ビジョンを示し、人を動かし、熱狂を作る力
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ビジョンを示し、人を動かし、熱狂を作る力

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あなたの持つ可能性を最大限に開発、実現することで、もっと自分らしく生きる。
世界がひろがるアカデミー」校長の倉本美津留が聞き手となり、ゲームクリエイター 松野泰己のビジョンを示し、人を動かし、熱狂を作る力に迫る。

倉本さん✕松野さん

──ファンに愛されるゲームを生み出し続ける、松野さんのルーツを教えて下さい。

(松野)
大学時代に大ヒット作『ドラゴンクエスト』が登場して、一躍ファミコンブームの中でロールプレイングゲーム(以降RPGと略す)というジャンルが広がりました。
当時、ファミコンゲームのは『スーパーマリオブラザーズ』に代表されるアクションゲームが中心でしたが、『ドラゴンクエスト』以降、このRPGというジャンルが席巻することになります。

ゲームの開発会社へ入社後、自分の企画を商品化できるとなったのが1991年だったと思いますが、その頃、市場はすでに飽和状態になっていました。飽和状態というのは、売れる商品の大半はメジャータイトルの続編か、版権キャラクターものばかりだったという意味です。

個人的にはシューティングゲームとか、アクションゲームが大好きなのですが、ノウハウのない新興メーカーにとって開発するのも難しければ売れるという保証が何もないジャンルでした。一方、RPGのような思考型ゲームは『ドラゴンクエスト』の大ヒットにより、二番煎じのような商品がたくさんありました。

ですので、新興メーカーとしては他社と違うことにトライをしない限り、レッドオーシャン化しつつあった家庭用ゲーム市場で生き残ることはできないと考えました。そこで、さらにニッチではあるがマニアックなファンがいて、これから市場の一角を成すであろうシミュレーションRPGの新規タイトルに開発着手することにしました。このタイトルは恵まれたことに任天堂社様の後押しもあり、最初のヒット作となりました。

松野さん1

──二番煎じを追いかけて行くよりは、常にパイオニアでいるべき。

ニッチを攻めていくっていうのは、実は今もあまり変わっていません。たしかにニッチ路線は常に新しいものを提供し続けることができるのですが、一方、市場も狭いという欠点があります。ただ、かつては日本だけで勝負しなければならなかったのが、今は幸い、世界を相手にし易くなりました。各国のニッチを集めるとそれなりに市場になるわけです。

決してマニアックなものがいけない訳じゃなくて、いかに各国のニッチな方々にアピールするか、プレゼンするか、というところさえしっかりできていれば、商品力はあるはず。そこから、ムーブメントになる可能性がないわけじゃないので、二番煎じを追いかけて行くよりは、常にパイオニアを目指して「新しい遊び、ゲーム感覚」を第一にしていきたいと常々考えています。

(倉本)
当時ここまでインターネット業界が大きくなってなかったという所で、ニッチなところを松野さんが目をつけて、ニッチをメジャーに持っていくことを経験されたというか、ニッチをメジャーにしていく努力があったわけですよね。

(松野)
はい、たまたま、その路線が上手くいったという感じではあるんですけど。たしかにニッチに取り組むというのはリスクがあります。ですが、ニッチも二種類あって、市場として先細りしているニッチと、まだ開拓されていないニッチがあるわけです。後者であれば、その鉱脈を掘り当てると成功は大きいですし、それをファンと共に成長させるという手法とセットでやることで拡大させることができると思います。

(倉本)
だからやっぱり、角度が違う感覚を持ち込めるんだと思うんですよ、そこには。やっぱり大好きな人が集まってきたら、すごく出来ていくんですけども。好きで好きでって。好きな人以外は寄せ付けないっていうことにどんどんなっていくんですよ。好きな人の量を増やすってことはできるんですけども。全然違うところの層の開拓はできていかないっていうのは、そこまでやっぱり欲していない、でもなんかこう、なんか面白いことを生めるだろうなという感覚を持ってる人が来た方が絶対に良いと思うんですよね。

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──昔からあるものが、着眼点を変えるだけで大ヒットゲームに。

(松野)
今、2000年、2010年代に入ってゲームの世界の市場はソシャゲ(ソーシャルゲーム)が席巻しています。最近だと『ウマ娘 プリティダービー』(Cygames)の大ヒットが記憶に新しいですね。競馬の馬を擬人化した育成ゲームで、米調査会社「Sensor Tower」が発表したランキングで第3位に入りました。日本語のみでの展開にもかかわらずこのランキングですからね。売上高は未公開ですが100~200億円と推定されており、その人気はうなぎ登りです。

(著作権関連は)愛情ある扱い方しないと総スカン食らうんですけど、今回プロデュースがとても上手で丁寧でしたね。ともすると競馬=ギャンブルなのでネガティブなイメージを抱かれそうなのですが、ゲームではあくまでもスポーツとして描いています。擬人化されたウマ娘達が一生懸命に努力してレースでの勝利を狙うという点は普通のスポーツと変わらない。また、引退した馬や特にレース中に事故で安楽死させられた馬も登場しますが、こうした名馬たちに幸福になるかもしれないifストーリーを提供したところも高評価の要因のひとつですね。哀しい最後を迎えた名馬たちをもう一回育ててあげられるというところにゲームファンではない競馬ファンも飛びついた。このあたり、目の付け所がお上手だったと思います。

ただ、ソシャゲの大半はゲームのベースの部分が、80年代、90年代以降のゲームから大きく変化していません。ソシャゲを作られている方から、「在るものをアレンジすることはできますが、ゼロからもの作るのは無理なんです」と聞くことがあります。そこも踏まえた上で、どこでオリジナリティとパイオニア精神を持ち込めるか、これがないと次世代へ繋がるゲームを生み出すことはできないと考えています。実際のところ、とても難しいですし、私もなかなか成功はしませんが(笑)

松野さん2

──最後に、ニッチを攻めていくための、パイオニアでいるための秘訣を教えて下さい。

(松野)
どの業界も同じだと思いますが、キュレーション能力でしょうか。

多分皆さんお分かりかと思いますけれど、情報って今、インターネットの世界で氾濫していますよね。役立つ情報からそうでないものまで。その情報の中で、これは今後使えるかもしれないとか、ウケるかもしれないとかをピックアップしていく、それが大事だと思っています。そうした氾濫する情報の中から必要と考えられる最小限の情報をピックアップする能力を常に磨いておくと言い換えてもいいかもしれません。

たとえばそれは、ゲーム業界の中からの情報っていうのはもう古いんですよね。古いというのは駄目だというのではなく、すでに誰かが挑戦している、手垢が付いているという意味です。ゲーム業界はアウトプットからアウトプットを作ってもまだまだビジネスになるので、 それはそれで全然良いのですが、新しいものをやろうってなった時に、ゲーム業界のアウトプットを見てもしょうがないというわけです。

では、どこを見るのかというと、映画やコミック、書籍、音楽といった他エンタメ業界の最新情報を拾いながら、これはゲームに使えるかなとか、逆にここに対する観客の反応はゲームでも同じだろうか?といった感じで応用するようにしています。
もちろんエンタメだけではなく、ファッションだったりスポーツだったり。時には国際情勢も重要ですね。昨年の米国で起きたある事件をきっかけに拡大したBLMムーブメントは、当たり前ですがエンタメ業界にも大きな影響を与えました。ゲームに限らず常に情報を収集し、それらを分析するというのはやはり大切なわけです。ゲームだからオタク文化だけに詳しければよいというのでは新しいものを生み出せません。

あと大切なのは、自分の価値観だけで物事を量らないこと。たとえば、ヒット曲があったとして、その曲は自分の好みではないとします。だけどヒットしてるからには何か理由があると考え、その理由を分析する。こうすることで、視点を常にニュートラルにしておくという努力も必要ですね。歳を重ねるとなかなかこれができないわけですが、価値観をアップデートするのは難しくても、それを続ける努力は必要というわけです。

(倉本)
それを自分の仕事に投影するかしないかっていうところが、そこはもう、線を引いて別もんだからとするのか。それとも、そこは自分の興味あることは自分の仕事に取り入れて、パワーになるかといった感じがあるかどうかだけでも違いますね。

松野泰己

松野 泰己

1965年生まれ。 大学中退後、雑誌等のライターを経て、ゲーム業界へ。
ゲームデザインやゲームシナリオを中心にディレクターやプロデューサーなどを務めている。代表作「 タクティクスオウガ 」「 ファイナルファンタジータクティクス 」「 ファイナルファンタジーXII」など多数。

世界がひろがるアカデミー

世界がひろがるアカデミーとは、各分野で成功した12名の特別講師から、実体験、考え方、テクニックなど、このアカデミーだけの特別授業を1年間に渡って受講してもらうことで、あなたの可能性を最大化する力を身につけてもらうためのアカデミーです。
12人12色の授業から、日常で出会うことのできない学びや刺激を得てもらい、1年をかけてあなたの力を次のステージへと生まれ変わらせることを目的としています。 「感じる力」「考える力」「伝える力」をアップデートして、昨日までの自分には見えなかった世界へ踏み出してみませんか?

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