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友人の結婚式に出席したら、結婚する意味がわかった

先日、友人の結婚式に出席した。僕と歳が近く、これまでに恋愛の話を何度も語り合ってきた友人だけに感慨深い。

挙式でのガチガチに緊張した友人を見ていると微笑ましく思えたし、結婚の誓いを立てたときは、家族や友人の前で一生の愛を誓うことが純粋にすごいなと思った。披露宴での幸せに満ちた光景は、胸に迫るものがあった。

正直なところ、僕は結婚することの意味をはっきりと、腑に落ちる形で理解していなかった。

ライフステージを前に進めるため?

それはたしかにある。実際に先を越されたと思ったし(本人にも言った)、世間一般の幸せを手にしたいという気持ちはある。そのためには結婚しなければ、と思う。でも、それは結婚の本質的な意味とは違うよな、とも思っている。

こんなことを思っていたが、友人の結婚式に出席したことで、「なぜ結婚するのか?」という問いに、ひとつの解答を手にすることができた。

結婚とは、愛という形のないものに、輪郭を与えるための儀式なのだ。

「誓います」と2人が言うと、チャペルは祝福に包まれた。

愛の輪郭が見えた瞬間。そのひとつは、結婚の誓いを立てたときだ。

賛美歌を歌い終えると、牧師は指輪の交換を行い、そして誓いの言葉を述べ始める。「病めるときも、健やかなるときも」からはじまり、「愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」と2人に問いかける。

「誓います」と友人と妻はそれぞれ口にする。チャペルの席には新郎新婦の家族、親族、友人が列席していて、全員が2人に視線を注いでいる。誓いのキスをし、チャペルは拍手とともに祝福に包まれる。牧師は「ここに新たな夫婦が誕生しました。皆さんが証人です」と言う。

これはたしかに儀式だし、キリスト教徒ではない私や彼にとって、神への誓いという意識は薄いだろう。だが、重要なのは、結婚の誓いを家族や友人の前で行ったということにある。これにより、愛がより重みのあるものとして眼の前に現れる。

誓いの言葉とは、夫婦にとって重みや拘束力になるとともに、愛を築いていく覚悟の表明となる。

新婦の家族や友人は、新郎の姿を微笑ましい表情で見ていた。

愛の輪郭が見えたもうひとつの瞬間は、披露宴で新婦の家族や友人から、新郎である彼が祝福されているのを目にしたときだ。

新郎新婦が座る高砂のそばのテーブルに、僕は友人らとともに座っていた。その席からは新婦側に座る方々の顔がよく見えた。

彼が話しているとき、友人や親族が2人と写真を撮るとき、彼がお色直しで退場するとき、ウェディングケーキを食べさせ合うとき、新婦の家族や友人たちは、彼を微笑ましい表情で見ていた。彼は妻だけでなく、妻の家族や友人からも祝福されていることがわかった。

彼の妻のスピーチ、彼の妻が友人たちと話しているとき、新郎側の席に座る僕たちは彼女を微笑ましい表情で見ていた。新婦から彼の両親への手紙では、「ほんとうの娘のように思っている、と言ってくれた」と涙ながら話していた。二次会では彼の妻も同席してくれて、僕たちのグループでともに会話をしたり、カラオケで歌ったりした。

誓いの言葉のときと同様、愛が夫婦2人のあいだだけで完結するのではなく、彼と彼女を愛する家族や友人のあいだでも共有されることで、愛の重みが増したのだ。

それはたしかに、愛の輪郭が形成される光景だった。

なぜ結婚によって、愛の輪郭を形成する必要があるのか?

結婚は愛の輪郭を形成する儀式である。この気付きによって、僕が理解できていなかった、結婚することの意味が腑に落ちた

何のために、愛の輪郭を形成するのだろうか。それは、形のない愛を自覚し、覚悟し、引き受けることで、愛を維持していくために必要なことなのだ。

自分と相手の関係性だけではなく、お互いの家族や友人たちとのあいだで、2人の関係性を認めてもらうこと。これが愛を維持する上で有効な手段のひとつなのである。

なぜ愛を維持する必要があるのか。それは、愛を維持する努力を重ねなければ簡単に崩壊してしまうからだ。僕自身の実感としてもそれはあるし、エーリッヒ・フロムが記した『愛するということ』でも書かれている。このことは以前noteにも書いた。

もちろん、結婚したとしても、離婚することはあるし、愛が崩壊した夫婦関係に陥ってしまう可能性もある。だが、結婚によって愛の輪郭を形成することで、愛が崩壊する確率を下げることはできるだろう。

このことは、「なぜ結婚するのか?」という問いに限らず、「なぜ子どもをつくるのか?」という問いについても、ひとつの答えとなるように思える。子どもをつくるということも、やはり愛の輪郭を形成する営為のひとつであるだろうから。

結婚式で感じたことについて書いてきたが、愛の輪郭を形成する上で必ずしも結婚式が必要とは思っていない。また、制度上の結婚をする必要があるとも思っていない。

必要なのは、2人のあいだだけで関係性を完結させないということだと思う。家族や友人とのあいだに、関係性を広げること。そうすることで愛の輪郭は形成されていく。

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