猪瀬直樹

作家

猪瀬直樹

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    最近の記事

    色褪せていく日本の「国葬」岸田政権の終わりの始まり

     英国ではエリザベス女王が亡くなられ、チャールズ皇太子が国王に即位された。  国葬は10日後ぐらいになりそうで、弔問外交というものがあるとしたらそちらに移りそうだ。  国葬というのは、本来は元首(日本では天皇、天皇崩御での大喪は実質的な国葬)が亡くなられた際に執り行なうものであり、そうでない場合は国の貌(かたち)に大きな変化があった場合に限られているはずです。  吉田首相が国葬だったのは、サンフランシスコ条約に調印して日本国の主権回復、つまり独立国家となるまでに果たした役割が

      • 戦いのなかで逃げる権利とは?平和ボケの日本で論じてもリアリティがない理由。歴史から学ぶために。

         橋下徹(元大阪府知事)さんとウクライナ戦争について論争になった。  彼はなぜ逃げる権利が認められないのか、と主張する。  そもそも戦争中、しかもこちらが仕掛けた戦争でなく一方的に侵略されている場合、という前提で橋下さんは問題提起をしているわけではない。  橋下さんは、あたかも戦争一般のような前提で逃げる権利を主張しているのだ。  いまウクライナはロシアに侵略されている。ゼレンスキーが挑発したからいけないとか発端についてはいろいろ意見があるだろうが、どうであれ軍事を仕掛け

        •  九州は太陽光発電の先進地域。余った電力をどうするか?

          3月4日19時30分から55分までNHK九州・沖縄エリアで放映された番組『ザ・ライフー脱炭素社会の本気度』が全国でも視聴できます。  ふつうならローカル放送は視聴できませんが現在ネットにNHK Plusがありますね、そこでNHKローカルが放映から1週間視聴可能なのです。  NHK Plusの画面を下にスクロールしていくと見つけられます。  ◎写真  番組はカーボンニュートラルがテーマで、九州では太陽光の発電が余っている、しかし電気は“貯金”できない。ではそれを無駄にしないた

          •  ロシアとウクライナのチキンレースで果たすべき日本の役割は「講和」に乗り出すことだ。

            ウクライナを挟んでNATOとロシアの対決という状況に対して日本はどう出るべきか。  日露戦争の際は、アメリカが仲裁に入って講和に持ち込めた。日本人はロシアに勝っていると思い込んでいた。賠償金が取れなかったことで日比谷焼き討ち事件が起きた。がほんとうは日本政府はどうにか講和が成り立ってホッとしたのが真相だった。  太平洋戦争では、山本五十六などは最初の奇襲で優勢に持ち込み第三国による講和を期待した。総力戦研究所の模擬内閣も、そのうちジリ貧になるのに第三国のあてがないと指摘し

            「猪瀬さん、日本を頼む」

             スキージャンプ団体混合で高梨沙羅が失格で憤懣やる方ないが、ときどき杓子定規な人間がいてこうした興醒めの判定をしてしまう。たかが2センチから4センチの服のだぶつきを懸命に測るタイプの人間は役所にもごまんといた。枝葉末節ばかりがすべてという価値観でダイナミックな世界が見えない。そういうのは日本人だけかと思ったら、国際舞台の審判にもいたのだね。  高梨沙羅が103メートルも跳んだのでそれいけと変な生き甲斐で厳しいチェックを入れた。あとはその基準でやるしかなくなってしまい、どんどん

            誤解される人・石原慎太郎さんのエピソード。

             定例記者会見で、石原さんは尖閣諸島問題などたびたび中国を批判した。  その際、「シナは……」と必ず中国をそう呼ぶ。確かに戦前育ちの石原さんにとって中国は「支那」であった。  僕の記憶でも小学生ぐらいのころ(3丁目の夕日の時代)はラーメンは、支那そばと呼ぶのがふつうで、メンマは支那竹であった。ある日、気がついたら店のメニューが中華そば表記になっていたことを憶えている。  1960年代、新聞は中国を「中共」と表記していた。台湾は中華民国である。朝日新聞がいちばん早く中共を中国に

            石原慎太郎さんは卓越した直感力の人だった。

             石原慎太郎さんは卓越した直感力の人だった。いっけん乱暴な物言いをするので誤解されることが多かったが、ほんとうはとてもシャイな人だった。  地球温暖化に対して強い危機感を抱いており、ディーゼル車の排ガス規制を、業界団体に対して及び腰の政府にしびれを切らし、いち早く東京都の条例で実施した。  2016年東京五輪招致(招致活動は2009年)も、環境五輪を全面に打ち出して100ヘクタールの中央防波堤を植林して森をつくった。東京湾から流れ込む熱風をやわらげ都心のヒートアイランド現象を

            ルオー「取り返し得ぬもの」

            昨夜のクリスマスイブ、銀座の吉井画廊に立ち寄りました。  ルオーの版画が10点ほど飾られていた。ボードレールの「悪の華」をテーマにしたものです。  写真  僕はある作品に釘付けになり、即座にそれを注文した。  題名は 「取り返し得ぬもの」  そうなのです。人生はつねに前進しているようで同時に取り返し得ぬものを増やしている。  何とも暗い表情。一見、そうでありながら悔恨とは単に暗いだけではない、自らが開墾した世界は少年時代には想像もできなかった奥行きの深い美醜、歓喜と絶望に満

            「B29は残念ながらりつぱです」皇太子明仁へ宛てた皇后からの手紙。

            『昭和23年冬の暗号』第4章抜粋  (昭和20年8月、皇太子明仁は奥日光に疎開していた。以下、8月30日、マッカーサーが厚木の飛行場に降り立つ前の日の出来事…)  その晩、昭和天皇と良子皇后は寝室で自らの行く末を案じつつ、奥日光にいる十一歳の皇太子明仁が敗戦により巻き込まれるかもしれない困難について話し合い、翌朝、皇后は手紙を書いた。   このごろは奥日光の方で又 変はつたところでおすごしですね 学生とも一緒に いろいろ していらつしやるのでせう 沼津の時のやうなのでせう

            12月23日に何が起きていたか? 昭和史に刻まれた『暗号』を読み解く。

             昭和23年12月23日に何が起きていたのか? 西麻布の僕の仕事場に一通の手紙が舞い込み、そこから物語がスタートします。『昭和16 年夏の敗戦』の完結篇になります。 『昭和23年冬の暗号』(中公文庫) 第1章 子爵夫人  前文お許しください。ご相談があります。 わたしは、先生のお住まいの西麻布に比較的近い、南青山におります。 表参道から根津美術館へ向かう道筋で、一度、お姿を拝したことがあります。  長いこと、お手紙を差し上げたく存じていたのですけれど、そうこうしているうち

            日本を「モデルチェンジ」せよーー気候変動への対処は、負のコストではなく成長のバネである。

             民間臨調「モデルチェンジ日本」を立ち上げ、11月22日、岸田総理に提言書を渡して議員会館で記者会見をしました。  提言の内容や記者会見の動画は「モデルチェンジ日本」のサイトからご覧いただけます。そこで僕は以下のように述べました。  洋上風力発電について、政府は2030年までに発電量1000万kW(原発10基分)を確保するという目標を立てています。  最新の洋上風力発電用の風車は高さ300メートルほどもあり、非常に大規模な機械産業になります。これをチャンスと捉え、自動車メ

            かくして“放浪のプリンセス”は彼岸のアメリカへとフェイドアウトする。ー文化人類学的王権論

             小室圭君と秋篠宮家のプリンセス真子さんとの記者会見、その後のメディアの狂騒が去ったところからこの問題に関わるテーマが何であったのかを、ひとまずワイドショーと一線を画した地平において整理しておきたい。  僕が『ミカドの肖像』を書いた直後に文化人類学者の山口昌男と対談した『ミカドの世紀末』という本があります。平凡社から刊行(87年)され、その後、新潮文庫(90年)になり、それこそ世紀末に10年振りに小学館文庫として増補版(98年)が出ました。  この本のなかで山口昌男は重要

            遠藤周作(未発表原稿発見)ーー「アスファルトの道」と「砂浜の道」とは? チャレンジしない日本人への問題提起。

             遠藤周作の未発表原稿が見つかり、その原稿は『影に対して』とのタイトルがつけられていた。なぜ未発表だったのか、その謎を解いていく番組が10月9日土曜夜11時からのETV特集でした。  先にお伝えしておくと再放送が今週木曜日(14日午前0時とあるので水曜日深夜)にありますので、ぜひご覧になるようお薦めします。  なぜなら、停滞したままの日本人の生き方への今後の問題提起にもなっているからです。  遠藤周作の父親は、東大法学部を出たエリートだが典型的平凡なサラリーマンです。妻、つま

            下山進著『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版)は、メディア関係者やジャーナリスト志望の学生には必読の文献である

             コラム集である本書(もとはサンデー毎日の連載)のなかで僕について2回分、触れてます。  発売されたばかりの下山進著『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版)は、メディア関係者やジャーナリスト志望の学生には必読の文献である。  下山は3年前まで文藝春秋の編集者だった。単なる編集者としては飽き足らず、1993年に自ら進んでコロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級過程に進み修了しているが、その経験を『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善1995年刊)としてまとめている

            COP26を軽視する岸田首相、後退が懸念される日本の気候変動対策  『カーボンニュートラル革命』に寄せられた読者の感想

             自民党総裁選に出版時期が重なった『カーボンニュートラル革命』 の感想が多く寄せられてきています。本書は2050年カーボンニュートラルの試金石である2030年に向けてエネルギー政策、そして日本の製造業をどうするのか、直近のCOP26を迎えるにあたって政治、政策、問題の流れを整理して解決策を提示しています。永田町からは「エネルギー問題のバイブルとして使わせていただきます」、電力業界からは「まさか業界外からノンファームとかN−1電制とか出てくるとは」といったコメントをいただいてい

            2001年9月11日火曜日が21世紀の世界史のなかでどんな転換点となるか、誰が想像しただろうか。

            「いい人がニッポンを駄目にする」 二〇〇一年九月十一日火曜日が二十一世紀の世界史のなかでどんな転換点となるか、誰が想像しただろうか。この日、台風十五号が関東地方を直撃し、早朝から激しい風雨が吹き荒れていた。  ──九月十一日午前中、官邸の大広間で全国都道府県知事会議が開かれた。高速道路問題は知事たちには生命線に等しい。日本道路公団が建設する高速道路は郵便貯金などからの財政投融資と利用者から徴収する通行料金によって賄われる。国費も三千億円投入されている。地方の財政的負担はない。