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 人類の発展のそばには「法=ルール」というものが存在しました。法制史(どのように法が進化し、何故法が変わってきたのかを研究する学問上の一分野)を学ぶ意義は、法律が文明の発展とどのように結びついていたのかを知ることを通じ、その時代の社会思想を理解すると共に、未来に必要な法を考えることにあると個人的には考えています。

 法治国家である日本においては、法(=ルール)の遵守は大事な価値規範。法(=ルール)を守ることは私たちの安全や尊厳を守り、それが社会全体を守ることになるのです。

 その一方、私たちは法(=ルール)を守ることの大切さを何度となく説かれる一方、その法(=ルール)の意義や目的を問うことは実は少ないと感じる。「法」とは私たちの自由を奪うもの。だからこそ、その法(=ルール)が何のために存在するかを考えなければならない。

 また、法(=ルール)とは人間が構築したものであり、そこに普遍性は存在しない。前述したように、法制史は「どのように法が進化し、何故法が変わってきたのか」を研究する学問。つまり、守るべき方は常に「変化」するものだと考える。社会の変化と共に法もまた移り変わるのです。

 中学生のときに校則に疑問を持ったことをきっかけに、情報公開制度を利用して全国の校則を集めたデータベース「全国校則一覧」を創設した高校生の神谷航平氏の記事を見つけました。

 神谷氏は自身が中学生の時の校則に疑問を持ったことをきっかけに現在の活動をスタート。全国の校則データを地道に収集しデータベース化。現在掲載している校則は、2023年11月時点で1700校を超えているとのこと。。文部科学省の学校基本調査によると2020年度の全国の公立高校は3537校なので、約半数がすでに掲載されたことになるとは大変驚きです。

 そのデータベースを見比べた時、注目すべき点は、「校則の変え方を定めた校則がない」という事実だと同氏は語ります。 

 一般的な契約書や利用規約では、契約や規約の変更に関する項目が必ずあります。しかし、ほとんどの学校の校則にはその項目が見当たりません。生徒会で決めればよいのか、校長に決定権があるのか、教育委員会や保護者に働きかけが必要なのか。校則を変えるために必要なプロセスがあらかじめ開示されていない状態なのです。文科省の「生徒指導提要」には、「校則の在り方は、特に法令上は規定されていないものの、判例では、社会通念上合理的と認められる範囲において、教育目標の実現という観点から校長が定めるものとされています」と記されています。

 「校則を変えたいと思ったときに、どんなアクションを起こせば変えられるのかがそもそもわからない状態です。僕も中学校では校則を変えることができませんでした。学校内の問題としてだけでなく、校則をめぐる仕組み自体を変えることができないかと俯瞰して考えるようになりました。もっと言えば、校則は学校内の民主主義を考えるうえでの一つの要素に過ぎません。声をあげても無駄だとあきらめているこどもを少しでも減らして、自分の力で変えられるという成功体験を増やしていきたいと強く思っています」

 今学校教育に関して様々な変化が生まれようとしている。旧態依然の体制を見直し、学校という学びの空間に新たな価値基準を創造することが求められています。そんな中、校則(=ルール)を変える仕組みが明文化されていないという事実が、現行の学校教育体制の鏡となっているように思う。ルールは普遍的なものではなく、常に変化するという法制史から見れば当然の概念が、学校教育には浸透していない。その現状こそ変化させなければならないと個人的には思う。

 神谷氏は2023年8月には、Forbes JAPAN 30 UNDER 30(日本発「世界を変える30歳未満」)に選ばれたそう。教育により良い変化を生み出そうとする彼と同じように、私も頑張ろうと思います。


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