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シニアになって働く意味を考える⑲ ~シニアは心のコンシェルジュ(管理人さん)~

定年前後のシニアに「働く意味」についてインタビューした記事です。一人一人のインタビューを積み重ねて、「働く意味」のスペクトラムを描けたらいいかなぁって思っています。
今回はインタビューではなく、“モダンエルダー”との雑談です。


Aさん(74歳)とじっくりお話がしたかった理由

 数か月前に「モダンエルダー(チップ・コンリー著)」という本を読みました。この本の「成熟を再び人々の憧れにすることができたらこの世界が変わる」という短い一文を目にした時、頭に浮んだ人がAさんでした。ちなみに、この一文は、シニア(年長者)における会社組織での仕事の役割に関する文脈で出てきたもので、引退後のことではありません。
 この本の内容については書きませんが、“モダンエルダー”とは次のような人物を言います。「雑多な情報の中から注意を向けるべき課題をとっさに見分ける、周囲の期待を気にしない、無駄話を楽しめる、奉仕の心、答えよりも優れた質問をする」
(本からの正確な引用ではなく思い出しながら書いているため、私のバイアスも入っていると思います。手元にその本はもうないので)

インタビューは勘弁、ランチで雑談ならOK

 現在(2023年8月時点)74歳のAさん(男性)とは、7年ほど前にある運動クラブで知り合い、そこで2年間ほど運動仲間として楽しくお付き合いをさせてもらっていました。Aさんがそのクラブを退会してからも、LINEで交流していたこともあって、今回「シニアの働き方」についてのインタビューをお願いしてみました。
 「これ(インタビュー)ばっかりは勘弁してください」との返信が返ってきてしまい、「(2020年3月以来の)ランチでもしながら、久しぶりの雑談でもどうでしょうか?」とのお願いに快諾いただけました。

Aさんの経歴はこんな感じ、スゴイんだけど、聞きたかったことは別

 Aさんの経歴については、断片的にしか伺っていません。脱サラ後会社を立上げ、60歳過ぎまで経営を続けられ、主業務は別会社にして後進に譲られる。Aさんにしかできない残った業務(席でパソコンみて新聞読むだけと謙遜されていましたけど)を71歳まで続けたのち、そのAさんだけの業務会社を整理・廃業されました。(小さな会社でもたたむのは大変で2年ほど要したとか、本筋に関係ないので割愛します)
 仕事引退後は、週6日のテニス(キャリア40年)をされ、週3日の座禅(キャリア20年)だそうです。(これはこれでスゴイ!)
 Aさんの職歴は大変魅力的で、その内容を聞いてみたいとも思いましたが、私が知りたかった事は別にありました。なかなかうまく言えないのですが、Aさんとお話すること自体が有意義な感じがするんです。私自身の仕事や人生に役立つアドバイスをもらいたい訳ではなく、あの本「モダンエルダー」の事を思い出すからです。

Aさんって、“モダンエルダー”みたいな人だと気づく

 Aさんとの会話の中で、「(主業務からの引退後も)会社や会社関係の若手が特に目的もなくしゃべりにくる、ランチをたかりにくる」とか、「座禅会でも、(そのお寺の和尚さんがいるのに)若手から何やらいろいろ話しかけられる」とAさんは言うのです。
 変化が小さく安定していた時代においては、シニア(年長者)の積み重ねてきた知恵や経験は働いている若い人にとっても大切なものだったと思います。しかし、イノベーションの激しい現代は、年長者の経験や意見が軽んじられる傾向があるのではないかと思います。(傾向どころじゃなく、はっきり「おっちゃんいらない」みたいな風潮もあったりするでしょ?)
 ところが、若い人がシニア(年長者)の話を聞きたがっている!AIの時代が始まろうというのにです。

モダンエルダーとは(著者のイメージでは)

 シニア(年長者)から正解を聞きたいとか、具体的なアドバイスを求めているのではなく(そもそも期待されていないと思います)、若い人はシニア(年長者)に“心のコンシェルジュ”的役割を期待しているのではないかと思います(こんなようなことが、あの本にも書かれていました)。
 しかも、Aさんはこうも言われていました「何かを達成するとか、誰かと競争するとか、そんな気持ちはないし、働けていたことが気持ちよかった。若い人との無駄話は楽しかった」
 変化の激しい時代の中、不安や悩みのある若手にとって、このようなシニア(年長者)が会社の中にいることは、組織にとっても必要なことではないかと。つまり、私が言いたかったこと、Aさんに聞いてみたかったことは、このことだったんだと思い至りました。

テクノロジーが進めば進むほどシニアの存在は貴重?

 シニア(年長者)はもはや100%でなく、たとえ60%の情報でもそれなりに判断ができるし、俯瞰的な立場で無駄話も楽しめる。共感もいとわず、時には触媒的な質問さえも投げかけてくる。そしてもとより若手にとってシニアは競争相手でもない。
 こんな像をAさんに感じたようです。私もシニアの一人として、Aさんのような役割も持ちながら働けたらステキだなぁと思いました。

後記:

 昨今の「働かないおじさん」論調にずっと違和感を持っていました。実際、私の周りにそのような方いないんですよ。とは言え、若い人と競争するより、いろいろな年代(男女も)をミックスすることで、みんなが楽しく働けると創造性や生産性が高まる気がします。そして、今回の雑談中のAさんは、私の“心のコンシェルジュ(管理人さん)”でした。

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