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まろやかな風

なにかが足りない気がして鏡をもう一度覗くと、アイラインを引き忘れていることに気がついた。小さい目をなんとかして大きく見せるためにいつも薄く引くライン。薄く目立たないようにするものの、意外と重要。

財布の中に小銭しか入っていないような心もとなさがぐっと迫る。地下鉄はすぐに暗くなって、姿を映すから厄介だ。何度目があっても小さな瞳だ。ああ、二度寝してばたばたと家を出たからか。

ちょっぴり後悔しながら、上白石萌音さんの「いろいろ」を開く。もともと上白石さんのことが大好きで、雰囲気や演技、歌、あと言葉選びの素敵さにはうっとりする。インスタグラムに綴られる言葉はどれも思いやりと感動に満ちている。

短めなエッセイがまとまった本。バイト中に続きが気になって集中できないから本はなるべく読まないが、数分で味わえるので通勤途中に読むにはぴったり。

お腹いっぱい。ゆっくりと閉じてホームに降りる。背筋をピンと伸ばし少し上白石さんを意識してみる。いつもの改札も風がまろやかに感じた。

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