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フランスの小さなお城に泊まって、骨董市へ

パリを離れ、ヴァカンスに向かうキャミオネットとともに高速に乗って、田舎の小さな町へ。一時間も経たず、まわりは向日葵畑と玉蜀黍畑が延々と広がります。灰色がかった青色の空と繋がって、遠近感を失ってしまう。旅の目的は、8月15日の聖母マリア被昇天祭に合わせて開催される骨董市と週末ブロカントでのアンティーク買付けです。そして、数日滞在する宿に選んだのは・・・

19世紀のお城を改装したシャトー・ホテル。お城といっても、ラグジュアリーなお部屋ではなくて、テレビ無しの小さなお部屋を選んだので、とてもリーズナブルなんです。オフホワイトの壁に当時のままの煉瓦の床、アルモワールやベッドなど調度品は全てアンティークで、シンプルで清潔な内装の中にアンティーク好きの心擽る、時代を感じる素敵なお部屋です。

salle d'attente、シックな待合室。
螺旋階段を上って。

翌朝は5時半に起きて、パン・オ・レと無花果と紅茶で簡単な朝食を取ったら、早速車に乗って骨董市へ。見積もっていたよりも随分早く会場に到着してしまい、まだまだ大半はテーブル設置の段階。とりあえず、品がぽつぽつと出ているスタンドを見て回ることに。

30分経過―まだ収穫はゼロ。でも、焦って敢えて買わなくてもいいような品に手を出さないように!と自分に言い聞かせていると、「あ、可愛い!」と目に飛び込んできた苺のMoutardier、マスタードポット。こっくり深い赤色の苺。苺のジャムを入れてパンと一緒に朝食テーブルに、というのも素敵かも。すぐ隣のスタンドでは、シックな柄と色合いが美しいカフェオレボウル。

老夫婦のスタンドでは、1900年頃のブラウスを頂きました。ワイヤーが入ったレースのスタンドカラー、胸元にはたくさんのタックが寄せられ、袖にもレース。なんて可憐な雰囲気。それから、ブレスレット用のジュエリーコフレ、少女写真の紙箱、白パンジー刺繍のキルティングケース。ドール売りのマダムも品出しを全て終えていたので、慌てて目を走らせます。複数の箱の中にドールが、それぞれサイズ別だったり、マーク別だったりと、彼女の秩序で分類されていて・・・あ!と、可愛いチャイナヘッドの子と褪せたスミレ色のお帽子をかぶったドールヘッドを見つけました。

鏡の奥の世界へ通り抜けてしまいそう。

明るくお喋りな女性と物静かな男性のスタンド。7年ほど前に、可愛いドールを数点仕入れさせて頂いて以来、全く出会うことがなかったのだけれど、この市で再会。夫婦なのか、姉弟なのか。ふと、二人とも髪型が以前と全く同じままのせいか、7年前から全く1ミリすらも年を取っていない気がして・・・実は、彼らは妖精の姉弟で、魔法で人間をビスクドールや真珠のブローチ、銀スプーンなどへと姿を変えては売っているのだ、なんて、とりとめのない空想をしてしまう。

古いおもちゃや文房具など、ノスタルジックな可愛いものがこまごまたくさんのスタンドで出会ったのは、赤い瞳にピンク耳のキュートなベア。「可愛いでしょう」とマダム。マダムの少女時代のお友達だったのでしょうか、別れ際に、赤い瞳をじっと見つめ「バイバイ」と呟き、とても名残惜しそうにしていた。お隣のスタンドでは、ソーイングパニエ。「中がピンク色ですように」と祈りながら蓋を開くと・・・ピンク色だった!

時計を見ると11時。会場を後にし、車で数分ほどの隣町で開催されているブロカントへ。小さな規模なのであまり期待せずに訪れましたが、とても趣味の合うマダムが二人いてくれたおかげで、美しい白薔薇のオモニエール、ドール用セーラー服とコルセット、リボンレース、それから、儚い雰囲気にうっとりしてしまう少女の為のレースワンピースを仕入れることができました。本日の買付けはこれで終了。

Mon Petit Déjeuner

日曜日、雨の予報。灰色の空のヴェールには見るからに雨がたっぷりたまっていて、今にもポトンポトンと雫が落ちてきそう。急いで車を走らせ小さな村のブロカントへ。規模も小さい上に、8割は住民バザーのスタンド。プロのスタンドといえば、ちょっとした可愛いものがそこそこする価格。これは収穫ゼロかもしれない、とほとんど諦めかけていた時、ようやく美しいフォトフレームに出会うことができました。二枚開きで中にテキスタイルを飾れば、ドール用のパーテーションにもなりそう。たった一つでも美しい物に出会えると心が軽くなります。

車に急いで戻り、今度はここから40分くらいの村へ。ほどなく雨が降り出してしまった。会場では、案の定ほとんどのテーブルには透明のビニールがかけられ、品をビニール越しに見ながら、手には傘、足はぬかるみと、散々。でも、どうにか、上品な白髪のマダムから、美しい花かごの皿とシャルドン柄の皿を、ムッシューからは松ぼっくりの形の装飾パーツを頂くことができました。

シャトー・ホテルに戻ってからは、のんびりと、お城の庭から入れる森を散歩することに。

足を踏み入れると、植物や鳥たちに見守られているような見張られているような、奇妙な感覚を抱く。

歩いていくと、目の前に植物が絡む廃墟が現れた。お城の主人が瞑想や読書にふける場所だったのかしら。

森で見つけたもの。鳥の卵殻や羽、団栗、小さな実、レースになった葉。

ヤドリギの扇は、私のポルト・ボヌール、幸運のアイテム。

翌日。日曜日の収穫があまりにも少なく、本当は月曜日からは夏休み休暇を取る予定だったところを変更して、近隣の町のアンティークショップに行こうと決心。

最寄りの無人駅で切符を買い、電車で40分。美しい街に到着しました。事前に予約していた約束の時間までカフェで一休みして、いざ。美しいファサード、ショーウィンドーには一目で高級とわかる素晴らしいアンティークドールが飾られています。ドアを開いて、「ボンジュール、昨日ご連絡した者です」と挨拶すると、マダムがようこそを笑顔で迎えてくれました。

床から天井まで、マダムの素晴らしいコレクションでいっぱい!これも素敵あれも素敵、とドキドキ。ただ、どれもかなり高額で、パリの2倍くらいのお品も。ううむ、はたして買える値段のお品はあるかしらと不安に思いつつも、とびきりのうっとり美しいリボンワークローズ、ロココリボン、スペシャルな猫柄のワンピースなどなど、夢心地で頂くことができました。

買い付けたお品を全部車に乗せて、パリへ帰宅。来年の夏の買い付けはどこの街に行こうかな?

( 2019年夏の買い付け日記より)

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