いぬのせなか座
いぬのせなか座のhとなまけの文通です。奇数番はなまけ、偶数番はhで、たがいにあったこと、考えたことを書きます。週に2回の更新です。
多くの「文章術」が巷にあふれる昨今、なぜひとは文章を読み書くのか。「読み書き能力」の現在に向けて何ができるのか。『私的なものへの配慮No.3』が話題を読んだ著者による、新たな(そして決定的な)「文章術」への問い。
第3回目の講座は、2019年2月2日(土)に三鷹の上演スペースSCOOLで行われました。講座の要約、上演用テキスト、書き起こされた対話、スライド資料、終了後の感想、上演用テキストの機械翻訳、当日にいただいたメモとその応答が収録されています。ひとくさり読み終えたところで、他に足してほしい文章があれば、ぜひコメントをお願いします。質問や「メモ」を寄せていただくのも歓迎です。
だいぶ、日本はあたたかくなってきたよ。もうあつい。花はとっくに咲き終わって、ただの木になっている。ビールだよ。酒がのめないから、いつもアルコールフリーのビールをのんでいる。あたらしい家で一緒に住むともだちに、これおいしくね?といってアルコールのないビールを渡した。まじい、っていっているけど。それでもなぜかいつのまにか全部飲み干している。いちいちひっかかってくるなよ。ひっかかりたいくらいがちょうどいいんだ。みんな意味のわからない話ばかりしていたから、鳥でも見るかと思った。もう真
2024.4.6 こっちに越してきてからずっといきたいとおもっていた公園に桜を見にいった。向こうに住んでるときに美術館でご飯を食べるひとの気持ちがわかったので、公園のなかにある美術館のカフェでビールと軽食を買おうとしたらビールはテイクアウトできないと言われた。理由は聞かなかったのでわからないが、わからない理由を言われてもおたがいに困るのであきらめて外の売店に並んでビールを買った。来週またあらためて花見をする。 2024.4.13 毎度あたりまえに延長することでおなじみのトー
1週間後はもうありませんよ。だからないんですって。はいはい。ああそうですか。そう言われましてもね。ビール? 急ですね。まあありますけど。でも1週間後というものは存在しないんです。ありがとうございます。このカップにいれてください。これですか? しんだ兄の棺にはいっていたものです。埋めてしまう前にこっそり取り出したんです。そういうわけですから、もうこないでください。まだわかりませんか。気を抜くと、なにもわからなくなる。一度わからなくなると、もういちどわかるのは気を抜くよりもずっと
2024.3.26 そう、それで絵の話。わたしはあの金継ぎされたティーカップを見たことがある。風がつよくて、あたたかいにおいのする日だった。カーブートに出かけた帰りにコーヒーが飲みたくてカフェを探して歩いていた。カーブートの会場は駅から15分くらい歩く公園のなかでやっていて、まわりにはなにもなくて、駅の近くまで戻れば来るときに見たお店がいくつかあるはずだったからそれをあてにして歩いていた。しばらく歩いていると行きには気づかなかったスーパーマーケットの看板が見えて、この際あそこ
ひさしぶり。げんきらしいじゃない。ほっとしている。このあいだはけんかになってしまったね。額は持って帰ったほうがよかったかもしれない。けっきょくものすごくよる遅くなったから。それでなんの話でしたっけ。いや、まあどちらでも、どうでもいい話です。そうでしたか。別の街へいったら、めずらしい目でみられている。じぶんの肌の色はボーダー上で、あともうすこし濃い色ならばまいにち警察に止められてばかりになる。コーヒーがのみたいならば、お湯が必要ですからね。それからお湯が必要なら、火が必要です。
2024.3.11 3日後に絵が送られてきた。雨が降っている。雨は植木鉢の花にむかって降っているが、その花は枯れている。枯れた花の植木鉢は割れていて、根が見えている。割れたところから土がこぼれていて、落ちた先でちいさな山をかたちづくっている。その山の上に透明なガラスのろうとが重ねられている。ろうとの注ぎ口から雨とは違う色の液体が滴っていて、その液体は金継ぎされたコーヒーカップに注いでいる。たろうくんはその絵をすごく気に入って、おみやげで買った木製の額縁に入れてロンドンの家に飾
角にはへんに大きな花がおいてある。鉢が割れていて、根が見えている。雨が降っている。すこしずつ土が外へ出ていく。わたしがしんだとき、母がここに鉢を持ってきた。まいにち花を置きたかった。近所のおんなが しにこしつしている といっているのをきいたからやめた。だれかがそこにのみものをおいた。石をおいた。花をおいた。チョコレートをおいた。だれかが鉢をおいた。ありがとうございます、あなたのおかげです。角はいつもにぎやかそうになる。小銭をわたしはおいた。眠っているとしろいおとこがきた。眠っ
2024.3.2 ルーブルにいった。広かった。とちゅうで迷ってしまった。電波がなくて地図もわからず、とりあえず前に進んでいたとき、少しだけ開いている扉があったので気になって入ってみた。電気はついていなかった。前の部屋からの明かりのおかげで見ることができたが、大量の額縁だけが掛けられていて、絵はひとつもないようだった。前の前の部屋まで戻って係員を探したが見あたらなかった。もういちど額縁の部屋に入って奥まで進んでみると、明かりが見えた。さらに進んでみると、ろうそくに火をつけて、ケ
ルーブルにいった。広かった。だれもいない部屋で係員が寝ている。けいたいもみている。給料がふつうよりも高い。 家のない男の家が、朝はあった。帰りにはなくなっていた。男は救急車に乗せられるところだった。名前をしられている。たぶんしられていない。よっぱらっているときに話した。寒さで壊死している男の足がきられる。寒さなのか、動かないからかわからない。へんな形のくつを履き、うごかすのに重たく、痛い。うえしたの歯を合わせ、息を吸いながらでしか、足を動かせない。足をみせたい。ない足を見せ
2024.2.18 家に帰るとすずめが死んでいた。ベランダに留まりにきたところにねこがちょっかいをだしたんだとおもう。出かけるときにきちんと閉めておけばよかった。ティッシュでくるんで、マンションの下の植え込みのところにおいた。土を掘って埋めるべきとおもったが、虫が多くて、道具がなかった。次の日にはいなくなっていた。水槽に手をつっこんでひっくり返したこともあった。めだかが死んだ。母親に言われて、ティッシュにくるんで生ゴミに捨てた。次からもそうした。毎年のように家のなかでセミがバ
喫茶店に誘う。映画に誘う。電話番号をなくす。映画館の前で待つ。会えない。2度目に会ったときに結婚しようと思えた。 映画館の前で会える。こんどは住所をなくさないように財布にしまう。女はあたらしい皿を買い、男は花を買った。ラジオからいつものようにウクライナのニュースが流れている。bloody war。おとこはいつものように酒を飲んでいる。酒をやめろ。これしかないんだ。…… 酒をやめ、女に電話をかける。いまからいっていい? すぐにきて。雨が強く降っている。おとこはこない。電気が消え
2024.2.2 たろうくんが見たがってた日本で上映されてる映画の舞台がパリで、映画はみれないけど場所にはいけるからって、エッフェル塔のふもとに住んでるたろうくんの友だちのところに遊びにいった。レストランでステーキタルタルくださいって言ったら店員さんが「生の牛肉だけどいいの?」と聞かれて、いまおもえば生肉たべるほうがめずらしいだろうから聞いてきてくれたんだとおもうけど、そのときはなんでそんなこと聞いてくるのかわからなくて変な感じになっちゃったから、うまく返せたらよかった。パリ
きょうはルーブルにはじめていった。おおきいとか、なんかきをつけろとか、つかれるとか、日本人は絵を見ていないとか、いろいろいわれる。むかし、ルーブルのピラミッドのまえでパントマイムをしているひとにばかにされたことがある。すごく晴れていて、あつかった。照り返しがすごくて、なにもみえなかったから、ばかにされているのを見て笑っている聴衆の顔をわすれる。あのときとおなじたばこを吸いながらあるくおばあさんがいて、なつかしかったかもしれない。マフラーを巻いて歩くいぬもいる。 あさってルーブ
2024.1.24 最近はちょっとできるようになったけど、音楽にのってからだを動かすのができなくて、昔はかっこつけてたから踊らなかったけど、かっこつけて踊らなかったせいで踊りかたがよくわからないまま大人になってしまったかもしれない。踊りたいっておもうこともあんまりないけど。歌も下手だからカラオケとか行きたくないし、校歌とかもまったく歌ってこなかったし。そのせいかわからないけど、こないだパレスチナにたいするジェノサイドに抗議するデモにいったときにシュプレヒコールをみんなでやると
オレンジにアレルギーがあるひとがいることを5年前にはじめてしった。チョコレートがきらいなひとがいることもしったけど、いつもそんな人がいることをわすれて、チョコレートをあげようとして、渡そうとチョコレートを持った瞬間に思い出す。この人はチョコレートが嫌いだった!。 夏はそとでよくビールを飲んだけれど、いまは寒すぎる。まいにち雪が降っていて、つもらない。道が凍りついて、いろんなところで人が転んでいる。 友人のいぬがくるまにひかれてしんだ。事故のあった場所のすぐそばの柵にいぬの写真
2024.1.12 ヨーグルトいいね! うちの必勝法はオレンジジュース。果汁100%で、濃縮還元じゃないやつ。スーパーとかによくある生のオレンジをしぼる機械のやつは試したことないけど、旅行いったらぜったい現地のスーパーでオレンジジュース買う。フリードリヒシュトラーセの駅中のEDEKAで買ったオレンジジュースがいちばんおいしかったけど、写真ないし忘れちゃったからどれ買ってたか思い出せない。 ロンドンに帰ってきてからもオレンジジュース買ってたんだけど、なんか違くて、ある日オレンジ