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rakugaki_45「美術館へ行こう!【東京編】東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(後編)

東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(現:SOMPO美術館)

私の現存する記録の中で、現在まで「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」の企画展に出かけたのは11回です。
これは今まで鑑賞してきた「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」の感想ブログ(後編)となります。


6)2013年4/20-6/23「オディロン・ルドン ー夢の起源ー」

オディロン・ルドン ー夢の起源ー

フランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドンです。
実は私は昔、象徴主義が苦手でした。
そのため、ギュスターヴ・モローやオディロン・ルドンをしっかり観ることがなかったんです。
食わず嫌いのようなものですね。
合わないような気がすると敬遠していたんです。
でも美術鑑賞を再開したこの4年間、昔苦手意識があったマルク・シャガールやバーン=ジョーンズも楽しめるようになりました。
なので、観る前に真っ白な気持ちで観ようと思いました。

損保ジャパン東郷青児美術館で開催される本展覧会は、フランスのボルドー美術館、ならびに日本における最大のルドン・コレクションを所蔵する岐阜県美術館の全面的な協力のもと、油彩、パステル画を含む約150点の作品を一堂に展示し、画家オディロン・ルドンの「夢の起源」をたどります。

入口近くの部屋は初期の作品です。
写実的な絵ですね。
何故か執拗に木を描き続けています。
いろんな形の幹や枝。
木の有機的な形に魅せられたのでしょうか?

やがて「黒の画家」と呼ばれる時代がきます。
ちょっと2010年にBunkamuraで観たブリューゲルを思い出しました。
謎の目玉の生き物?が大量発生です(笑)
これらは何を表現したかったのでしょうか?
夢と現実の狭間、奇妙な空間に迷い込んだみたいです。
ポスターやハンドビラにも使われている「笑う蜘蛛」も面白い。

後半、淡い色鮮やかな世界に変貌を遂げていきます。
「花」綺麗ですね!
そしてルドンが1916年に亡くなったとき、最後までイーゼルに載せられていたという、未完の作品「聖母」。
とても優しい表情をしています。

いや、やはり食わず嫌い。
全くルドンの何も知らなかったことが良く分かりました。
やはり百聞は一見に如かずといいますか、自分の目でしっかり観て理解しないといけませんね。


7)2013年7/9-8/25「<遊ぶ>シュルレアリスム ー不思議な出会いが人生を変えるー」

<遊ぶ>シュルレアリスム ー不思議な出会いが人生を変えるー

先月「ルドン」を観たばかりの、損保ジャバン東郷青児美術館です。Bunkamura並に通っているような気がします(笑)

本展は伝統的な美術の枠から脱けでて、自由な表現をめざしたシュルレアリスムの〈遊ぶ〉姿勢と精神を共有する展覧会です。
シュルレアリスムとは、第一次世界大戦直後のパリにおこり、やがて全世界に波及していった20世紀最大の芸術運動。
夢や無意識、非合理の世界に目を向けることで、現実の新しい見方や生き方を探り、伝統の枠から自由な芸術表現をめざしました。
〈遊ぶ〉というキーワードは、この運動の参加者の精神のありかたを示しているそうです。
伝統的な美術の枠から脱けでて、自由な表現をめざしたシュルレアリスムたちは、実際にさまざまな集団ゲームを日々おこなっていたばかりでなく、遊びに似た手作業から、驚異にみちた作品をつくりつづけました。
そこにもまた、日常の現実のうちにひそむ本当の現実、「超現実」への出口があると考えられたのです。
オブジェやコラージュ、レイヨグラフやフロッタージュやデカルコマニー・・・新しい身近な方法によっても、伝統や慣習にしばられない「遊び」の精神で、偶然のもたらす驚異や、たがいに無関係なイメージの結びつきによる意外性などに「不思議の美」を見いだし、「遊び」にも似た手作業を通じて、斬新な作品をつくりつづけました。
本展は国内外のコレクションから、多彩な作家の絵画、写真、彫刻、オブジェのほか、雑誌・書籍などの資料をふくむ約200点を一堂に展示しています。

ルネ・マグリットにジョルジョ・デ・キリコにサルバドール・ダリにポール・デルヴォーに・・・、よく見聞きする名前が列挙されます。
マルセル・デュシャンの「L.H.O.O.Q」なんかレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」の口上とアゴにヒゲを描いただけ(笑)
気に入ったのはアレクサンダー・コールダーの「角ばった肩のいきもの」などのオブジェ群。
きっと作るのも楽しかったんじゃないかなぁ~と思いました。

見る側も遊び心がないと楽しめない・・・そんな美術展だなと感じました。


8)2013年9/7-11/10「フィレンツェ ピッティ宮近代美術館コレクション トスカーナと近代絵画 もうひとつのルネサンス」

フィレンツェ ピッティ宮近代美術館コレクション トスカーナと近代絵画 もうひとつのルネサンス

本展はピッティ宮近代美術館の絵画約70点によって、フィレンツェとトスカーナに焦点をあてたイタリア近代絵画の展開を日本で初めて系統的にご紹介する美術展らしいです。

ピッティ宮は、16世紀から20世紀初頭までメディチ家をはじめとする歴代統治者の住居でした。
近代美術館は、ピッティ宮の最上階である3階に1924年に開設され、主にトスカーナの18~20世紀の絵画と彫刻群を収蔵しています。
なかでもマッキアイオーリについては、運動を支援した批評家ディエーゴ・マルテッリが1894年の死去に際して遺贈した初期の重要な作品群をはじめ、代表的作家の作品を網羅しているそうです。
マッキアイオーリに関しては、2010年1月に東京都庭園美術館に「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」という美術展を観に行って、大変楽しかった憶えがあります。
これは感慨深くて楽しみです。
今回は「Bunkamuraザ・ミュージアム」と同じぐらい足繁く通っている、「損保ジャパン東郷青児美術館」です。

それにしても、土曜日だというのに激空き!
もともと鑑賞しやすい美術館ではありますが、この空き具合にはちょっとびっくり。
ま、かなり地味なタイトルの美術展ですし。
で、実際、かなり地味な展示内容でした。
ちょっと目を引いたのはアントニオ・チゼーリの「キリストの埋葬」。
キリストを運ぶ人たちの、悲壮な様相に目がいってしまいます。
それにしても庭園美術館で観た、牧歌的で地に足ついた庶民の姿を描いた絵もなく、私的には肩透かしをくらった感じ。
う~ん、あのとき感動したマッキアイオーリじゃない。

まあ、人混みに会うこともなく、ゆったり美術鑑賞が出来たことは良かったです。


9)2016年4/16-6/26「フランスの風景 樹をめぐる物語 コローからモネ、ピサロ、マティスまで」

フランスの風景 樹をめぐる物語 コローからモネ、ピサロ、マティスまで

風景画はどこに着目すれば良いのか分からず、あまり得意な方ではないので鑑賞すべきかどうか迷いました。
今まで何度も風景画の美術展にチャレンジしてきましたが、大概あまり感動を受けることもなく、淡々とした鑑賞で終わってしまいましたから。
ただ久し振りに、「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」を訪れたくなり、行ってきました。
それにしても長い美術館名ですよね。
以前訪れたときの美術館の名称は「損保ジャパン東郷青児美術館」だったのですが、当時でも十分に長い美術館名でしたが、更に長くなりましたよね。
2013年9月に観た「フィレンツェ ピッティ宮近代美術館コレクション トスカーナと近代絵画 もうひとつのルネサンス」以来の来訪となりました。

本展は「樹木」というモティーフを通して、印象派を中心とするフランス近代風景画の進展を探る展覧会だそうです。
ロマン派やバルビゾン派にはじまり、印象派を経てフォーヴまで、「樹木」が風景画の展開にどのような役割を果たしてきたのかを展覧しているそうです。
絵画の独立した主題として樹木を描き、樹木を介した光と影を追求し、その色や形を絵画の要素としてとらえた画家たちが、「樹木」をどのように描いてきたのか、フランスを中心とする国内外の美術館、ならびに個人所蔵作品から樹木に対する画家たちの想いが込められた作品約110点の展示です。

今回、鑑賞する前に一つ心掛けた事があります。
美術館を散歩しようと思いました。
風景画の美術展なら、それこそ森の中を散策するかのように、歩きながら風景を楽しんだら良いんじゃないのかなって。
それも空いている美術館でしかできないこと。
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館なら、空いているイメージしかないので出来るかなと。

いや、美術展のテーマタイトルとは明らかに違う、無理やり感のある美術展も多い中、この美術展は確かに「樹」がテーマでした。
あと、期待を裏切らない、いい具合の空み方でした。
本当、東京都美術館も見習って欲しいぐらい(笑)

テオフィル・ナルシス・ショヴェルの「ヌイイ公園の大きな島」は連作で白い雪の中の樹が1本佇んでいて目を惹きますし、ギュスターヴ・ドレの「嵐の後、スコットランドの急流」は大作で、嵐の後のキラキラした壮大な自然を美しく描き出していて素敵です。
エミール・イーゼンバールの「アルシエの泉」なんか、館内で森林浴している気分になれます。
クロード・モネの「ヴェトゥイユの海岸からの眺め、ラヴァクール(夕暮れの効果)」も美しかったです。

・・・と、気に入った作品はチェックしつつ、基本的には今回は作家名すら気にせず、絵を鑑賞すると言うより眺めながら、美術館の中を森の中のようにふらふらと散策させていただきました。
ちょっとした森林浴ができましたね。

最後は久し振りにゴッホの「ひまわり」、ゴーギャンの「アリスカンの並木路、アルル」、セザンヌの「りんごとナプキン」の3点にご挨拶をして美術館を後にしました。


10)2016年9/10-11/20「セピア色の想い。 没後110年 カリエール展」

セピア色の想い。 没後110年 カリエール展

最近、急激に冷え込んで来たと思ったらまた暑かったり、それが繰り返されながら季節は確実に秋にフェーズを移そうとしていますね。
いやもう10月も末ですから、カレンダー的には秋なんですけど。
本当、最近は油断していると秋を見逃していきなり冬になっているので気をつけないとですね。
さあ、そんな秋っぽいセピア色の美術展に出かけようと思いました。

没後110年に開催される本展覧会は、セピア色の画面に神秘的に浮かびあがる人物や母子像で知られているカリエールの美術展です。
カリエールのひ孫でカリエールのカタログ・レゾネ(全作品集)の編集者である美術史家ヴェロニク・ボネ=ミラン氏の全面的な協力のもと、個人所蔵作品および油彩画を中心に、カリエールの作品約80点が紹介されるものだそうです。
没後110年ですから、割と最近の画家さんですよね。
私はカリエールという方を今回、初めて知りました。
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館です。

いや、ちょっと驚いたのがこの方、生涯一貫してセピア色の絵画を貫き通していたんですね。
大概、この画家がこんな絵を描かれていたんだ!みたいな驚きがあるのですが、生涯を通して全くぶれません。
私はこの手の哀愁のある絵は好きな方なのですが、単調な色がずっと続くせいか、鑑賞が続くに連れちょっと飽きてしまいました。
観ている人が短期間で感じてしまうのもそうですが、生涯に渡って描き続けられている画家さん自身も信念がないとセピア色のみの世界は続けられないですよね。

その信念に感服しつつ、美術鑑賞自体はちょっと空振りをくらった感じで新宿を後にしました。


11)2016年11/26-12/25「風景との対話 コレクションが誘う場所」

風景との対話 コレクションが誘う場所

この美術展が、今年最後の美術鑑賞になるんでしょうね。
この美術展を知った時に感じたのは、2010年5月にBunkamuraザ・ミュージアムで観た「語りかける風景」にタイトルが似ているなぁと。
「語りかける風景」と「風景との対話」。
ね、似ていますよね?
風景を描く行為、もしくは風景画を観る行為って、風景に「語りかける」、つまりは風景と「対話」するということなんでしょうか。
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館です。

本展は、美術館所蔵のコレクションから魅力的な風景画約80点を選んだものだそうです。
世界の各地を描いた東郷青児と、生涯を過ごしたニューヨーク州の田園を描いたグランマ・モーゼスの各々約15点に加え、これまで展示する機会の少なかったユトリロをはじめとする20世紀フランスの画家17名と、近代洋画の大家・有島生馬と岸田劉生、日本画の山口華楊と東山魁夷、さらに現在も活躍中の山本貞、大津英敏、櫃田伸也から最新の当館公募展FACE受賞者までの日本作家33名からなる50名の作品各1点を一堂に集め、内容や制作姿勢によってゆるやかに結びついた8つのグループに分けて展示しているそうです。

流石、損保ジャパン!
美術館の中、がらがら(笑)
最初の部屋なんか私一人占め!
やはり空いている美術館は素敵ですよね。

それでも相変わらず、イマイチ風景画の見方がよく分かりません。
風景との対話らしい対話が出来ず、どれも心に響かなかったのですが、今回の美術展のなかではポスターにもなっている福本章の「ムラノの朝」の、淡いオレンジとパープルの日の出が美しかったです。
因みにムラノは、イタリアのベネチ潟に浮かぶ小島のことらしいです。


以上が「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」での美術鑑賞でしたが、東京都美術館と真逆の、いつ行っても空いていて快適に美術鑑賞ができ、最後にゴッホの「ひまわり」、セザンヌの「りんごとナプキン」、ゴーギャンの「アリスカンの並木路、アルル」を拝んで帰宅するのがレギュラー鑑賞となっていました。
また美術館が42階にあり見晴らしが良いのも特徴でした。
ほら、東京スカイツリーも東京タワーも両方見れちゃうぐらい展望力高い!

上:東京スカイツリー、下:東京タワー

「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」というめちゃ長い名称から、2020年7月10日より「SOMPO美術館」になり移転したそうですが、どんな美術館に生まれ変わったのかとても気になる所です。

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