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組織開発は採用から始まる 〜エントリーマネジメントの重要性〜

はじめに

この記事はVoicy Advent Calendar 2020の12日目の記事です。
前日は@miyukiaizawaの「RaspberryPI4をサーバーにして遊び倒す。その1」でした。
明日は@kikakuaykoumonの「感情価値向上のマーケティング活動・Emotional Value 〜人が動く時。それは、 情報ではなく、感情で動く〜」です。

さて本題。
今日はエントリーマネジメントの重要性について書こうと思います。

エントリーマネジメントとは?

エントリーマネジメントとは、簡単にいうと「組織の入口管理」という組織開発だ。

2000年代初期から使われ出している言葉だとは思うが、ここを主語にしたTipsは他の手法と比べて社会であまり共有されていない。

ここ数年私は旧来の採用手法から、エントリーマネジメントを意識した採用手法にピボットした結果、一定の成果が出たと感じている。

今日はVoicy Advent Calendar 2020の機会を頂いたので、自身が実際に行ったTipsと共に共有していこうと思う。

組織開発は採用から始める時代になった

ここ数年で経営における採用の重要性は大きく上がったが、その要因の1つに人材流動性の加速が挙げられる。

2019年、転職者数は過去最高の351万人を記録した。
ミドル〜エグゼの転職は年々活発になり、個の時代とも呼ばれている。

これにより企業と個人は相互拘束関係から相互選択関係になり、組織は人が入っていく長く大きい箱から、理念や価値観共感者の集合体に変化した。

また退職が増えることによって、関係解消コストの重要性が上がった。
関係解消コストは、関係構築コストの何倍も大変だからだ
入社前から退職時のことを考え、関係解消コストを下げることで生産性を上げる必要が出てきた。

これは逆に言えば、入社後の志向性変化による退職はウェルカムだとも言える。離職率が低い会社がいい会社という看板は完全に壊れた。

他にも様々な理由があるが、総じて経営において、事業ありきの人材だったのが、人材ありきの事業になった。
そしてそれに伴い、人材の立ち上がりの早期化が求められるようになった。

これらの解決手段としてエントリーマネジメントがあるのだ。
そう。採用は、組織の入口管理という組織開発の手段になったのだ。
組織開発まで見据えて採用活動を行わないといけなくなった

では私は具体的に何を行ったのか?

今日はその一例をステップ単位で紹介していこう。

求人作成 〜採用は課題解決の手段でしかない〜

皆様に問いたい。

求人を作成するときに「なんで採用するんだっけ?」と一度でも考えているだろうか?

採用は経営課題解決手段の1つでしかない。
このことを理解できていない人事は、意外にも多い気がする。

何かの課題があって、それを解決する手段として採用が存在するのだ。
そしてその解決手段は、採用以外にも多数ある。

教育や配置、制度で解決できることも多いし、そもそもマネジメントを効かせればすむことだってある。
もちろん人事の領域外で、モノやカネ、外注でだって解決できる。

採用はリスクでしかない。人件費はもっとも怖いコストだ。
出来るのであれば採用は避けた方がいい。

求人を作成する人事こそ、その求人が必要なのかを一番疑うことが大切だ。
他に代替手段がないかを常に考え抜く必要がある。

この「考え抜く」という行為がとても大切なのだ。

考え抜き、現場にもその視点でヒアリングを重ねた結果、採用が最適手段だとなれば、そこまでのプロセスで詳細な募集背景を理解出来ているはずだから。

応募要件は絶対にスペックから入ってはいけない。
募集背景を理解し、その求人が必要な理由から、課題解決の手法として応募要件を作ることが大切である。

ここがズレなければ、基本的に再現性が高い人材しか入社しない。

そしてここで決まった内容は、採用広報へのアウトプット内容や面接での確認ポイントなど、今後全ての項目に影響をもたらす。

求人作成は、エントリーマネジメントにおいて最も大切だと言える。

採用広報 〜採用したい人だけくればいい〜

採用広報という言葉が流行って久しいが、私は「広報」する時代は終わったと思っている。

広く報じて、色々な方に興味を持ってもらいエントリーに繋げることはもちろん大切だと思う。

ただ考えてみて欲しい。
そのほとんどをお見送りにすることを理解しているだろうか?

拒絶されるということは気持ちのいいモノではない。
そしてお断りする側の時間と精神も大きく削られる。

自ら大量の時間を使って疲弊しながら、只管アンチを製造するなんて辛すぎる。

では広報をしなくていいのか?
これはもちろんNOで、社会でイケてる認知はとっていきたい。

じゃぁどうすればいいのか?

要は広報した上で、採用したい人にだけエントリーしてもらえばいいのだ。
候補者に、自分自身ですり合わせて判断してもらえばいい。

つまりCXの一環として考えるべきであり、CX向上のための情報提供という目的で採用広報はすべきなのだ。

・会社のMindをnoteなどで経営メッセージとして出してスタンスを合わせる ・社内の雰囲気や文化を、Wantedlyなどで伝えてソフト面を合わせる 
・求人票をとにかく細かくして、ハード面を候補者に理解してもらう

出来るだけ細かく、スピーディーに、タイムラグなく、盛らずにファクトベースで、臨場感が伝わるように、広報することがエントリーマネジメントにおいては大切だ。

スタンスや志向が違う方がそれを見て離脱するように仕向ける。
採用したい方には入社後の擬似体験を体感させてアトラクトする。

採用広報は採用のスタートポイントであり、エントリーマネジメントにおける最初で最大の対外ポイントである。

一次選考 〜アトラクト不要論〜

皆さんは面接時に評価以外は何をしているだろうか?

恐らく多くの方は、自社のストロングポイントを語ったり、候補者の気持ちを盛り上げたり、つまりアトラクトに時間を使っており、多分KPIは次回選考への接続率をみているのではないかと思う。

そんな中、私はKPIを「一次面接後辞退率」にしている。
エントリーマネジメントにおいては、いかに「合わない方は気持ちよくご自身から辞退していただけるか」が重要だからだ。

これを叶えるためには、一次面接で見るポイントを「再現性」にすることが大切だ。

志望理由等は聞かず、過去経験や退職理由、転職軸や希望を確認して、候補者が会社を評価できるように軸に沿ってありのままの事実を伝える。

つまり、面接の場を「評価する場」ではなく、
両者の軸や希望を「すり合わせる場」と定義するのだ。

勘違いしないで欲しいのは、もちろんアトラクトはする。笑
ただそれは本人の軸や志向に沿った事実の加工であり、盛るという行為は絶対にしないことが大事だ。

エントリーマネジメントにおいて、一次選考は最初の対面接触ポイントであるが故に、ここで一番期待値調整をあえて行うべきなのである。

二次選考 〜同じ時間、同じ場所で、同じ空気を吸う〜

採用人事の価値は「いかに会社において有益な人材を獲得できるか」でほぼ決まるが、その有益性の判断手法は基本的に面接に限られており、長い間この面接という学問が深く研究され、構造化され、磨かれてきた。

ただ、なぜ面接に限る必要があるのだろうか?

もちろん候補者やエージェントなどのパートナー、そして社員への負荷を考えれば面接が最適であることは理解している。

が、だからと言って最善を捨てる必要はない。
何故なら面接という場で見れることには限りがあるからだ。

面接コミュニケーションとワークコミュニケーションの差
面接アイスブレイクとデスクサイドコミュニケーションの差
「この仕事出来ます」の「出来る」の物差しの差

イメージが100%共有されることは絶対にない。
口頭コミュニケーションはどうしても感覚的で齟齬が生まれてしまうから。

これらの解決のために効果的な手法が、ワークサンプルテストだ。
体験を通せば、限りなく99%に近づけることができるから。

1日体験勤務で実際に一緒に働くことにより、社風風土を肌で感じてもらい、 デスクサイドコミュニケーションやワークコミュニケーションをとることで 仕事上での感覚や人間関係も体感・理解してもらう。

私たちも採用評価はするが、どちらかというと候補者に見定めてもらう時間として考えている。

やはり同じ時間、同じ場所で、同じ空気を吸わないと分からないことは多い。エントリーマネジメントでは深く理解し合うことが大切なのだ。

内定 〜内定者にも覚悟を問う〜

内定が出ると、候補者は気持ちが舞い上がってしまい、すぐに決断をしてしまったりする。
また、決断に悩むと思考が本質から離れていき、複数社の中で無意識に判断しやすい待遇などハード面の軸で決断をしてしまう。

こういった決断をされてしまうと、入社後お互い不幸になる可能性が大きく上がってしまうが、これを解決するにはオファー面談で本人にも覚悟を問うことが大切だと考えている。

ご本人の志向や軸に対して、自社が合う点、そして合わない点や希望に寄り添えない点、提供できない点もしっかり伝え、そして転職軸の本質からずれないようにエスコートする。

それでも入社しますか?

という問いかけから発生する期待値調整が、入社後に効くのだ。

しかも面白いのは、これにより志望度が実は上がるということ。

「そこまで考えてくれたんだ。そこまで言ってくれるんだ。」という信頼関係は、入社後にも大きく役立つ。
(実際私は内定承諾率で90%を切ったことがない。)

内定時から企業と候補者の力関係が逆転すると言われるが、エントリーマネジメントにおいては、逆にここが一番候補者に詰め寄るタイミングなのだ。

まとめ 〜エントリーマネジメントはリボン図全体に影響を与え、その効力は大きくなっていく〜

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ご紹介してきた手段は一例であるが、エントリーマネジメントにおいて大事な共通のポイントは

・すり合わせ
・対等な関係
・再現性

であり、決して難しいことではない。

ただこれまでの採用の常識的なスタンスからは大きくピボットが必要なことも多く、勇気がいることもあるだろう。

但し間違いなくここで与えた影響は、入社後にその効力をどんどん大きくする。

実際私はエントリーマネジメントによって、同意ではなく合意の関係が社員と生まれ、こういった成果が生まれている。

・前職で採用人数を2倍の200名にしながら、離職率は4%までダウン。
・現職で従業員数を16名→40名にしながら、離職率は67%から7%に。
・3点前後を行き来していた前職の口コミサイトスコアは、4.22に。
 ランキングも日本TOP100にランクイン

入りたい人材を選ぶ行為を採用とはもう呼べない。
採用とは、採りたい人材だけを口説くことである。

もし興味をもたれたら、一度試してみてはどうだろうか?

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