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2020年コロナの旅 2日目:人情とグルメの国、タイ

2019/12/18

旅行2日目。バンコク。寒い部屋で目覚めるも、時差もあって昼頃までベッドでゴロゴロしてしまった。外は暑く、あまり外出する気が起きない。しかしせっかくなのでアイが勧めてくれた寺院などいくつか観光してみることとする。

宿の門を出て、狭い路地を歩くと真みどりの水路に突き当たる。その脇のさらに細い通路を、子猫たちを踏まないように通り過ぎて中くらいの通りに突き当たったところに昨日のレディーボーイフライドチキンがある。その角を逆側に曲がると、セブンイレブンがあり、そこでは水などよく買い物をした。水は500mlで30円程度であった。

お腹がすいていたのでレディーボーイのおっさんからフライドチキンを買って食べつつ、昨日行ったカオマンガイ屋さんを訪ねてみることにした。

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果たして今回は空いていたので、早速カオマンガイを注文する。メニューはカオマンガイしかないらしく、数だけしか聞かれない。とりあえず1つ。茶はいるかと聞かれたので頼むと、女中さんが席まで来て金属のコップに細長い棒状の氷を詰めたところにウーロン茶のような香りの茶を流し込んだ。

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暑気の中これは非常にうまく感じた。ほどなくして運ばれてきたカオマンガイは、日本で目にするものと似てはいたが、米飯の上のゆで鳥の上にさらに何やら赤黒いゼリーのようなものが置いてある。

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聞くと鶏の血を固めたものだという。一瞬見た目とその概念にひるむが、これが非常にうまい。プリプリとした食感は歯切れよく、生臭さなどは皆無である。肉とともに食べると肉のジューシーさが増して感じられる。大変感銘を受けて食事を終えるとお題はたったの80バーツ、つまり当時のレートで250円程度なのであった。


腹ごしらえを終えて、バンコクの大王宮に行ってみることにした。特に気負いなく出かけたため海パンを履いていたのだが、男性は膝が出たズボンでは入内できぬようで(女性はさらに肌の露出を制限される)、100バーツ払ってタイパンツをレンタルするか、それに困った旅行客を相手に商売する、王宮入り口前にたむろするタイパンツ売りから150か200バーツ程度で購入するか選ぶことになった。タイパンツが実に快適そうに見えたため、観光客丸出しになることは嫌であったが購入することにした。穿いてみると果たしてタイパンツは日差しの強いタイではおそらく短パンの類よりも涼しい。

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満を持して入場口まで行ってみるとなんとタイ人は無料だが外国人は500バーツ(1500円ほど)もするという。なるほど面白い戦略である。これだけのお金があればバンコクなら7,8食ご飯が食べられてしまう…と思いつつも、タイ「王国」にきて王宮にい挨拶に行かないのはどうかと思い、入ることにした。


地図を受け取り中に入り、まずその広大さに呑まれる。はやくも500バーツは伊達でないと思い知らされる。入って間もなく目にする巨大な宮殿の建物の数々と寺院、庭園の壮麗さは、驚嘆に値する。壮大な建築物は、しかし近寄ってみると細かい極彩色の玉細工が施されている。豪奢たること日本の枯れた風情の城や宮殿とは似ても似つかぬ。

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ハヌマーンと思しき像と獅子像の多さも興味深かった。金が多用されていることにも気づいたが、大変センスが良くやり過ぎ感が薄い。金閣寺などよりも上品であるとさえ感じた。

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一通り王宮内を見学し、衛兵と写真を撮るなど人並に楽しんで、満足して外に出る。すると、出口のところで係員に外のバスに乗るように勧められた。どうやら王宮の入場券でタイの伝統の仮面劇を見られるという。
シャトルバスに乗り、他の観光客らとともに劇場に向かう。劇は王宮見学のちょっとしたおまけの領域に到底収まりきらぬ素晴らしいものであった。華やかな衣装に身を包んだ踊り子たちの美しさにも息をのんだが、主人公のハヌマーン(やはり王宮のいたるところで見たあの像はハヌマーンであったらしい)の身体能力に感動する。

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公演が終わると、バスで再び王宮へ返してもらえる。王宮のところからは歩いて帰ることにした。


途中でクレープのような謎の食べ物を売る屋台があったので並んで買ってみることにした。これも10バーツであった。ごく薄いクレープに卵とひき肉とネギが入っている。自分の番が来てお金を払おうとしたが高額紙幣しかなく、屋台のおかみさんは申し訳なさそうにお釣りがないので引き取ってくれと言う。こちらの落ち度なので頭を下げて去ろうとすると、後ろで並んでいた紳士が「待ちなさい」という。彼は財布から10バーツ出すとクレープ屋さんに渡し、私にクレープを作るように言ってくれたらしい。私は恐縮して何度もその紳士に礼を言ったが、彼はいいからいいから、と言った風であった。旅先でこういうことがあると本当にうれしいものである。自分も善きサマリア人でありたいと改めて思わされる。クレープはおやつとしては申し分ないものであったが、何より紳士の気遣いによってタイの忘れられない思い出となった。

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クレープをかじりつつウロウロしていると道端に座って談笑していた老人たちが一斉に立ち上がって私に何か言い出した。一瞬気圧されたが、皆私の背後を指さして何か言っており、振り返ってみると財布を落としていた。

昔高校の地理教師が「仏教国の人々は優しい」と仰っていた。当時は「ほんまかいな」と思うばかりであったが、これはそういうことなのだろうか。ベトナムとの差は何に起因するのだろうか。経済の発展度合い?それもあるかもしれない。2019年度の一人当たりのGDPはベトナムが25万円ほど、タイが75万円ほどである。しかし日本は400万円だが人心の豊かさにおいてタイをそこまで圧倒的に凌駕しているだろうか。タイは何度も訪れて観察したい国である。また、東南アジアの他の国も訪れてみたい。


しばらく歩いてお腹がすいたので道端の屋台を試してみる。ベトナムではとてもこういった屋台で食事する気にはならなかったが、すっかりタイに心酔した私は100バーツのクリスピー豚餡掛けご飯を食べてみることにした。比較的高価だったが、皮目がカリカリに揚げられた豚肉は非常にうまかった。みたらし的な味付けが苦手な私には餡がすこし甘かったが美味。

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さらに街歩きを続け、またぞろお腹がすいたので宿の近くのカレー屋のようなところに入ってみた。肉の汁炒めのようなものを選んで80バーツ渡すとご飯に汁と肉がかけられて出てきた。これが激烈に辛くて非常に食べきるのに難儀した。食べ物を無駄にはしたくないので完食したが、カオマンガイに忠誠を誓った瞬間であった。

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宿に帰ってしばらく休憩したのち、夜のカオサンロードでまたもや果物のスムージーを飲んだ。宿に再び帰ってから、テラスの西洋人たちとロビーのアジア人たちと少し話した。テラスとロビーでそのような人種による棲み分けができているようであった。

ベッドに戻り、スマホでSNSを開く。旅行先の人や次に訪れる場所の人にSNSで声をかけることで現地の人と交流したり、街を案内したり、時には家に泊めてもらったりという旅のスタイルが確立しつつあった。このことが後に、私の人生を変える大いなる悲劇を招くことになったのだが、それはまだ1か月と2日後のことである。


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次回予告

2019年12月17日に始まった私の世界旅行。1年越しに当時の出来事を、当時の日記をベースに公開していきます。

明日はタイ古式マッサージに癒され、涅槃仏に圧倒され、暁の塔を愛で、そしてホステルでの晩餐を楽しんだ日です。


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