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言葉を越えて、伝わる想い。 後編 Lomalia 伊藤 タケシさん

美容院 Lomalia トップデザイナーの伊藤タケシさん。

一度、美容師の世界から離れるも「お客さまと末永くお付き合いをしたい」という自分の理念に気づき、ふたたび美容の世界へ。
そんな伊藤さんが、仕事において大切にしている想いについて、さらにお聞きしました。

前編はこちら

髪ひとつで、人生を変えられる。

──伊藤さんの、美容への想いをお聞かせください。

 美容業界のモノ、サービスってたくさんありますよね。その中でも、髪はすごく大事だと思っています。メイク用品やお洋服は、返品も交換もできます。最悪、着ない、使わないという選択もできる。だけど、髪は一度切ってしまったら、しばらくの間はその髪型で過ごさないとならないですよね。

 人は嫌でも、髪を切らないといけない。放置し続けるとズボラな人間に思われてしまいますし…。でも、ただ切る、ただメンテナンスするのではなくて、そこに付加価値を与えたいなと。僕が切った後のお客さまの人生が、ちょっとでも良くなるようにと考えて切っています。その髪型で人に会いたくなるのか、会いたくならないのかって、すごく重要だと思っているんです。人に会いたくなったら、性格も明るくなって、ちょっとメイク変えてみよう、洋服変えてみようと。そして、彼氏・彼女ができた、仕事が上手くいくようになったなど…。どんどん人生が良くなっていくと思うんです。髪ひとつで人生は、変えられると思っています。

後編01

伊藤さん愛用のハサミと櫛。
赤色にしている理由としては、「ひと目で自分のものと分かるように」。
効率を重視して、お客さまと向き合う時間や労力を確保しているとのこと。

お客さまの諦めを止めてあげるのが、僕の仕事。

──そういう選択の概念さえもない人が多い気がしますよね。どこの美容室に行っても同じなんじゃないか、というある種の諦めというか…。

 そのセリフ、よく言われますね。「どこ行っても同じだと思ってました」とか、「ずっと美容室を転々としてました」など…。
でも、実はそうじゃないんですよね。美容師がお客さまとしっかり向き合うことで、よくなるんです。今までの美容師さんが、「どこに行っても同じ」と思われるようなことを、ずっとしてきてしまったから、お客さまが諦めてしまっている。お客さまの諦めを止めるのは、今回担当させていただく僕だ、と思って毎回担当させてもらっています。

──今までの美容師さんが「どこに行っても同じ」って思われるようなことをずっとしてきてしまったから。というのは具体的にどのようなことだと思いますか。

 お客さまがお願いをしても、叶わないことが多かったんじゃないかなと思います。なりたい髪型を伝えても「それは無理」と否定されたり、逆にやれないことを、やれると美容師が引き受けて、最終的な仕上がりが違ったり…。だから、僕はなるべく否定はせず、どんな願いでも一回受けとめるようにしています。「あ、それ良いですね。かわいいですね」と。最初から否定されちゃうと、「じゃあ良いです。できることやってください」と諦めちゃうじゃないですか。もし、その願いが物理的に難しいことであれば、正直に伝えるようにしています。その時も、ただ否定するんじゃなくて、「これはできないけど、こういう方法があります」と肯定的な言葉でお伝えするようにしています。

後編02


想いがあるかないかで、技術が変わってくる。


──そういったことができる美容師さんと、そうでない美容師さんの違いは、技術の差なのでしょうか。

 これは僕の意見なんですけど、技術は練習を積めば、ある程度のところまでいけると思うんですよ。やっぱり大事なのは想いの部分。想いがあるかないかで、技術が変わってくるんです。マニュアル的にやるんじゃなくて、ちょっとでもお客さまのためによくしていきたいという想いを持つことが大切。「このお客様はこういうお悩みがあるから、こういう風に切ってあげよう、カラーしてあげよう」と。全て同じものを提供するんじゃなくて、一人一人のお客さまに合わせたものを提供しようとして行こうとすることですね。同じ技術を持ってても、そういった想いがあると技術がいろんな方向に伸びて、変わっていくと思うんです。

──そういった想いを持った美容師さんが、もっと増えていって欲しいですよね。

 そうですね。僕は、お客さまを請け持つというのは生半可なことじゃないと思っているんです。だから、アシスタントに何かを手伝ってもらう時には、想いを伝えるようにしてますね。

───想いというのは?

 例えば、1日にお店に100人のご予約が入っている日に、目の前のお客さまのことを100人の中の1人じゃなくて、1分の1と思って向き合ってやってね、と伝えています。アシスタントって、本当に毎日毎日、たくさんのお客さまに接するんですよ。だから、そこがどうしても、なあなあになってしまう。お客さまからすると、今この時はビッグイベントなんだよと。

 正直、うちのお店で、カットして、カラーして1万何千円。その値段は決して安くない、結構高いと思うんです。しかも、その頻度がお客さまにもよりますが、たいてい2カ月に1回。結構な頻度ですよね。お客さまからしたら、2カ月に1回、1〜2時間。気分転換できて、自分が綺麗になれるビッグイベント。それが成功できるように、全力でやろうよと伝えています。

髪を通して、みんながハッピーに。

──伊藤さんは、これからどのように美容師として生きていきたいと思いますか。

 僕はお客さま一人一人のことを考えて、美容師をしていることが楽しいんです。その楽しさを、僕よりも下の世代の後輩たちに伝えていきたい。その伝え方は、言葉だけじゃないと思うんです。自分が楽しく、お客さまのことを一人一人大切に思う。そして、その想いを持って技術を提供する。その姿を、後輩たちに見せ続ける形で伝えていきたいです。髪を通して、お客さまだけではなく、そこで働く美容師もハッピーになっていく…。そんな世界を、作っていけたらいいなと思います。

後編最後


人は、人の想いにすごく敏感です。

言葉がなくても、その人がどのような想いで、目の前のことに関わっているのか。わりとすぐに感じ取ることができます。それは声色、喋り方、仕草を感じ取っているのかもしれません。

これは、人間の動物的な本能なのだと思います。

「なんとなく、嫌な感じ」、「なんとなく、良い感じ」
その感覚は、体が感じ取り、反応している紛れもない真実。

そういった感覚に近いところで、伊藤さんの想いはお客さまに伝わっている。だからこそ、お客さまが集まってきて、末永く付き合いを持っているんだと。

これからも、お客さまに向き合い続ける伊藤さんを応援していきたいです。ありがとうございました。

取材・文 :大島 有貴
写真:唐 瑞鸿 (MSPG Studio)

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