「お客様がどうしたら喜んでくれるかを常に考える」寺崎さんご夫妻インタビュー記事(スーパーマーケット玉木屋)
スーパーマーケット玉木屋
寺崎正寿さん (代表取締役)
寺崎亮子さん (店長)
2023年現在、創業から103年目を迎える「スーパーマーケット玉木屋」は宮古市になくてはならない存在。お惣菜の美味しさと、お客様従業員問わず意見の通りやすい環境が魅力の小規模スーパーです。玉木屋を経営する寺崎さんご夫婦にインタビューさせていただきました。
――最初に、玉木屋の歴史について教えてください。
正寿さん:玉木屋には103年の歴史があるんですが、はじまりは呉服店でした。呉服屋を営業しているうちに、お客様から「あれがないか、これがないか」と尋ねられ、ニーズに応えていくうちに食品店に様変わりしていきました。さらに規模が広がっていき、今から約40年前には岩手県内で最大5店舗で営業していました。その後は段々と規模が縮小していき、最終的に鍬ヶ崎地区に1店舗を残すのみとなりました。東日本大震災により店舗が被災しましたが、5年後に今の場所(本町)へと店を移しました。
――震災を機に移転された経緯を教えてください。
正寿さん:震災のときは鍬ヶ崎地区という、海に近い地域だったこともあり、店ごと津波に飲まれて流されてしまいました。玉木屋は2010年の11月に店舗を改装していたため、震災後すぐにお店を再開できるような財務状況ではありませんでした。お店を続けるかどうかかなり悩んでいたのですが、グループ補助金をいただくことができ、なんとか再開できるという状況になりました。本当はまた鍬ヶ崎地区にお店を建てたかったのですが、震災後しばらく鍬ヶ崎地区のほとんどにおいて住宅を建てることができないという状況が続いていたため、採算などを考えた結果、本町に再建することにしました。しかし鍬ヶ崎地区のお客様のことを全く考えなかったわけではありません。震災前からお付き合いのあった問屋さんや魚市場との距離も考え、できる限り鍬ヶ崎地区に近い地区を選んでこの場所にしたんです。
――震災後にも苦労されたのですね。
亮子さん:震災後の再建にも苦労しましたが、再建後も大変でした。最初は分からない事だらけで、従業員はじめ、お客様にも意見を聞いて改善を繰り返してきました。その頃の姿勢は今も継続しており、お客様から要望や意見があったら、できる限り取り入れるようにしています。例えば、お客様から「この商品をおいて欲しい」と言われた時にはできる限り仕入れて販売するようにしています。どうしても商品が見つからないときはAmazonで購入して利益を取らずに販売したこともあります(笑)
――このような取り組みをするようになった背景は何ですか?
亮子さん:震災直後に自分も苦労したことが関係しています。自分の店が流されてしまったので買い物をする時には別のスーパーに行き、希望する商品がないときは複数のスーパーを回って買い出しをしていました。その経験があったことで、自分の店に来てくれたお客様には自分と同じような不便な思いをしてほしくないと考えています。今となっては、小規模店ならではの魅力だと思っています。
――お客様の要望を聞いて良かったと感じたことはありますか?
正寿さん:複数のお客様から、「品揃えがいい」「玉木屋を探検することが楽しみ」などと言われたことがあります。以前は大きな食品問屋さん2社とお付き合いしていましたが、今は全日食チェーンというグループに加盟しています。店の規模の割に商品の種類を増やすことができているので、加盟して良かったと思います。
――お客様の要望に応える事について、利益的な面から見てプラスのことなのですか?
正寿さん:利益的にはプラスでないこともありますが、まず仕入れて販売してみます。売れずに廃番になることもあれば、定番商品として残ることもあります。お客様の要望に応えることで、顧客満足度を上げることができれば、結果的にプラスであると思います。
亮子さん:自分自身も買い物に行こうと思ったら、買いたいもの全てが揃うスーパーに行きたいと考えます。ですが、玉木屋は小さい店ですので、品揃えでは大きなスーパーには敵いません。ですから、お客様の方からご要望があった場合にはできるだけこたえたいと思っています。どうしたらお客様が喜んでくれるかを考えるのは基本だと思っていますね。
――他にも玉木屋の良いところはありますか?
正寿さん:お客様がどうしたら喜んでくれるかという面で考えると、店員とお客様がコミュニケーションを取りやすい環境を整えています。例えば、大手スーパーの考えでは、品出しは開店前や閉店後に行って、開店時間中はレジ以外に人手をかけないという考えを持つスーパーもあります。ただ玉木屋では、オープンしてから一貫してお客様との接点を増やそうという考えでいます。セルフレジを導入せず、有人レジのみで対応しているのもそれが理由です。我々店員もお客様とコミュニケーションを取りたいという思いがあります。
――玉木屋でこだわっているところはありますか?
正寿さん:お惣菜と鮮魚にはこだわっています。お惣菜に関しては工場で作ったものを仕入れるのではなく、主力商品はできるだけ店内で人の手で作っています。作業工程を多くし、人手をかけることで美味しい味に仕上げています。また、鮮魚に関してはお客さんそれぞれの需要を考えて販売をしています。例えば、震災前から今に至るまで買いに来てくれている鍬ヶ崎地区のお客様は捌いていない丸魚を好みますが、中央通周辺の方は切り身を好みます。ですから、朝は捌かずにそのまま売り、昼から夕方にかけて魚を捌いて切り身で販売することで、それぞれ異なるニーズに対応するようにしています。
さまざまな背景があって、スーパーマーケット玉木屋が現在まで営業することができているということがよく分かりました。また、地元のお客様を大事にされていることで地域の方からも愛されていることが伝わってきました。
お話を聞かせていただき、ありがとうございました。
取材・記事執筆:笹野弘行
取材日:9月11日
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