インタビュー
「後悔していますか?」
「していません、私に出来ることはしました」
「本当ですか?」
「はい、彼の周りの同僚にその願望があることを伝えました」
「それだけですか?」
「それがその時の私に出来る精一杯の事でした」
「何故そうなったと思いますか?」
「金銭的不安やパンデミックに襲われて仕事も上手く行かなかったことや私が他の男の子を妊娠したショックもあるでしょうが分かりません」
「他の男性の子どもを身篭ったんですか」
「はい」
「彼に悪いとは思わなかったのですか?」
「思いませんでした。彼にも他の女性との間に生まれた子どもは居ましたし、金銭的に彼との子どもを作ることは難しいと感じました」
「そうですか、貴方はお金で相手を選んだのですか?」
「はい、子どもを育てる為には必要なので、それが全てでは無いですが」
「彼はショックを受けていましたか」
「受けていたはずです。怒られもしました。そんな愛人になるような真似をして、と堕ろす話も出てきました」
「でも堕ろさなかった?」
「はい、計画的妊娠だったので」
「それなのに罪悪感に襲われているんですね」
「はい、まさか死ぬとは思っていなかったので」
「自殺でしたね」
「ええ、首吊りでしたね。第一発見者は警察の方のようです」
「それを知った時どの様な気持ちでしたか」
「あまり覚えていませんがよく一人で泣いていました。でも冷静に彼の死に顔を見たくなりました」
「見れましたか?」
「はい、家族葬にお邪魔しました。彼の子どもと元奥様に初めてそこでお会いしました。会ったのはそれきりになりましたが」
「見てどう思いましたか?」
「皮肉にも綺麗でした。」
「お話を聞かせて頂いてありがとうございました。最後に何か言いたいことはありますか?」
「ありません、ありがとうございました」
彼の遺書は無かった。私は裁かれていないだけの犯罪者だ。私は今でも夢に出てくるほどに罪の意識に苛まれている。
「すみません、あと、もう一つ聞きたいのですが」
「はい?」
「もし、彼が生き返ったらどうしますか」
「どうもしません、生き返ったら気持ち悪いです」
「もしもの話です」
「きっと彼に生きることを強いるのは苦痛でしょうが生き返ったのなら自分で選択するでしょうね。もう一度死ぬのか生きるのか、生きることを選んだのなら私に出来るアドバイスを伝えるだけです」
「もう一度付き合うことは?」
「しつこいですね、死んだ時には別れているのでそれは変わらないです。」
「それでも関わるんですね」
「放っておくことは私が辛いので出来ません」
「貴方は自分の事を考えていらっしゃるんですね」
「みんなそうじゃないですか?もういいですか?」
「はい、お時間取らせてしまいましたね」
実際に亡くなった元彼に捧ぐ
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