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#248 私は「ナチュラル」、だけどできることもたくさんある

人気アニメ『機動戦士ガンダムSEED』には、「コーディネーター」と「ナチュラル」という2つの人類が存在します。

前者は遺伝子調整された人間のことであり、身体的・頭脳的・精神的な面において、通常の何倍もの力を有しています。後者は遺伝子調整されていないいわゆる「普通」の人間。「コーディネーター」と比べると、その能力は凡庸です。

他者とは異なる生まれ持った特別な力は、私も含めた「一般の人」にとっては羨望の眼差しの対象になりがちです。それが遺伝に起因するならば、「偶然の産物」であり、自分ではどうすることもできません。だからこそ、遺伝」は、その特性からタブー視されるものなのかもしれない。

「知能」は「遺伝」の影響を受ける。

この言葉は私たちをドキッとさせます。「努力が大切である」という教育的指導の根底を揺るがすと共に、本来格差を埋めていくための教育の原点が、生まれもった資質によって決まってしまう。

逆に、私たちは知能が「遺伝」に影響を受けることを感覚的にわかっているのかもしれない。だからこそ、そこに向き合ってしまったら、その不安が科学的事実であることが証明されてしまい、絶望を感じてしまう。

しかしそれでも私たちは、「知能」と「遺伝」の関係に目を背けてはなりません。本質的な「学び」は、知らないことを知る行為であり、そこには多少なりとも痛みを伴います。その関係性をしっかり理解したからこそ、本当の意味での「解決策」が出てくることもあります。

行動遺伝学者の安藤寿康氏の新著『教育は遺伝に勝てるか?』(朝日新聞出版)に関する記事を2つ見つけました。

安藤氏によれば、「遺伝」が及ぼす学力への影響は50%であるのに対し、「環境」が及ぼすのは30%だそう。

人間が誕生する時、そこには必ず生物学上の父親と母親が存在し、そして彼ら、及び彼らの血縁関係の「DNA=遺伝」を継承し、生まれてきます。容姿や髪質など表面的に現れるものから、血管の細さまで。だとすれば「知能」に関しても、遺伝の影響を受けるという事実は、本当はそこに驚くべき要素はないのかもしれません。

一方、「遺伝」という言葉を聞くと、容姿や肌の色という「変えることができない要素」の印象がが強く、ネガティブな印象になるのかも。しかし、「知能」というものは決してそうではありません。

安藤氏は

特に学力の場合は、学校で習う勉強をする環境が家庭で与えられているかどうかが成績を左右します。当たり前のことですが、いくら算数や理科の成績に遺伝の影響が50%もあるからといって、生まれつき掛け算九九やつるかめ算や連立方程式を解けるわけはありませんし、ましてや遺伝子の中にリトマス試験紙が酸性だと赤くなるといった知識が書き込まれているはずはありません。ヒトはそれらを学ぶ環境に置かれたときに、脳の中にそれを理解し問題を解くための何らかの変化を起こします。

とも述べています。

容姿や肌の色と違い、人の内面的な資質・能力は、遺伝と環境が双方向に機能して発達していきます。
遺伝に負ける勝つではなく、その特性を理解し、そして自分がどう進んでいくのかが大切なのです。


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