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【前編】免疫とは?免疫細胞の種類や仕組みをわかりやすく解説

「免疫ってそもそも何?」
「どういう仕組で免疫は働いているの?」

私たちの体を外的から守ってくれる免疫。さまざまな感染症が流行するなか、免疫について興味をもっている方も多いのではないでしょうか。

「一度かかったらもう二度とかからない」といわれる感染症があるのは、免疫がしっかりと働いているためです。今回は、私たちの体が免疫によってどのように守られているのか、数多くある免疫細胞がそれぞれどのような働きをしているのかについて詳しく解説します。

免疫とは、体に病原体が侵入してきたときに働くセーフティネットのようなものです。細菌やウイルスなどが侵入した場合、それらを異物だと認識し体に悪さをしないように排除しようとします。

風邪を引くと熱や咳、鼻水などが出るのは免疫機能が働いているおかげです。体温を上げて熱に弱い病原体をやっつけ、咳や鼻水によって異物を外に出そうとします。

ところで、免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があるのをご存知でしょうか。人間は自然免疫と獲得免疫によって自身の体を病原体から守っています。

自然免疫とは、もともと人間の体に備わっている免疫のことです。体内に入ってきたものが自己の細胞なのか、非自己の細胞=病原体なのかを区別し、非自己のものだと認識した場合はマクロファージやNK細胞などが速やかに排除しようと働きます。病原体が体内に侵入したときに働く、生まれつき備わった免疫機能です。

獲得免疫とは、生まれながらにもっている免疫ではなく、後から獲得する免疫の仕組みです。B細胞やヘルパーT細胞、キラーT細胞などの働きにより感染した病原体を記憶しておき、再び同じ病原体と遭遇したときに効率よく排除しようとします。

自然免疫と比べると獲得免疫は反応するまでに時間がかかりますが、病原体の種類に応じた戦い方をすることが可能です。一度感染した病原体にはかからなくなったり、感染しても軽症で済んだりするのは獲得免疫の働きによります。

免疫細胞の種類と役割

免疫反応に関わる細胞は、数多くあります。一つの細胞が病原体と戦っているのではなく、複数の細胞が連携を取って敵に立ち向かっているのです。

では、それぞれの免疫細胞がどのような働きをしているのか見ていきましょう。

マクロファージは白血球に分類される免疫細胞です。自然免疫に関与しています。侵入してきた異物を食べる(=貪食)ことで自己の細胞か非自己の細胞化を見極めることがおもな働きです。異物を食べて自己か非自己かを判断することから、貪食細胞とも呼ばれています。

マクロファージはただ単に異物を食べているわけではありません。食べた異物が病原体、すなわち非自己である場合はヘルパーT細胞に向けて「これは病原体だ」と情報を発信します。

これを抗原提示といい、抗原提示を受けたヘルパーT細胞はさらにキラーT細胞やNK細胞に「病原体がいる」という情報を伝えます。

T細胞には、ヘルパーT細胞とキラーT細胞の2種類があります。このうちヘルパーT細胞は、マクロファージから「病原体がいる」という情報を受け取る細胞です。受け取った情報が正しいのかを調べ、異物が本当に危険なものなのかを判断します。

状況に応じてサイトカインという物質を産生してB細胞を活性化し抗体を作る手助けをするため、異物を攻撃する司令塔ともいわれていることが特徴です。

獲得免疫に関係しており、B細胞のほかキラーT細胞にも指示を出します。エイズになると免疫機能がうまく働かなくなるのは、ヘルパーT細胞にHIVが感染し、キラーT細胞やB細胞へ指令を出せなくなるためです。


ヘルパーT細胞から指示を受け取り、病原体を攻撃する細胞です。キラーT細胞も獲得免疫に関与しています。

キラーT細胞は病原体を見つけると即座にやっつける「病原体の殺し屋」です。殺し屋として役割を終えたキラーT細胞の多くは死んでしまいますが、一部はメモリーキラーT細胞として残ります。

このメモリーキラーT細胞の働きにより、再び同じ病原体が侵入してきたときに速やかに攻撃できるようになるのです。

B細胞はリンパ球の約20~40%を占めています。ヘルパーT細胞と同様に侵入してきた異物が危険なものなのかを判断する役割をもつ細胞です。

異物が病原体だった場合、B細胞は形質細胞に変化して抗体を産生します。細菌やウイルスそれぞれに合う抗体=武器を作ることで、効率よく病原体を排除することが可能です。

病原体に反応したB細胞の一部は、メモリーB細胞となり同じ病原体が侵入してきたときに速やかに反応できるようになります。

NK(ナチュラルキラー)細胞は生まれつきの殺し屋です。誰からの指令を受けることなく、病原体を見つけ次第すぐに攻撃します。自然免疫に関わっている細胞のひとつで、常に体の中をパトロールして回っている細胞です。

好中球は、体内に侵入した病原体(ウイルスや細菌)を排除する細胞です。白血球の一種である好中球は、白血球全体の半分以上を占め、強力な貪食能力(異物を食べる能力)を持っています。感染防御にとても重要な免疫細胞で、感染初期に患部に集まって病原体の増殖を食い止めます。

樹状細胞

樹状細胞は、名前の通り木の枝を伸ばしたような突起をもっています。異物を発見するとそれを自身の体に取り込み、異物が病原体だった場合は情報をT細胞に送ることで免疫機能を働かせる細胞です。これまでに病原体と出会ったことのないT細胞を活性化する働きもあります。

後編はこちら:https://note.com/imagine_gc/n/n0bdd4079fbf0