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63.3%「親として未熟で申し訳ない」【2021年調査】数字で見えた「ママ達の心の声」Vol.1

親としての自己肯定感を育む役割を担っているのは「社会」です。
コロナ禍で様々に制限される中、育児不安を抱えながらも環境に適応し、踏ん張っていた保護者の声が多くの方に届きますように。

昨年度、ご縁があって携わらせていただいた「コロナ禍の子育て実態調査」(NPO法人 育ちあいサポートブーケさんが実施)の報告資料が、助成元のNPO法人 モバイル・コミュニケーション・ファンドさんより公開されました。

中でも【兵庫県全域の3歳未満の子どもを育てている保護者447名】に対する調査は、コロナ禍において子育てする「ママ達の心の声」がリアルに反映された結果となっており、子育て支援環境と保護者ニーズとの齟齬を測る上でも、大変興味深い資料です。

この調査では、子育て支援を行う側の調査も実施されていますが、ここでは保護者447名の調査から得られた結果を3回に分けてご紹介していきます。

Vol.1では調査の背景と、コロナ禍で子育てする保護者の実感が中心です。

なお、すべての調査結果は文末のリンク先よりご覧いただけます。
ご興味のある方は是非ご覧ください。

※引用データの出典元:「コロナ禍における親の”孤育ち”実態および子育て支援に対するニーズの変化」調査報告書
※紹介する調査の回答者は95.7%が母親だったことから「ママ達の」と題しています。
※調査期間は2021年9月22日~11月30日です。
※写真はイメージで調査内容とは関係ありません。

【調査の背景】孤立しやすい子育て環境は加速?


コロナ禍前より、特に就園前の子育て環境では、親子が孤立しやすい社会的背景が醸成されていましたが、コロナ禍により、社会や人との繋がりを得られにくくなり、孤立しやすい環境がますます深まっていったのではないか…と考えられます。

育児休暇中にコロナ禍になり、地域の子育て仲間を見つけられず職場復帰された方も多かったのではないでしょうか。


多くのママは、この調査で示されているように、環境が変化しストレスが増しても、何とか適応しようと踏ん張り、目の前の子育てに奮闘します。

ただ、その踏ん張りに甘えている社会では、これからも少子化は止まらないでしょう。


今どのような子育て支援が求められているのか、またどのような支援の在り方が有効なのか。
この調査がそれを探る一助になれば幸いです。

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①98.5%「自分が感染したら困る」

自分が感染した時にどのように困るのか…
その状況は様々でしょうが、回答期間においては、保護者のほぼ全員が、自分がコロナウィルスに感染することに危機感を抱いていました。

また、「自分が病気になると子どもの面倒をみる人がいない」32.2%が回答しており、子どもの世話をすること以外にも様々な理由で、自分が感染した場合の困難やリスクを感じていたものと思われます。

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②62.2%「なるべく外出を控えて自宅で過ごしている」

「なるべく外出を控えて自宅で過ごしている」62.2%
「なるべく同居家族以外の人と会ったり遊んだりしない」50.6%
「実家へ帰省するのをできるだけ控えている」38.9%

①のような意識から生じる行動制限により、社会との接点が得られにくい子育て環境が常態化していたものと考えられます。また、たとえ親族でも同居してない場合は、会うのを控えていた様子が伺えます。

一方、子育て支援施設では、人数や時間制限を設けたことで支援の間口は縮小され、来所者数は半減していました。

こうした状況が長らく続いたことで、支援する側とされる側の距離感、同じくらいの子を育てる親同士の距離感も、コロナ禍前と大きく変化したと思われます。

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③51.9%「親子だけの時間に息が詰まる」


感染リスク回避を優先した生活へと変化したことにより、家庭内ストレスの高まりも見られました。

「家族・親族にイライラしてしまう」63.3%
「親子だけの時間に息が詰まる」51.9%
「子どもにイライラしてしまう」50.5%

「子どもにイライラしてしまう」よりも、「家族・親族にイライラしてしまう」方が割合が高いことからも、思うように外出できない状況は、家族との関係にもストレスを抱えやすいことがわかります。

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④63.3%「親として未熟で子どもに申し訳ない」


こうした感情は、親として誰しも一度は感じることかもしれません。

しかし、下記のように親として自分の子育てに不安を抱えている保護者が過半数を超えている実態は、”誰もが通る道”で済まされる状況ではない…と感じます。

「親として未熟で子どもに申し訳ない」63.3%
「子どもへの関わり方に自信が持てない」61.5%
「子育てに不安がいっぱい」53.7%

仮にこれがコロナ禍以前からの水準であるなら、子育て支援事業の意義そのものが問われていたことでしょう。


コロナ禍により、社会や他者との繋がりを得にくくなり、子育て支援事業も大幅に縮小され、子育てを学んだり、親としての成長を支える場や機会が大きく減少したことが、こうした育児に対する不安感を増幅する要因になった可能性があります。


裏を返せば、従来の子育て支援方法だけでは対応に限界があることが示されており、社会や親子の環境変化に対する備えやアプローチの工夫を求める「ママ達の悲鳴」のようにも聞こえます。

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⑤43.4%「疲れて何もする気になれない」

「疲れて何もする気になれない」43.4%
「子育てが楽しめていない」19.9%
「意味もなく涙が出る時がある」15.0%
「子どもがかわいいと思えない」3.4%

これらの回答からは、産後鬱リスクの高まりも懸念されます。


また、紹介した①~⑤の結果について、人口密度によるクロス分析では差が見られなかったことから、地域に関わらず一様に保護者が感じていた実感と言えます。

一方、就業状況(就業中、育休中、無職)によるクロス分析では、多くの回答で差が見られています。

例えば、就業中の保護者は、社会からの孤立感が低い一方、子どもにイライラしてしまうという回答が多く、育児休暇中や無職の保護者は、人と交流できない寂しさや社会からの孤立感を多く抱えている実態が明らかとなっています(Vol.3で詳しくご紹介しています)。

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こうした結果は「コロナ禍で絶たれた支援との接点を、保護者側の努力で補うのは難しかった」という事実を示しているように思います。


今後の子育て支援のあり方
を考える時、「感染症が落ち着いて元に戻っていく」だけでなく、災害と同じように「次に備えていく」ことが大切ではないでしょうか。


保護者にとって、何らかの理由で届かず、または知らずに存在する「支援」は「支援になれない」のですから。

最後までお読みいただきありがとうございました:)

Vol.2では、「コロナ禍で子育てする保護者の置かれた環境」に関する調査結果をご紹介します。

▼報告資料はこちら ▼

【調査テーマ】コロナ禍における親の「孤育ち」実態および子育て支援に対するニーズの変化

【実施団体】NPO法人 育ちあいサポートブーケ
【助成元】NPO法人 モバイル・コミュニケーション・ファンド

※写真はイメージで調査とは関係ありません。

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