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『青の時代』三島由紀夫

はじめに:実在した高利貸し

今回は、女史の敬愛する三島由紀夫の、『青青の時代』を紹介する。本作は、実在した人物を描いた作品である。

戦後の日本で、地方の良家に生まれた主人公誠は、投資詐欺にあったことをきっかけに、高利貸しになる道を進んでいく。最終的には、多額の負債を抱え込み、二進も三進もいかなくなり、自殺をしてしまう。

戦後の日本の金融市場は急速に発達し、それと共に情報リテラシーのギャップも生まれた。ずるがしこい者はそのギャップを利用し、弱者から搾取する形で運用を行い、私腹を肥やした。本作の主人公は、当時のずる賢い成金の代表といっても過言でない。しかし、それと同時に、資本主義社会の哀しき犠牲者でもあるのだ。

異郷から来た女史が何者か知りたい人はこれを読んでくれ。

そして、女史のnoteをどう読むか、こちらを参考にしてくれ。

戦後日本を生きる若者:金融市場の歯車

主人公誠は、厳しい父親に育てられる。優秀だった誠は、東京大学に進学する。そのままエリート街道を突き進むかと思いきや、とあることをきっかけに投資詐欺にあってしまう。そこから、誠の人生の歯車がいい意味でも悪い意味でも回り始める。

彼は投資詐欺にあった後に、自分の金融会社を立ち上げる。その会社とは、高金利で金を貸しだし利益を得るという、いわば闇金融である。誠は、闇金融の中でどんどん金を稼いでいく。

最終的には、誠の同僚はまともな企業に転職し、会社の仕組みは破綻してしまい、多額の債務を背負い込み、自殺を図る。

誠は、徹底的な合理主義者として描かれている。利益最大化を考え、合理的な選択を行う。そんな彼が、戦後日本を生きていくうえで闇金融に手を出すのは、必然だったのかもしれない。

戦後日本は、外貨の流入も本格的に始まり、金融市場が竹の如く成長していった。一方で、銀行中心の金融市場の構造は、一般大衆市民には手の出しにくいものでもあった。そんな時に闇金融が発達することは不思議でない。

そうして、誠もその波に乗り、金融市場の歯車となったのである。

おわりに:資本主義の犠牲者

誠は資本主義発達の犠牲者であると思った。戦後日本のような不安定な資本主義社会の金融市場発展途上で、非合法的な金融機関が誕生するのは必然である。しかし、非合法であるがために、それを提供する側も提供される側もリスクが大きいのである。

本来的には、金融政策にて規制を敷き、管理下に置くべきはずであるが、当時の戦後日本の状態を考えると、そのような高度な考えは描けなかったであろう。

新自由主義的発展は、システムからの脱落者を増やすと女史は考える。システムから脱落した者は、この世からまるで存在が消えたような扱いを受ける。主人公の誠はそれが分かっていたからこそ、死を選んだのであろう。

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