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【イナカの家と住人のこと(2024)】32・神鳴り、命の水、旅立ち

父が心地よくいられるように…

そのことを第一に、
何につけてもまず本人の希望を聞いて事を行うようにしました。


制限がありほぼペースト状に近い食事でしたが、

何が食べたい?と聞くと甘い物が多く、
巷では最後の晩餐には何が食べたいかみたいな質問もありますが、父は本当に甘党なんだな…と。(笑)

幸いスイーツは柔らかいので詰まりの心配がなくそのままの形で出してあげられました。
久しぶりに食べたい物をその形のまま1人分堪能することができた父は、心から「おいしい」と満足していました。

その話を先生(医師)に伝えましたら、食べ物の形があるかないかは患者の食欲に大きく影響するとおっしゃっていました。

ペースト状の食事に寂しそうな父を感じこちらも身につまされていたので、自ら食べたいと思う物がうかびそれを口にしている姿を見ることができたのは本当にありがたかったですね。



時は、

絶えず動いています…

父はしだいに食すことがなくなり、水分もとる量が減っていきました。

そして声を出すのが大変になってきた様にも感じましたので、父の動向に気づけるように夜も側にいることにしました。


そんなある日、
定かではないのですが姉とふたり父の床を整え終わったときだったでしょうか、父の顔もとに揃っていた私たちに向かってありがとうとの気持ちからか父が手を合わせてくれたときがありました。

私たちにとっては簡単な作業でしたから、その父の動作にびっくりしてあたふた… (笑)

一瞬の何気ないやり取りでしたが、なぜかそれが気にとまってしまう出来事となってしまいました。


ケアにきてくれた訪問看護師さんから、
身体の機能が低下しはじめ脈が取れにくくなってきたので訪問回数を増やしますと伝えられました。

これは父が宇宙にもどる時が近くなったことを意味し、残念なことですが見送る私たちも心の準備をする時期に。


あと何日いっしょにいられるのだろう…
どのくらい父の状態を見守らせてもらえるのだろう…

寝返りはうっていましたがほとんど目を開けなくなっていた父と、静かにイマを共有しながら時を共にできる有り難さをかみしめていました。


そんな至福の時を数日いただき…

事は次にむかって動きだしました。


その日は晴れてとても穏やかで過ごしやすい秋日和。


看護師さんがケア日で朝一番の訪問。

その時なぜか魔が差した様に私の自我が顔を出し、父を巻き込むことをしてしまいました。

それは安静でいたいであろう父に着替えを。
予想以上の負荷がかかってしまい、いらぬ苦痛を与えることになってしまいました。

またも後悔先に立たず、自分の不甲斐なさに直面。


朝から娘の自我に巻き込まれ災難にあった父は何とか落ち着きを取りもどしてくれ、その後は変わらず寝返りを打ちながら寝ていました。


お水を飲む意思はあっても気持ちが続かず立ち消えになることも出てきたので、直接口に数滴挿してあげたところそれがきっかけとなり少しまとまって飲むことができました。


雑事をすませ父のかたわらでのほほんとしていた時のこと、ふと父の状態に対して意識がおよびその瞬間に思いが…

父の流れを私が止めている?
父は私を待ってくれているのでは?と。


さかのぼることその数日前、
心の準備もかね父や自分のことと共に、コトタマに関しても整理していました。
実はその時父を通じて学ぶこと、父との共同作業は終わりを迎えていたんですね。

ですがその時にはそのことに気づかなかった。
なのでそのお知らせが、のん気にのほほんとしていた時にやってきたのでした。

意表をついたタイミングに一瞬ハッ!?としましたが、スッと腑に落ち、諸々精査し状況が確認できました。


そしてその流れで、

お父さん待ってくれてありがとう。必要なことは全部気づけたからもうお父さんのタイミングで大丈夫だからね…というような内容のひとつの想いをイマに発していました。

というか発するや否や、
耳を突き破るほどのとどろきが(一音)起こりました。

まさにイカヅチ、神鳴りでした。

それによって父に動きが起こることが分かり、
受け入れられすべてを宇宙にゆだねました。


午後はいつもの穏やかな時がもどっていました。


姉が仕事からもどり午前中にあった話を伝えたところ、私の耳に響いた雷鳴を姉も仕事場で聴いていました。
私の内だけの事ではなかったんですね…


夕方の父は落ち着いた様子でしたのでしばらくは一人ゆっくり過ごしてもらうように戸をしめ、私たちも気にすることなく夕食の時間に。


ゆっくり食事をすませ父のところにいってみると、
何か様子がちがう…

父は、
ひとり静かに宇宙に・・・


昼間のお水が後押しとなったのでしょうか…

一人の時間ももうけられ…


誰の気も受けずに宇宙にもどりました。

個が確立されていたとても父らしい最期でした。


私たちは午前中の神鳴り事のおかげで、心乱れることなく父の旅立ちを受け入れることができました。


まさに命の水…

私が父にしてあげられた最後のこととなりました。



ーーー
こちらの地域は7月盆。
今日は母の誕生日(米寿)でもあったので、家族で霊堂に行ってきました。


では、またね。



*[画像]
ウォーターマッシュルーム


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