に出会いたいと。自分を理解してくれる誰かと。
それから20年ほど経った今私はまた岐路を迎えていた。
東京の大学に進学し、そのまま就職。15年以上東京で生活をしていた私が体調を崩し地元に戻ることになったのだ。
正直北海道に戻って生活している自分の姿は想像できなかった。物心ついた歳から数えると東京での生活の方が長い。
でもその頃はちょうどコロナ禍でフルリモートひとり暮らしが私の心身を蝕んでいた。
『これ以上ここにいたらダメになる、、』
漠然とした不安はどんどん大きくなっていき、それ以外考えられないようになっていた。仕事は役職もあり頼りにされている、収入も女性30代で見るともらっている方だ。
でもそんな条件面だけで冷静に状況を見れる状態はとっくに過ぎていた。
そんなこんなで仕事を辞め、北海道に戻ったのが2年前。
ゆっくり療養したおかげで少しずつ仕事もできるようになり再度正社員として働き始めていたが、生きていく中での違和感が拭えなかった。
簡単に言うと地元に馴染めないのだ。
まぁまだ2年しかないし、しかも戻ったのが30代半ばと難しい年齢だしすぐに慣れるとは思っていなかったが何かが決定的に違うのだ。
仕事への責任感?やりがい?友達?ライフスタイル?
あげると切りがないが、結局は「お金」と「娯楽」だ。
言葉だけ見るとなんだか嫌なやつと言う感じがするが、お金と娯楽は生きていく上で非常に重要な点である。
まずはお金を自分自身で稼ぎ、それを納得できる形で消費する。
何でもいいのだ。服でも化粧品でも交際費でも趣味でもなんでも。ただ自分自身が稼いでいて、かつそれを自由に使えていれば。
北海道でも貯金も消費もできていたが、年収アップが見込めない(相当時間がかかる)ので計画を立てて我慢をする必要がある。
第一実家暮らしだからなんとか貯金できているという状態だ。
かといって手取りを増やすために残業ばかりしていては、地元に戻った意味がない。
これが20代から地元に戻っていたり、結婚していたりすれば話は違うのだろうが、私はあまりに長く1人で自活し過ぎてしまっていた。
あとは「娯楽」だ。
これは人によってだいぶ異なると思う。
私の場合はこれがないと生きていけないと言うほどの趣味はないが、大事なのは友人とのたわいもない会話とオシャレな空間だった。
人間関係は正直苦戦した。北海道の人が悪いと言うわけではなく、経験していることや価値観が違うのでなかなか話が合わない。
幼馴染と数ヶ月に1回会うくらいで、それまで距離が離れていたこともあってその他の友達とは疎遠になっていた。
オシャレな場所だっていっぱいあるにはあるのだが、私は車が運転できないのでほぼ札幌駅周辺にしか生息できず。
試しに編み物をしたり、一人カラオケしたり、図書館に通ってみたが冬場になると余計出かけれる場所も限られて、家族以外と話す機会が少ない生活になってしまった。
そして私はまた決意したのだ。
東京に戻ると。
それからは早かった。行動あるのみで元同僚に話を聞いたり、東京に毎月行って仕事を探した。
よく結婚でもすんなり決まる時はそれも縁だねと言われるが、私も東京に縁があったらしい。今は東京でこうして仕事の合間にnoteを書いている。
東京に戻る前に一般人の投稿で、「また東京に戻るか悩んでます」という内容を見つけた。みんな良かれと思って、いややめた方が良い。私も戻ってよかったです。等とコメントしている。
結局人それぞれなんだよね。と言いたい。
良い時もあれば悪い時もある。
私も嫌ならまた戻れば良いやという気持ちで戻ってきたのが良かったようだ。
だって正直わからないもん。将来どうなるかなんて。
ただ地元があることはありがたいことだし、東京に戻れたのも友人家族の協力あってのことで私は1人じゃないんだなと改めて感謝できた出来事だった。
あの犬を散歩しながら空を見上げている私に言いたい。
早く自立したいととか、親が嫌だとか、周りが理解してくれないとかそんなのただの傲慢だぞ。
どれだけの人が後ろで支えてくれているのか。前ばかり見てたら気付けないことがいっぱいあるんだからな。
大人になるって面白い。